第6話 三人の出発

 列車は北に向かって進んでいく。

 次の駅が近付いてきた。ヤヨイは、右隣のくつろいでいる少女を見る。

「一人なら、チームを組んで一緒にやりませんか?」

「独りに見える?」

「いえ、分からないので、聞きました」

 ヤヨイは正直だった。

 スズネは、すこし考えるような仕草をしてから答える。

「そういう丁寧な言葉遣いをしないなら、いいよ」

「どうかな?」

「僕は反対しないよ。ヤヨイが決めることだ」

 聞かれたカケルはあっさりと答えた。

 駅に停まり、列車のドアが開く。乗客たちが降りて、同じくらいの人数が乗った。

「よろしく! スズネさん」

「さん、もいらないよ。ヤヨイちゃん」

「ちゃん、もいらないよ!」

 ヤヨイが力強く声を出し、スズネが笑った。

 ドアが閉まり、列車は再び動き出す。ヤヨイとカケルとスズネを乗せて、北へと走り出した。


 ヤヨイたちが列車から降りる。

 スズネも聖地を目指していたため、降りる駅は元々一緒だった。

 荷物を持った三人が駅を出ると、そこは港町。

 北には道路の先に海が広がり、潮風も漂う。ネコのような鳴き声がして、ヤヨイが珍しそうに辺りを見まわす。

「船はどこ? カケル、知ってる?」

「僕に頼るのは、やめたほうがいいと思うよ」

 少年は携帯用の情報端末じょうほうたんまつをいじり始めた。日は傾いている。

 スズネが意見を述べる。

「もう遅いから、どこかに泊まりましょう」

「そうだね。それがいいと思う」

 情報端末をしまって、カケルも同意した。

 ロングヘアの少女は首を傾げている。

「どこに泊まるの?」

「もしかしなくても、何も考えてなかったんだよね」

「私が予約した宿に行って、空き部屋があるか聞いて、そのあと考えましょう」

 スズネが楽観的なことを言う。ヤヨイが同意した。

「不安だ」

 カケルは、珍しく弱気な発言をした。


 年季の入った宿には、空き部屋があった。ヤヨイたちは寝床を確保した。

 一旦いったんそれぞれの部屋で荷物を置いて、三人がヤヨイの部屋に集まる。

 鉄筋コンクリート造りの二階建て。廊下は洋風で、部屋の中は和風。たたみが敷いてある。入り口で靴を脱ぐ。

 座布団に座った三人が、一つの机を囲む。

「色々話はあるけど、まずは連絡先を交換しよう」

「そうね」

 カケルとスズネは情報端末を操作して、手早くお互いを登録した。

「さっきもいじってたけど、何それ?」

 ヤヨイは分かっていなかった。

 カケルは、ヤヨイの隣に座布団を持って移動する。

 情報端末を操作しながら機能について説明。

「――と、通話のほかにも便利な機能があるんだよ」

「師匠の能力よりすごい!」

「にわかには信じられないわね」

 スズネは、戦いでも見せなかった苦悶の表情を見せた。

 カケルが自分の意見を伝える。

「チームで活動するなら、全員と連絡を取るために、ヤヨイも持っておいたほうがいいと思う」

「私もそう思うわ」

「そんなすごいもの、どうやったら手に入れられるの?」

 ヤヨイの疑問が湧き出してきた。

 詳しい説明を諦めたカケルとスズネ。

 部屋から出るときは鍵を持つようにとヤヨイにねんを押し、三人はフロントで鍵を預けて外出した。

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