魔王結社 ワールド・コンクエスト・カンパニー!

澄ヶ峰空

第1話 異世界転生

 僕は自他共に認めるオタクだ。特に、ボーダー・オブ・ザ・パラレルワールドというMMORPGにはまっている。ボーダー・オブ・ザ・パラレルワールド、日本語訳は平行世界の境界線。略称はボーダー。今日本ではやっている国民的なゲームだ。僕がオタクの道に目覚めたのもこのゲームが原因だ。

 ボーダの最大の特徴は、僕はストーリーの濃厚さにあると勝手に思っている。実際に、主要キャラだけでなく、サブキャラ一人ひとりにストーリーが用意されているし、メインキャラのストーリーなんて号泣ものだ。原画も綺麗だし、戦闘シーンもかっこいい。しかも、ストーリーとは別に好きなキャラでもプレイすることができる。自由度の高いオリジナルキャラでのプレイも可能だ。僕らゲーオタの夢を詰め込んだようなゲームだ。メディアミックスも盛んでアニメ放送や漫画連載など、今最も盛り上がっているゲームといって過言じゃない。

 なのに、そのボーダーがいきなりサービスを廃止するらしい。それを聞いたとき、泣きそうになったが、泣いたところでサービス廃止は止まらない。だから、廃止までひたすらゲームすることにした。

 僕はギルドなどには所属しないソロプレイヤーだ。ボーダーはオリジナルキャラ設定のときに魔王側と勇者側のどちらかを選ぶ必要がある。僕は魔王側だ。暗黒騎士ということになっている。キャラ名はエドワードだ。

 僕はギルドには所属しなかったが、ソロプレイヤーとしてはかなり有名だったと思う。まあ最高レベル到達者ならそこそこ知り合いは多くなるんだけどさ。とりあえず会っておきたい知り合いとは会えた。いろいろなステージで対戦もしたことだし。あとはボーダーのサービスが廃止するまでログインしよう。それだけでいい。あと一時間だ。

 僕は集会所といわれる主に初級者が利用するパーティを結成し冒険できる施設に来た。ここはいつも誰かがいて駄弁ることができるのだが、もう時刻は午後十一時を回っている。それに廃止日だ。もうあまり人がいない。僕は少しウトウトしながらもログインし続けた。PCの近くに置いたコーラに手を伸ばす。


「あ」


 ボーっとしたまま手を伸ばしたからだろう。コーラを服にこぼした。普段ならそんなに問題ではないのだが、溢したコーラがパソコンにかかり、僕の旧式PCが火花を上げて壊れた。コーラを伝って僕に電気が回る。

 気づいたときにはもう死んでいた。でも死んでいたのに気づくっていうのもおかしい。僕は閉じた目をまた開く。そこには見たことのある景色が広がっていた。もちろん、僕の暗いオタク部屋とかじゃない。草原だ。風の靡く綺麗な透き通った草原だ。ここって、


「ボーダー?」


 そこにはボーダー・オブ・ザ・パラレルワールドの世界、第一魔王城から見えるハーマトリック大草原だった。

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