第1章 雨上がりの午後、猫を拾った⑥

「んだよー、まだかよー」

 赤いL字のソファに体重を預けるように座りながら、先ほどから飯島は文句を垂れ続けている。彼はテレビのリモコンを操作し、次々と落ち着きなくチャンネルを替えていた。

「忙しい奴だな」

 飯島の斜に座っていた私は嘆息しながら、切り替わる画面を追う。七十インチの巨大モニタに映し出される報道番組には、目当てのニュースはまだ流れていない。

 時刻は午後二時。各局報道番組に切り替わってまだ間もない。番組冒頭で今日報道されるラインアップが簡単に紹介されたが、それらには大きなタイトルしか取り上げられないのが普通だ。私達、というより主に飯島が目当てにしているニュースはお世辞にも大きなものとは言えないため、そのラインアップには載らなかったようである。

「介護士の虐待なんかどうでもいいっつーの」飯島はつまらなそうに口を尖らせる。

「いや、問題だろ」私は呆れながら、エスプレッソを啜った。「お前、ワイドショーとか好きだよな」

「いいだろ、別に。数少ない楽しみなんだよー」

「ミーハーだな」

「あ、お、始まった! きたきたきた、始まった始まった!」

 投げ出していた足を戻し、飯島は姿勢よく座り直した。

 五十代も半ばというような女性キャスターがカメラ目線で原稿を読み上げる。

『……振り込め詐欺を行ったとして、指定暴力団山本会系吉高組の構成員で振り込め詐欺グループの首謀者、服田隼人はやと容疑者らが逮捕されました。服田容疑者らは今年五月に都内に住む主婦から、息子を騙って二千万円を騙し取った容疑が持たれていますが、その他にも数十件もの余罪があるとみて警視庁は……』

 テレビに映し出された服田の姿は惨めなものだった。送検されるときの映像で、頭からジャンパーを被されており顔がよく見えなかったが、車両に乗り込む際に一瞬だけカメラの方を見た。その瞬間を切り取られ、顔をアップに映し出される。

 服田の濁った目を見て、飯島が声を上げる。

「うはっ、死にそうな顔してんじゃん! これこれ! これよ、この顔!」

 飯島は手を叩きながら笑う。

「おい、静かにしろ」

『……警視庁に匿名の通報があり、今回の逮捕に踏み切ったそうです。えー、その通報の内容なんですが、駄菓子屋の店舗二階を事務所に振り込め詐欺をしているグループがある、というようなものだったそうです』

『なるほど。匿名の通報があったということですね。その通報をしてきたという情報提供者はどのような人物なのでしょうか?』

『えー、はい、それに関してはですね、情報はまったく入ってきておりません。ですがその通報を受けて家宅捜索、逮捕に踏み切ったわけですから、ある程度信頼のできる人物からだったのではないかと推測されます』

『そうですね。服田容疑者の他に未成年も複数逮捕されたということですけども、詐欺グループのメンバーが内部告発をした可能性が考えられるわけですね?』

『はい。捜査関係者に近い人物の話ではそのように見ているようです……』

 頭の悪そうなキャスターとリポーターのやり取りはまだ続いていたが、細かい話に興味を持たない飯島は別のチャンネルに替えてしまった。

「素人どもの考察なんかどうでもいいんだよ。もっとさぁ、間抜けな面を拝ませろよなー」

 別のニュース番組でも同じ事件を報じていたが、飯島が期待しているような服田の間抜けな顔は出てこなかった。テレビの画面には、全体にモザイクが掛けられた駄菓子屋が映されており、マイクを持った男性リポーターが、主犯格が潜伏していた事務所の詳細を伝えている。

『服田容疑者をリーダーとする詐欺グループはこちらの住宅街の一角で駄菓子屋を営んでいた模様です。こちらの駄菓子屋をよく利用していたという、近くに住む親子からは不安の声や信じられないというような声が挙がっています』

「いつからこんな糞つまんねえワイドショーになったんだよ、ちくしょー」飯島は唾を飛ばすように文句を言った。

「おい、黙って見ろ」

 飯島の思いとは逆に、音声加工が施された近隣住民達のインタビューが流れ続ける。皆が一様に驚き、そして不安を覗かせていた。気味が悪いほどに、誰もが同じ反応しか見せない。

 ドラマや映画の影響で、無意識のうちに演技でもしてしまっているのだろうか。こういう場面ではこういう反応を示す、というものが刷り込まれているのかもしれない。

「何で怪しまないんだよ、馬鹿かよ。あれだけのガキが出入りしてたらおかしいだろうが」

「お前はテレビを黙って見ることもできないのか?」

 私は呆れてため息をついたが、しかし飯島の指摘も的外れではない。本来なら、周りがもっと怪しんでいたとしても不思議ではないし、むしろそちらの方が正常とも言える。

 インタビューに答えた人間がテレビ向けにコメントを用意したか、あるいは近隣に関して然したる興味を払ってなかったか。いずれにしても、彼らの感想に価値など存在しない。

『……その後の調べで、服田容疑者らが活動拠点として使用していたと思われるこちらの事務所からは、詐欺に使用された印鑑や通帳の他に、三千万円ほどの偽札や人工のダイアモンドも見つかっており、警視庁は余罪も複数あると見て詳しく調べを進めています。では、次のニュースです……』

 飯島はダイアモンドを一つ持ち上げ、それを蛍光灯越しに翳した。光り輝く天然の美しさに官能的なため息をつくと、飯島は私の方を見た。

「先生、詐欺師だって、言ったんだろ?」

 飯島の顔は笑っていた。

 私も笑いながら頷く。

「ああ」

「普通、詐欺師を信用するかぁ?」

「信頼を得るために名乗ったんだが……。まあ、おかしな話ではあるな」

 私は、目の前に積まれている現金三千万円を見つめながら、吹いてしまった。

「詐欺師を信用する方が馬鹿なんだよ」

 飯島は下品に、盛大に笑った。たしかに、愉快な話である。

 自分は詐欺に引っ掛からないと、そう思い込んでいる人間こそが鴨である。


 


 騙す側の人間は、自分が騙されることの可能性を危惧していない。自分だけが捕食者だと、そう思い込んでいる。食物連鎖で言うところの人間と同じ。自分達が脅かされることはないと、信じ切ってしまっているのだ。どこにも、そんな保障など存在しないにも関わらず。

 服田のような人間は格好の獲物だった。

 奴らは詐欺師にしては粗雑で幼稚、とても褒められたものではない。素人同然ながらゲーム感覚で弱者から金を巻き上げ続け、厚顔無恥な自尊心を増長させていった。

 振り込め詐欺は誰でも簡単に扱える。しかも前準備はほとんど必要ない。電話さえあればいつだってでき、超高齢社会の現代では獲物に困ることもない。これだけの好条件が揃えば、成功は向こうから擦り寄ってくるだろう。

 大した労力も払わず成果を手にすれば、どれほどの者でも味を占めるようになる。自身を滅ぼす、堕落の味を覚えた者は同じ味では満足しなくなり、さらなる味を追い求める。警察に捕まるか、詐欺師に喰われるまで、ずっと。

「振り込め詐欺の魅力はその手軽さにある。いつでも、どこでも、そして誰でも行える詐欺だ」

「素人どもにはうってつけだよなぁ」飯島はテレビの電源を切り、組んだ両手を後頭部へ回しながら欠伸をした。

「そう。その手軽さゆえに試行回数も多くなり、その結果成功に辿り着きやすい。だからこそ、この詐欺の形態が爆発的に流行り、今でも多くの人間が被害に遭っている」

「なまじ成功しちゃうから、馬鹿はつけあがるんだよな。自分達にも出来ると、勘違いしやがる」

「過程はどうであれ、数を重ねれば手慣れてくる。成功が伴えば、余裕が生まれる」私は目の前に積まれた三千万もの札束を見つめながら、微笑んだ。「緊張が抜け、弛緩が訪れた、そんな心の隙間をやさしく狙ってやればいい」

「つくづく、あんたの手腕には驚かされるよ」

「大したことじゃない」

「鴨を狙うんじゃなく、狙った獲物を鴨にしちまうんだから、恐れ入るよ」

「鴨が狙えるのなら、それに越したことはないがな」

 服田のバックには指定暴力団山本会系の吉高組がついていた。だからこそある程度の派手も許されていたわけだが、そのおかげでこちらとしても必要な情報は難なく集めることが出来た。拠点としている事務所さえ判明すれば、所詮は素人、警戒心が強くとも簡単に懐柔することが出来る。

 警戒心を解くためには、一気に距離を詰める必要がある。時間を掛けて、というやり口は今回の場合は適当ではない。相手に思考させる隙も与えず、主導権を握らなければならなかった。

 いきなり事務所に押し入り、相手の警戒心を煽る。そうしておいてから、徐々に共通する話題を持ち出し親近感を覚えさせる。今回で言えば同業という共通点を利用した。とは言え、これだけでは警戒心を解くのに充分ではない。だから、思考と行動を縛る必要があった。

 警察による強制捜査。それを引き合いにして、服田らを事務所から追い出させた。

「それにしても、あいつのびびり顔は傑作だったなぁ」飯島は思い出したように笑い、手を叩いた。「笑いを堪えるので大変だったよ。どこかの天才の緊張した顔もおもしろかったし……」

「緊張もするさ」私は飯島を睨む。「あまりにも警官には見えない男がやってきたもんだから、ばれやしないかと肝が冷えっ放しだったんだよ」

「そうか? 様になってたっしょ? 俺の刑事姿」飯島は右手を顔の横にやり、冴えない敬礼を見せた。

 服田の事務所に来たのは本物の警官ではない。捜査官に扮装した飯島とあの日だけ雇った数人のアルバイトだ。駅ビルで服田に詰め寄ったのも飯島だ。

 すべては服田から稼ぎを奪うために仕掛けた罠だ。

 冷静に考えればすぐに罠だと見破られるだろうが、案外、人間の思考は脆い。わずかな感情で均衡を失い、正常な判断ができなくなる。そうなれば、あとはやさしく手引きしてやるだけでいい。人の思考など、それだけで簡単に操れる。

「しっかし、今回は旨味が多かったなぁ」飯島はにやにやと笑いながら、携帯電話を触り始めた。

「ダイアと三千万はまったくのボーナスだからな。ダイアはいくらで捌ける?」

古野ふるやの爺さんに頼んではあるけど……」

 古野もこの世界に住んでいる一人で、現役では最古参になろうかという高齢だ。さすがに自ら詐欺を行うことは減ったが、代わりに仕事の斡旋をすることで旨味を得ている。私達のようなプレイヤーに比べればリスクはほとんどなく、またこの世界では難しい安定した収入を手にすることが出来ている。顔の広い最古参だからこそ出来ることだ。

 最古参というだけあって古野は仕事の腕は確かだが、少々性格に難のある男でもあった。一言で言えば、がめついのである。

「古野か」

「あのじーさんしかいないだろ?」

「それはそうだがな。いくらで吹っ掛けてくるかな」

「聞いてみるよ」

 飯島は携帯電話を操作し、古野を呼び出した。

「もしもし? うん、そう……。先生に代わる」

 飯島は私を見ると、最新のスマートフォンを差し出した。受け取って端末を耳元に近づけると、しわがれた声が聞こえてくる。いかにも意地悪そうな声だった。

「手数料を差し引いて、二千万ってとこか」

 挨拶の代わりに古野はいきなりそう言い放った。

 出鼻を挫かれた私はため息を一つ消費し、強欲な爺と立ち向かう覚悟を作る。

「相変わらず助平な性格をしている。市場価格の半値はさすがにいただけないな」

「爺はみんな助平なんだよ。若い癖してバイアグラなんぞに頼るよりはいいだろうに」

「すべて差し引き三千万円。それ以下では取引できない」

「相変わらずやさしい声で随分と強気じゃねえか。え? 咲坊よ」

「先生、まずいって」隣から飯島が囁く。

 私は片手で彼を制しながら、さらに強い口調に替えた。

「私と交渉するつもりか?」

「お、何だ、脅すのか? お前さんが、この俺を?」電話の向こうの人物は、愉快そうに笑い声を上げる。「偉い言葉を使うようになったじゃねえかよ。飯坊はもっと素直だぜ?」

「三千万だ」

 電話の向こうからため息の漏れる音が聞こえる。

「ふん。いいか、咲坊。ダイアだろうが何だろうが、所詮は石だ。ただの光る石。その石ころに大金を払う奇特な連中がいなければ、何の意味もない。お前らが危険な橋を渡って手に入れたダイアモンドも、ただの石だ」

「…………」

「お前のことは昔から知ってるし、信用もしてる。だからな、やさしい俺としてはその石を二千万で買ってやりたいと思ってるんだ。どうだ? あとは好きにしろ」

「わかった。三千万だ」

「お前……。話聞いてたか?」

「もちろん。私としても腕も確かなあなたのことは信頼している。だからこそ、他でもないあなたに依頼をしているんだ」

「褒めて懐柔しようってか」

「あなたに定期的に依頼する人間がどれだけいる? 振り込めの台頭で腕利きの詐欺師の多くが引退した。今、あなたのところに残っている腕利きは数えるほどだろう?」

 私は笑い、間をたっぷり取った。

「数少ない大事な顧客を一千万で捨てるかどうか、迷うまでもないだろう?」

「ふん」

「私の腕はあなたも知っての通りだ。いい仕事をするぞ、私は」

「二千五百」

「三千万だ」

「ちっ。交渉にも応じやしねえ。強欲な野郎だな、おめえさんも」

「正当な価格を提示しているだけだ」

「はぁ……。わかった、それでいい……」

「ありがとう」

「あー、くそ。今度からは飯坊と交渉するからな」

 吐き捨てるように言うと、古野は電話を切った。残るのは無機質な電子音だけ。私は飯島に電話を返しながら、忠告する。

「勝手に交渉は行うなよ」

 飯島は何かを言う代わりに両手を広げる仕草を見せた。

「老獪な蛇には気をつけろよ。気がついたときには締め上げられ、弱ったところを丸呑みされる」

「肝に銘じておくよ」

 飯島はおどけてみせると、再び携帯をいじり始めた。

 私は時計を見てソファから立ち上がる。日も傾き、室内もかなり冷え込んできた。私はコーヒーのおかわりを淹れようと、部屋の右手にある給湯器で薬缶にお湯を入れ、それを簡易コンロで火に掛けた。棚からカップを取り出し、コーヒーを淹れるためのフィルターも用意した。さすがに寒くなってくると消費が速い。

「そういやさぁ」

「ん?」

 私が振り返ると、飯島は携帯から顔を上げずに話し掛けてきている。便利だとは思うが、四六時中触るほど楽しいものではないだろう。あんなものに、何を駆り立てるんだろうか。

「先生はどうして同業ばっか狙うのさ? 普通の、年寄りから金巻き上げる方が楽じゃんか。なんかこだわりでもあるわけ?」

「随分と今さらなことを聞くんだな」私は薬缶の様子を窺いながら答える。「別に何も。こだわりを持っているわけじゃない。お前の言うように、そこら辺の老人を狙う方が遙かに楽だ」

「でも狙わないじゃん。少なくとも俺が知ってる限りでは先生はそういうのやんないっていうか、やってたっていう話も聞かないんだけど?」

「旨味がないからな」

「いつもリターンよりもリスクを見ろって言うじゃん。それとは違うわけ? どう考えても詐欺師を騙す方がリスク高いだろ」

「そうでもない」私は沸騰したのを確認し、火を止めた。

「どういうこと?」

「高齢者を騙す方が楽だ。それは間違いない。だが問題はそのあとにある」

「あと? っていうと?」

「騙されたと気づけば誰もが絶対に通報する」

「うん」

「詐欺師は?」

「あ」

「そう、奴らは逆。絶対に通報はしない。自分達が警察に捕まるリスクがあるからな。自分達の犯罪を棚に上げて通報するような馬鹿はいない」

 私は腕時計の秒針を目で追いながら、挽き立ての豆にゆっくりとお湯を注いだ。良い香りが辺りを包む。

「でもさ、たしかに警察に通報される危険はねーかもだけど、ヤー公が出てきたらどうすんだよ。そっちの方がよっぽどリスクあんだろ?」

「だから上手く立ち回る必要があるんだ」

 私は淹れ立ての香りを楽しみながら、ソファへと戻る。

「ヤクザに出てこられると面倒だが、要は出させなければいい。何のためにお前にコスプレをさせたと思ってるんだ」

「?」

 飯島は不思議そうに首を傾げる。

 すべてを説明していないとは言え、理解もせずに仕事をしているとなると問題だな。従順な労働者ばかりが経営者に好まれるわけでもない。

 私はコーヒーを一口飲み、目の前の飯島を見つめる。従順な労働者は少し言い過ぎだな。

「今回、服田の事務所に嘘のガサ入れをさせたのは、奴らに警察に狙われているという印象を植え付けるためだ」

「え、そうなの? てっきりガサんときにあれこれ盗むためかと思ってた」

「そんなわけないだろう」

「んー、でもこの収穫だろ」

 飯島はテーブルの上に載っているダイアモンドと現金三千万を顎で指した。

「おまけに過ぎん」

「おまけに過ぎないわりには豪華じゃね?」

「もともと無かったものだと考えておけという意味だ。これに引きずられると、身を灼くことになる。忘れろ、と言ってもお前には無理な話か……」

「うん、無理」飯島は子供のように首を動かすと、百万円の束を五束、自分のもとへ引き寄せた。

「話を戻すぞ」

「ああ、うん、それで? 警察を意識させることによって、こっちの信頼を得たんだろ? それ以外になんかあるの?」

「一番の目的は、お前の言うように信頼を得るためだ。こっちの話に信憑性を持たせ、距離を一気に縮めるために一芝居を打った。だがそれだけじゃない」

 私はカップに口をつけ、コーヒーの風味を味わう。

 飯島は腕を組みながら、次の言葉を待っていた。

「奴らは振り込め詐欺の常習犯。いつ逮捕されてもおかしくない。それは客観的にも、もちろん主観的にも明らかだ」

「ああ……、そうか。なるほどね」理解が追いついたのか、飯島は大きく口を開き、頷いた。

「そうだ。偽物のダイアと三千万を渡した後、今度は本当の警察にガサに入ってもらった」

「上手い手だよなぁ。事前に一芝居打って信頼を得てるから、本物が来ても先生は疑われない。そして連中はまとめて檻の中だから、あとのリスクも考えなくてもいい」

「いい手だろ」私はコーヒーをゆっくりと楽しんだ。

「神懸ってるてか、悪魔染みてるっていうか……。さすがに先生は天才だな……」飯島は笑顔を見せながら褒めちぎる。

「お前の取り分は五百だ。手の中のダイアは置いておけ」

「目敏いなぁ……」飯島は舌を鳴らし、右手に隠していたダイアを机に戻した。「褒められて有頂天にでもなればかわいいものの。そんなに神経張り巡らせてちゃ、長生きできないぜ」

「だらだらと生きるつもりはない」

「せっかくの自由業なのに」飯島はおかしそうに鼻を鳴らすと、ソファに足を投げ出し横になった。「何にしてもよ、今回も上手くいったんだ。しばらくはのんびりしようぜ、先生」

「お前は間抜けな警官を演じただけだろうに」

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