第4話 恐怖の理由

『ゴブリン』

いたずら好きな妖精であり、中には物を盗んだりする者もいる。緑色の皮膚に尖った耳が特徴である。

異世界らしいものをようやく見て自分は異世界に来たということを実感することができた大輔だが、彼は戸惑っていた。

あのゴブリンが味方なのか敵なのか。前者であれば色々と聞きたいことがある。しかし後者の場合、自分は戦えるのかそれを心配した。

幸いゴブリンは大輔に背中を向けた状態で座って何か作業をしているようだ。

襲われないことを信じ身構えながらゆっくりと近づく。

あまり近づきすぎないよう5mほど距離を取り声をかける。


「すまない。少し聞きたいことがある。」


振り返ったゴブリンは大輔の顔を見ると驚いた様子で逃げ出す。

ゴブリンがなぜ逃げるのか大輔にはわからなかったが、とにかく追いかけた。情報を聞き出すため。


「ちょっと待ってくれ!悪いことをするつもりはないから!」


しかしゴブリンは止まらない。それにしても速い。どんどん差が開いていく。

するとゴブリンが急に立ち止まった。彼の前には湖が広がっていて逃げられなくなったようだ。


「ハァハァハァ…。」


大輔は疲れ果てていた。


「ちょっと…。聞きたいことが…。あるだけなんだ…。」


息を切らしながらも話しかける。

ゴブリンの顔は……。

やはり怯えた顔をしている。


(そこまで俺が恐ろしいのか。)


「や、やめろ!そう言って俺を食い殺すつもりだろ!」


ゴブリンの第一声はそれだった。


「食い殺す?なんのことだ。」


「とぼけるなよ!そんな姿して!」


「姿?普通の人間だが?」


人間が怖いのだろうか。


「自分の姿を見てみろよ!」


ゴブリンはそう言って湖を指差す。

言われた通り湖を覗き込むと金色に輝く満月と全身が黒い毛で覆われた狼が映し出されていた。


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