中央階段前

 


 



 一旦いったん、ふたつにグループを分けて、一階の出入り口を見て来たが、やはり、何処どこからも出られなかった。窓も開かない。


 中央の階段前に集合して、顔を見合わせる。何人かはあからさまに情けなげな顔をしていた。


「ま、建物から出ても、別の世界かもしれないし」

と変な勇気付けをするように美弥は言った。


「やはり、来たところから帰るしかないんじゃないか?」

と大輔が言う。


「あの配膳室~?」

 誰もが戻りたくなく、嫌な声を出す。


「もしかしたら、あの霊が俺たちを引き込んだのかもしれない。だったら答えはあそこにあるはず」


「……大輔、霊とかあっさり言ってるし」


 美弥はある事情により、いじけていた。


 だが、

非常事態ひじょうじたいだろ、仕方しかたがない」

とあっさり流される。


「これは夢だ。

 俺はそう決めた。


 だから、霊もいる」


 おいおい……。


 そういう思い切りのいいところは嫌いではないのだが。


「ともかくもう一度、配膳室に行ってみよう」


 ええーっ!?

と大ブーイングが上がったが、他に手段はない。


 それに、みんななんとなく大輔を指揮官しきかんだと思っているので、仕方なくそれにしたがうことにした。


 ……年長の叶一がいるのにな、と美弥はちょっと思いながらも。






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