海際にて、指

おにからすだち

1話目



海岸というのはいろんなものが流れ着くもので、

砂に混じって、流木や空き瓶、果ては何かの死骸なんかも、、、



そんな海岸にどこから流れてきたのか、じゃりじゃりと二人の影


B「俺は昔っから多趣味なもんで、いろんなことに手を出したが、流れ流れて結局のところ釣りにはまってるよ」


A「人気のある趣味にはそれなりの理由があるんだねえ」


B「そうなんだよ。俺もまさかここまで楽しいとは思わなかった。なにが楽しいって、、、お、このあたりでいいか」


A「じゃあ俺はあそこにするよ」


冷たい潮風が肌をなでる早朝

手をこすりながら、二人は少し離れたところで釣りの準備をする


B「この前娘に、ああ、まだ小せえんだけどよ、かわいいんだこれが。

  で、娘にお父ちゃんマグロ食べたい!釣ってきて!なんて言われてさあ

  おう任せとけ!と言ったはいいがこんな海岸で釣れるわけもねえ。」


A「ははっいつか釣れるといいな」


B「どうして下らん見栄を張っちまうかねえ、

  そんで俺としても釣れませんでした、なんて言えねえもんだから、

  しょうがねえ、魚屋で買っていったよ」


A「切り身をかい?」


B「ああ。幸いというか残念というか娘は気づかなかったけどな」


A「かわいらしいじゃないか」



そんな調子で他愛もない話をしていると、いつしか会話も尽きて波の音だけが響くようになる




何時間経っただろうか、突如、叫び声があがる



B「ぐわぁっ」


A「どうした」


B「指、、つった、、、」


A「なんだ、おどかすんじゃないよ。大の大人がそんなことで大声だして、

  つばでも塗ればいいさ」


B「ちっ、ちがう、、指をつったんだっ」


A「わかってるよ。つばを塗るのは切り傷だって。冗談が通じないんだから、、、おっ、きたきた、、、よっと、こいつはなかなかうまそうだぞ」


B「そうじゃない、違うんだ!これを見てくれっ」


A「なんだよもう、、、







   、、、、ああ、こいつは食指が動かない






  なんせ、やっこさん指だけなんだもの

  

  それにしても切り身を釣るとは恐れ入った」

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海際にて、指 おにからすだち @Onikarasudati

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