マリオネットの恋(改稿版)



 一体全体、なに緊張してるんだろう、私。

 二人きりで話するのも、初めてじゃないのに。

 まるで出逢ったころみたいに、そわそわしてる。

 

 ――だめ! とってもあなたの顔が見られない!


 だって私はあなたがこんなに素敵だったって、知らなかった。

 ここ数日で一体なにが変わったの? あなたの中で……こんなのってちょっとズルいわ!


 まるで私はおどけたマリオネット。あなたのてのひらで転がされてる。

 あなたも私のマリオネット。常識という世間の思惑に操られてる。

 じゃなかったら、一生目立たない私となんて、つきあわなかったはずだ。

 私じゃなくったって、きっとよかったんだ。


 私は思う。

 ――ふっきろう。明日のことはあとで考えればいい。

 たとえば今だって、一瞬後には過去じゃない。

 今をふみしめて、続く道のりが重なって思い出になる。

 だからどんなときもまっすぐに!


 くやしいけれど、それしかない。それだけしか……。

 ただまっすぐに。ただ信じる。

「愛」なんて言葉、思い浮かべるだけで、頭がショートしそうよ。

 うん、やっぱりそれは世界で一番、「見えない」ものね。


 ひょうが降って来たわ! 嵐が来たわ! 慌てなくてもあなたはきっと来てくれる。

 そういう人よ……。


「車借りてきたから、乗れ!」

 河になった道路をよけてショートカット!

 たよりになります!

「すげえ雨だ」

 ずっとこのまま、あなたの助手席にいたいわ。私は息をついてそう思う。

「テルテル坊主もかたなしね」

「のんきだな」

 こんなときなのに、笑うのだ。あなたは。



               END

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