第二.五五日目 断片から書く

2017年7月10日「愛とかじゃなくて」

 超然としているあなた。力をくれる存在。

 愛とかじゃなくて。きっと素敵な瞬間を、ずっと忘れないために。

 見つめてるわ、あなたを……。

 だけど待たない。私もすぐについてゆく。


 愛とかじゃなくていい。その感情が私を支えている。

 大丈夫。なんとかする。

 GOサインを待ってる、今も……。

 あなたからのメッセージ……まだ?


 走り出す心は誰にもとめられない。あなたへとかけてくこの感情ココロ

「愛とかじゃなくていい」本当?

 いっしょに何かするだけで、気が休まるの。まぎれるの。

 二人で退屈するのもいいよね。

「あ! 星がくだけた!!」

「花火だよ」


 空に散ってく人の命を見たことがあるわ。ちょうどこの花火みたいだった。

 耳に残響する大砲の音。パラパラ落ちてく希望の欠片たち。

 全身で拒否しても近づいてくるの。死の音が……。

 だけど笑う。笑えるの今は。信じているの。だから……。

 心、裏切るように、ひそやかに、笑う。


 大丈夫。今は笑える。あなたがそばにいるから。

 ギュッとシャツを握りしめる。

 あなただけは不安にさせたくなくて、嘘をつかずにいられなかった。

「キレイね、花火!」

 夜の暗さに、私は涙を隠した。


「大丈夫?」

 ハンカチをくれるから、首をふって、

「感動しちゃったの」

 また嘘。変ね、あなたの前では失敗ばかり。どうしてか、わからないの……。


「僕も知ってる。戦いの音に似てるよね。少し離れようか?」

 ハッと息をのんで、あなたを見つめる。

「日本の花火はきっと少し離れたところから観たほうが綺麗なんだ」

 思い出がぬりかえられてく――まるで悪夢からさめたよう。


 ああ、そうね。そうだったわね。なんて素敵な国!

 大丈夫だわ。思っていたより私、ずっと……。

 ずっとあなたに惹かれてる。

「大好きよ……ノリト」

 巨大な花火が花開いた。

 聞こえなかったなんて嘘! 二度と言えっこない。

「ねえ、ここでキスして……?」

 嘘。おアイコ。

 でもアイシテル。



               END


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