第37話 野外訓練②


「よーし。大体の班分けは出来たみたいだな。今回の訓練は紅白分かれてのチーム戦だ。各代表はクジを引くように」

 教官の声に従ってリヒトがひいたクジは白組だった。

 ――白か。なんか運動会を思い出すな。この世界の学校にも運動会はあるのかな?

「勝ったチームには賞品が出るからな。頑張れよ。各班の代表……指揮官が戦闘不能になれば相手に1PTだ。危険がないように教員も目を光らせているが無理はしないように。では解散!」

 その一言で生徒達がワラワラと森に入っていく。

 野外訓練の始まりだった。



「じゃあ早速食材を探しましょ」

 解散になった瞬間セシリアが声をあげる。

「え? いきなり? 他にやることがあるんじゃ……」

 まずは野営地の確保だとか偵察が先じゃないのかとリヒトが訝しげに聞いてみると

「はぁ? あんた何のためにここにいるのよ?」

 ――いや。訓練だろ

 心の中でツッコミつつも口に出さないのは言い出したら聞かないセシリア対策の一つとしてリヒトが身に着けたものだ。


「それで何を探しますの?」

 首を傾げながらロゼが聞くと即答で

「まずは肉よ! カレーには肉よ!」

「カレー? 何でカレー?」

 リヒトの疑問にため息をつきながら、やれやれといった感じでセシリアが言うには

「リヒト。あんた本当に解ってないわね。キャンプといえばカレー。カレーといえば肉よ?」

 ――だからキャンプじゃねぇよ

「……まぁカレーでいいけど。もちろんカレー粉はあるんだよね? まさか香辛料を探そうなんて言わないよね?」

 こめかみを押さえつつリヒトが確認してみると、セシリアは目線を合わせず汗を流している。

「……さぁ! 肉を捜しましょ! 後のことはそれからで!」

 コイツ誤魔化しやがったなと心で呟いたリヒトとロゼは肩を落としながらセシリアに追従するのであった。




 ――数時間後――

 茂みに隠れながらリヒトは目を瞑ると風探知を使いながら地形の把握と獲物を探していた。

 セシリアに任せていると見境なく突っ込んで最悪迷子になりかねないからだ。


「……いたよ。前方10m先にウサギがいる」

「便利ですわね。よければわたくしにも今度教えてほしいですわ」

 コソコソ話しているとセシリアが痺れを切らしたのか

「よし! いくわよ! 風烈断!」

「え? ちょ、待っ……」

 轟音とともに振り下ろしたバトルアックスが巻き起こした暴風は目の前の木々をなぎ倒しながら獲物を捉え……

「……木っ端微塵ですわね」

「……うん。しかも周りの動物達も逃げ出したみたい」

 ――はたして俺達は飯にありつけるのだろうか……

 リヒトは若干あきれつつもロゼと一緒に落ち込むセシリアを慰めるのであった。


 

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