妖貸し《あやかし》

えっ？じゃないじゃない？

第17話 お客ってこの扱いじゃない

「もう一泊したら良かったんちゃうかの～」

「しつこいわね～アンタ」

「まぁ報酬は頂けたし、いいじゃないですか」

「零（レイ）は～ん、それがアカンのとちゃいます？金もろたら、ハイさいならーってアフターフォローって大事なんちゃいますか？リピーターって大事にせなアカンと思うで、No1になるには、そらぁもう、こまめに客の下心を突いて、ハートを鷲掴みせんと…グハッ…グッ…」

「うるさい…なんの話してるのバカ猫」

「キ…綺璃子（キリコ）…これはアカン…リアルに心臓、鷲掴みされとる…カハッ…」

「でも…いいんですか？あの旅館というか…」

「ん…あの姉妹のことですか？」

「えぇ…なんか、女将さん、妹さんのこと嫌ってるみたいだったし」

「ん～、そうでしょうかね～、まぁ、僕らが何か出来るわけじゃないですしね…」

「そうかもしれないけど…」

「綺璃子（キリコ）さん、シトリーには、もうひとつ職能があるんです」

「職能ですか？どんな？」

「シトリーに呼び出された女性は、それを頼んだものに嘘を吐けなくなるんです」

「つまり…不破（ふわ）さんにですか？」

「えぇ…ですから、妹さんの話は本音ですけど…妹さんも女将さんには素直になれなかったんじゃないでしょうか…」

「じゃあ、なおさら…」

「アホやな…綺璃子（キリコ）、えぇか、妹の本音を聞いた姉が、この先どうするかなんて、ワシらの出る幕ちゃうゆうことや…本人通しが、乗り越えなアカンねん、座敷童も妹のところに戻らんと、見守ってたんわ、姉妹で仲良うしてほしかったからやと思うで、ワシは」

「うん…僕もそう思いますよ、イプシロン（仮）」

「大丈夫や、座敷童も、なんやかんやいうて、影で見守ってんねんぞ、悪い方に働くわけやない」

「そうだよね…うまくいくよね」

「そこでだ、まだ間に合うで、戻って、しゃぶしゃぶ食べよ! ワシ、牛の肉好きやねん」

「なんかアンタが言うと、不味そうね…生きたまま食ってそうで…」

「アホッ、あのな～、日本人が牛食うたんわ、最近のことやんか、ワシなんか、結構前から食うとるよ」

「あっそう…だから何なのよ」

「だから、肉のしゃぶしゃぶ食いたいやん、昔は無かったもん、生か、グツグツ煮るだけやもん、なんや聞いた話ですと、お寿司にもなっとるらしいね、牛さんも美味しなってるんちゃうかな、昔はソコらへんで、臭いだけの生き物やったけどね」

「臭いだけって…アンタ食べてたんでしょ？」

「うん…食べたで、なんや火ぃ吹くのとかいますやんかー、あんなんがボワッと焼いてね、アレ美味しいねん、醤油とか塩とか味噌とか、付けて食うとね～」

「なんかアレね…和風ステーキみたいに食ってたのね…なんか腹立つわ、イラッとするわ」

「せやから、歴史がちゃうねん、アメリカ人よりにステーキ食ってるんちゃうか？ワシ」

「笑えない歴史よね…事実だったら」

「東京に戻ったら、焼肉食べましょうか、今日は奮発しましょう」

「ホントですか？不破（ふわ）さん」

「えぇ、遅くまでやってる、お店知ってるんです、小さいお店なんですけど、一応、会員制なんですよ」

「会員制の焼肉屋？」

「アレちゃうか？なんや、裸のオネェちゃんが焼いてくれるみたいな、お店やろ？なっ、なっ」

「えぇ～そんなお店行きたくないです～」

「ほな綺璃子（キリコ）だけ先、帰り、2人で行きますわ、そのほうがえぇ…零（レイ）はん!そうしよ!」

「ハハハ、そんな店じゃないですよ…それに、イプシロン（仮）は、そんな自由に動けないでしょ、綺璃子（キリコ）さんから遠く離れると苦しくなりますよ…妖気が切れるから」

「そうなん？マジで？…ホンマなん？」

「フフンッ、ざまぁないわね」

「あっ…綺璃子（キリコ）さんもイプシロン（仮）が離れると、転んだだけで魂抜けますよ…たぶん」

「えっ？」

　改めて、運命共同体であることを知る2人であった。