第十章 入れ替わりパニック

26:い、入れ替わってるううううう!



「お昼でーす」


 いつものように、ルーシアさんがトレイを手に休憩室へ入ってきた。一緒にお昼を食べようという女神様もいる。

 今日のメニューはミートソースらしきパスタと、トマトみたいな赤いジュース。

 手早く平らげると、ルーシアさんが慌てた様子でもう一度部屋にやってきた。


「はあっ、はあっ……」


 豊満なおっぱいを上下させて、息を切らすルーシアさん。

 額に浮かぶ汗がえっちいよ。



「どうしたんですか?」

 女神様が問うと、


「うええぇ……っ」

「本当にどうしたんですか!」

「きゅ、急に走ったのでお昼をリバースしそうに……」


 女神様に背を撫でられるルーシアさん。

 一息ついて、ルーシアさんは言った。



「あれ、飲んじゃいました……?」



 なにを?

 なんだか嫌な予感がして、聞き返そうと瞬間だった。

 急に、視界がワープゾーンに突入した時みたいに歪んで、地に足のつく感覚が消え失せた。


 恐怖を感じたのは一瞬だ。

 すぐに、その異常な感覚はなくなった。

 ルーシアさんの横で、俺が俺を見つめていた。


「飲んじゃったみたいですねー」


 ルーシアさんが、困ったように頬をポリポリと引っ掻く。



「まさか、これは……」


 俺は自分の胸を見下ろした。

 白いワンピースに包まれた、限りなく平らに近いわずかな膨らみ!

 やはり!




「い、入れ替わってるううううう!」




 俺は自分のの胸を揉んだ。

 まあまあ柔らかい!


「ちょっと! なにしてんですか!」

 俺の姿で怒る女神様。改めて見ると、俺ってパッとしない顔だなぁ。




「き、君の名は……」

「フランです!」


 ビンタされた。

 確定だ。俺と女神様は身体が入れ替わっている!



「いいんですか女神様。今叩いたの、自分の身体ですよ。俺、無傷ですよ?」

「あっ」


 ハッとした顔で口をおさえる女神様。


「くっくっく。これでもうビンタはできまい」

 もう一度、お胸をモミモミ。


「や、やめなさい! 私だってトモマサさんの身体を叩きますよ!」

「どうぞ。それやられても、今痛いのは女神様ですから」


 往復ビンタされた。


「そうですよね。あとが残らない程度の攻撃なら、今痛いのはトモマサさんです」

 にっこり微笑んで、ビンタの連発。


「すみませんでしたああああああああッ!」


 頭を下げたらビンタが止まった。

 ちょっと悪ふざけしただけじゃんか。

 入れ替わったらまず胸を触る。定番ネタなんだし、許してくれてもいいのに。



「というか! ルーシアさん! どういうことなんですか!」


 今度はルーシアさんを問い詰め始める女神様。



「お母さんがお土産に買ってきた入れ替わりのポーションを、間違えて出してしまったみたいでーす」


 えへっ。

 と誤魔化すように笑う。

 かわいいなあ。そんな顔されたら、失敗も許しちゃう。

 むしろグッジョブだよ。

 だけど女神様は吠えた。


「どんなポーションですか! 何の目的があって買ってきたんですか! そんなもの、ジュースと間違えるようなところに置いておかないでください!」

「正論すぎてなにも言えませーん」


 申し訳なさそうに、ルーシアさんが狐耳をぺたんと閉じた。


「まあまあ、女神様。過ぎたことを言っても仕方なし。いいじゃないですか。これ、どれくらいで戻るんです?」

「半日ですよー」

「ほら。戻れるならいいじゃないですか」

「まあ、それなら。では、元に戻るまで、私の身体に変なことをしないかトモマサさんを監視します」

「それはだめでーす」

「えっ」


 女神様が驚いて、ルーシアさんを見る。


「トモマサさんには午後の指名が入ってまーす。フランさんには、トモマサさんのフリをして、お仕事をしてもらいまーす」

「ええええ!?」


 そう、そうなのだ。

 俺は女神様の身体を半日いじれるうえに、厄介なアブノーマルプレイからも解放されるのだ!

 ついでに、女神様がいじられる姿も堪能出来るわけだ。


「そういうことなら仕方ないですね。おおっと? もう休憩も終わりの時間じゃないですかぁ? さあさ、女神様はプレイルームに行った行った」

「あっ、ちょっと!」


 俺は俺の姿をした女神様を、休憩室の外へと押しやった。



「では私もー」


 ルーシアさんも、仕事に関する簡単な助言をするためか、女神様と一緒に出て行った。

 これで休憩室には俺一人!

 ここからは俺の時間!



「いいぞ! さすがは異世界! こんなこともあるんだな!」



 まずは――ウインドウ!

 と念じてみる。

 ブオン!

 ホログラムウインドウが開いた。


「キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!」


 次は、機能の方だ。


「こい、カメラカメラカメラーーーーーーッ!」


 開いた!

 プレイルームの動画!


「ふはははははは! 自分の才能が怖い!」


 女神様の盗撮能力もコントロール出来るみたいだ!

 これで女神様の羞恥プレイを楽しみながら、女神様の身体を楽しめるぜ!


「ひゃっほーっ! イエスイエス! うひゃあああああああ~~~~!」


 片手を突き上げて跳ね回っていると、ルーシアさんが戻ってきた。



「ご機嫌そうですねー」

「うわっ、るるるるルーシアさん!」


 慌ててウインドウを消す。


「ど、どうしたんです?」

「トモマサさんには、私と一緒に受付にいてもらいまーす」


 笑顔でしっぽフリフリ。


「えっ、なんでっ」

「フランさんの身体に変なことをしないか、監視するためでーす。フランさんに頼まれましたのでー」


 なんだと?

 くっ。女神様め、ぬかりない。

 これじゃあ、盗撮能力の使用もお触りも出来ないじゃないかーっ!




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