23:第四の性器ッスよ




 たとえばこんな感じ。


「トモくんの趣味はなんスか?」

 女の子とデートしたり、えっちなことしたりする妄想です。

 言えるか。


「え、ええっと……ど、読書かな?」


 つまんなっ!

 なにこのテンプレセリフ。

 しかも、主に漫画とライトノベルだからね。



「そうなんスか。ローラも魔導書はよく読むッスよ」

「そ、そうなんだ。へー」


 魔導書がなんなのかよくわかんないので、適当に流しておく。

 コミュ力ないんでね、掘り下げるとか無理ですよ。


「今日の天気は――」

「えっと……あっ、晴れ、かな?」


 天井の絵を見上げる。


「好きな食べ物は……」

「ラーメンかな」

「ラーメンッスか?」


 異世界にはなかったのかな。

 そういや見たことないね。


「麺の料理なんだけどね。えっと、じゃあその、ローラさんの好きな食べ物は……」

「岩塩ッス。流木もいい感じッス」


 ちょっとなに言ってるかわかんない。



「あ、ローラ、クッキー作ってきたッスよ」


 ふと思い出したように手のひらを叩き、ハーフパンツのポケットから小さな包み紙を取り出した。


 女の子の手作りクッキーだと?

 これはドキドキポイント高いですぞ!

 ローラがそっと、包みを開いた。

 中には四角いクッキーが一欠片、入っている。

 作ってきたって出す割には少ないなぁ。


 って、バカ!

 そんな贅沢言ってられる身分じゃないでしょ!

 パン、と自分の両頬を挟み込むように叩く。

 するとローラが言った。




「これ、食べさせてもらえるッスか?」



 君が食べるんかーい。

 いやまあ、いいけどね?

 女の子をあーんしてあげるのも、やってみたかったしね?

 俺が頷いてクッキーを受け取ると、ローラは立ち上がり、ハーフパンツに手をかけた。




「じゃあ、脱ぐッスね」


 なん……だと?



 ずるり、ハーフパンツが下され、水玉パンツが顔を出す。

 スライムの女の子がクッキーを食べさせてほしいと言い出して、頷いたらいきなりズボンを脱ぎ始めた。

 この現場を見ているかもしれない女神様には、なにが起きているのかわからないだろう。俺にもわからない。


 動揺していると、ローラがまたまた顔を赤くさせた。


「あの、ローラ達スライムはお尻からモノを食べてるッス。でも、人間族にとっては、お尻は恥ずかしいものなんでしたッスよね」


 ああ、そういうことか。

 どういうことだ。

 えっ、じゃあ排泄物はどこから出すの?

 口から?


 ああ、さっき恥ずかしそうに口をおさえたのはそういうことか。

 だったらマスクでもしていればいいのに、現在進行形で口が見えているぞ。

 人間に置き換えるのなら、下半身丸出しってわけね。

 そう思うと、お口が卑猥なものには、見えてこなかった。



「じゃあ、その、目隠しも持っているので、それでローラのお尻を見ないようにして、食べさせてもらえるッスか? それなら、恥ずかしくないッスよね?」

「えっ? あ、ああ、うん。ソダネ」



 つい、頷いてしまった。

 ローラがシャツの中から、黒いアイマスクを出した。

 それを装着してみる。

 おかしいな。胸元から出したように見えたのに、このアイマスクひんやりしてるぞ。


「では、お願いするッス」


 ローラは俺にクッキーを持たすと、パンツを脱いだのかな。布のこすれる音がした。



「準備OKッス」

「そ、それじゃあ、食べさせるね?」

「よろしくッス」


 プレイ内容はこうだ。

 どうやらお尻を突き出しているローラと向かい合い、手探りで穴を見つけてクッキーを突っ込む。


 なにこれ、どういう状況なの?

 そっと手を伸ばすと、中指が冷たくて、硬いものに触れた。

 なにこの鉄みたいなの。


「あっ、ダメッス。そこはブラックジェノサイバーです」

「えっ? なんだって?」

「二度も言わせないでくださいッス。ブラックジェノサイバーッス。第四の性器ッスよ」

「そ、そうなんだ。ごめんね?」

「気をつけて欲しいッス。えっちすぎるのは禁止ッス!」



 性器ってそんなにあったんだ。

 そこに触れるのって、えっちすぎることなんだ。

 何も見えないし、ブラックジェノサイバーがなんなのかもわからないけど。

 今度こそ穴を探し出そうと、中指でぶよぶよしているローラの肌をなぞった。



「アーッス!」


 うーん、変な喘ぎ声。

 肌の感触が未知の領域すぎて、ちっとも興奮出来ないし!

 しばらくそうしていると、突然、俺の指をヌメヌメした紐状のなにかが絡め取った。


「ひぇっ、な、なに?」


 表面がザラザラした猫の舌みたいなそれは、俺の人差し指と中指の間に滑り込み、つまんでいたクッキーを奪うとどこかに引っ込んでいった。


 ずりゅっ、ずりゅりゅっ!

 ずぞぞぞぞ!

 ぽんっ!


 なにかをすする様な音と、空気砲を撃ったような音が聞こえた。

 なにが起きたの?

 怖い怖い怖い。スライムの女の子、怖すぎるよぅ。



「あ、もう目隠してはずして大丈夫ッスよ?」


 アイマスクを取ると、ハーフパンツを穿いたローラが、胸のあたりで手を合わせ、もじもじしていた。


「トモさんって、大胆なんスね。ローラのホワイトブレイカーを、指先でクラッシングして、ブラウンギミックにまでフェアリーフェアリーするなんて。スケベすぎッス」


 ごめん、誰か翻訳してください。

 結局なにが起こったのか判明しないまま、満足したのはローラは帰っていった。



 自室に帰ると、なぜだか女神様が睨んできた。



「お兄ちゃんのセクハラ大魔王」


 ええー。

 俺、一体なにをしていたの?



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