ファインダー越しの君

芽衣子

第1話

「初めまして、大田 杏香 と言います。

よろしくお願いします。」



2年生の秋、高校では珍しい転入生が来た。


杏香という女は日本人形のような髪型、

なのに美人というよりかは

目がぱっちりとしていて可愛い系だった。


だが、杏香は腕、足がアザだらけだった


前の学校でいじめられていたのか、

転入してきたのも納得だ。



「大田の席は、窓側の…あの机に

カメラ置いてるやつの隣な。」


「あ、はい。」


だから俺の隣に新しい机があったんだな

薄々わかってたけど。


杏香は椅子の音をたてずに座っていたから

もう隣にいることに気が付かなかった。


「あ〜、よろしく杏香…さん?」


「…よろしく」


あれ、無愛想

笑いもしないしまずこっちを見ない

見ようともしない


まぁ、どうでもいいか、すぐ席替えするし。


適当にどこかサボりに行くかなとか思うけど

そんな漫画にありがちなことは出来ない。


留年するからな。


……やることが無い、担任の話も

面白い話は一つもないし、多分聞いてる奴は

級長の草壁だけだろう。


杏香の方を見てみるとずっと空を見てた

姿勢がいいからだろうか、

彼女の独特な雰囲気がそうさせているのかは

知らないが

すぐにでも消えてしまいそうな感じがして

写真を撮りたいと、この子が生きている

という事を確認してみたい、と思ってしまった


俺は机に置いてあった愛用のカメラを

手に取ると杏香の方へレンズを向け

迷わずシャッターを押した。



カシャッという音にびっくりしたのか

杏香は視線をやっと俺に向けた。


周りからは


「またカメラバカかよ〜!」

「もぉ〜静夜〜転入生が来たからって撮るなし〜!」


とか言われてたけど俺は気にせず

杏香とずっと見つめあっていた。


逸らしたらいけない気がした、

真っ黒で綺麗な瞳に吸い込まれそうになった


「……なんで撮ったの?」


俺に初めて話しかけてきた言葉がそれかよ。


まぁ俺の行動が悪かったんだけど。


「なんかお前消えそうだったから?」


俺がそう答えると何を言わずにまた

空を見始めた。


それから杏香が俺に話をかけることも

返事をしてくれることもなくなった。



やっぱ俺変なことしたかな。

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