第11話

 阿久津あくつのワークショップに参加してから1か月が経った。毎週水曜の夜-阿久津の都合が悪ければ月曜か金曜に振り替えられる―に中野なかのの会議場に集まっては2時間ほど参加者たちとディスカッションをしたりレポートを書かされたりする日々が続いていた。もっともディスカッションとは名ばかりで、ほとんどの時間は阿久津が最近のニュースや流行はやりのテレビ番組や映画を毒気どくけたっぷりに論じるのを一方的に聞かされていた。大勢の人を集めてするような話ではないので、「この人は友達がいないのか?」と思わざるを得なかった。もちろん話をするだけではなく、ワークショップだけあって実践じっせんの時間もあって、発声練習をしたり、口角こうかくを上げて顔の筋肉を引き締める運動をしたりすることもあった。先週は最後に参加者全員でジェンカを踊って、これには思わずテンションが上がってしまった。前・後・前・前・前、とステップを踏んだのはいつ以来だろう。家に帰って時季外じきはずれのそうめんをすすりながら「あれに何の意味が?」と気付くまでは楽しかったのは確かだ。

 また、阿久津は毎週日曜の夜に自由じゆうおかのスタジオを借りて一人だけで好きなことをしゃべり倒す番組をインターネットで生で配信していて、ワークショップの会員も希望すればその番組を見学することができた。物は試しと私も申し込んでみたが、放送の中で見学者の顔が映りこむことがあって、会員といっても一般人なのだからプライヴァシーに留意りゅういしなければならないとのことで、見学にあたっては阿久津以外は全員メキシコのルチャドールがかぶる派手派手しいマスクをかぶらなければならなかった。プライヴァシーというのは建前たてまえ覆面ふくめんの見学者たちがズラリを並ぶ映像が欲しいだけなのではないかという気もする。実際にかぶってみると、視界が狭く息苦しいことこの上なく、これでリングの上で飛んだり跳ねたりするレスラーたちはまさしく超人なのだと思わざるを得なかった。

 調査のために参加している私の目論見もくろみがばれることはなく、阿久津たちと2時間を過ごすのは退屈ではあったが苦痛とまでは言えなかったが、唯一面倒だったのは黒ずくめのファッションをなかば強制されたことだ。2回目に参加したときにスーツの下に白いワイシャツを着ていったら、「キャラクター設定を守らなきゃダメじゃん」と阿久津に叱られて、他の参加者からも批判の視線を受けたので、その次からはワイシャツを黒に戻した。「キャラクター設定」くらい自分で決めさせて欲しいものだが、反抗するのもまた面倒なので大人しく従っている。

 そして今夜も中野まで来て、阿久津の話を聞かされているのだが、この主宰者しゅさいしゃはわざわざ口から息を吐き出して部屋の空気を振動させて何が面白いのか、とうんざりしつつあった。私は仕事だからいいようなものの、創作上の方法論を知りたくてやってきたクリエイター志望の人は無駄話ばかり聞かされてやってられないだろうな、と思う。それにこれから調査をどのように進めていくかを考えなければならなかった。この1か月は様子見ようすみついやしたとして、ここからは自分で動かねばならない。ワークショップ自体は特に問題はなさそうで、徳見とくみくんの母親が心配されていたようなカルト的な集まりではないことは確かだったが、とはいえ、まだつかみきれない部分が残っているのも確かで、それにどうやって近づくか、方法はまだ見えていなかった。一番手っ取り早いのは阿久津と直接話すことなのだが、初回に『荒野の七人』を持ち出して失敗してからというもの、私は必要最小限にしか接触しないようにしていたし、阿久津の方からも私に近寄らず、私と話をしなければならない時も初回の件には触れずに表面上はにこやかにしていた。あの事は気にしていないかのようによそおっていたが、気にしていなければ装う必要もないので、やっぱり気にしているのだ。はっきり口に出さないのがかえって不気味で、そんな風に私に対して気持ちを貯めこんでいる人から話を訊くのは無理な話だった。徳見くんから話を訊くことも考えたが、数回イベントに参加して観察したところ、スタッフではあっても彼はそこまで深い関わりを持っていないように見えた。「将来右腕になってもらいたい」と阿久津はこの前言っていたから、今の彼はまだ右の小指ほどの存在でしかないのかもしれない。

「うんうん。でも君が言うような常識って僕は存在しないと思うんだよね」

 いつの間にか議論が白熱していた。赤のギンガムチェックのスーツを着た阿久津が前のめりになって椅子に腰かけている。曲芸をするアシカと並べばさぞお似合いだろうが、それ以外の用途には全くもって不向きな格好だった。

「常識が存在しないって、そんなことはないと思います」

 受けて立っているのはライさんだ。正式なスターリーネームは「ライブラ」だから天秤座てんびんざから取ったのだろうが、阿久津も他の参加者も彼をライさんと呼んでいた。がっしりした身体の温厚な人で、この前のイベントの発言によれば大崎おおさきの電機メーカーに勤務しているらしい。

「だから、ないんだよ」

「でも、みんながそう言ってるじゃないですか」

 そう言われて阿久津が腕を組みながら笑みを浮かべる。唇があぶらにまみれたように光っているが、人一倍美容に気を使っているこの男がまさか店屋物てんやものを食べるわけがないから、リップグロスを塗りたくっているのだろう。

「その“みんな”というのは誰のこと?」

 ライさんが言葉に詰まる。してやったり、と阿久津の顔に書いている。

「ライさんが誰かから直接聞いたわけではないんだよね? どこかでたまたま耳にしただけなんじゃない? そんなあやふやなものを僕は信用できないな」

 それから阿久津のライさんへの反論が始まった。柔らかな話し方だったが、それはすべやかで美しい絹織物きぬおりものの下に隠された暗殺者の短剣のようで、多分に毒を含み人を傷つけずにはおかないものだった。中には他の人間には分からなくても言われた本人にだけ突き刺さる言葉もあったのだろう。みるみる顔を青くしたライさんが左右を見渡すが助け舟を出す人はいない。言葉の上では理屈では阿久津は正しくて反論のしようがなく、下手に議論に加わって巻き添えを食うのはごめんだと思ったのは私だけではないはずだ。

「いや、ライさんは悪くないよ。むしろ重大な問題を提起してくれたと僕は感謝したい。このワークショップを開いた目的のひとつは、なるべく多くの人を根拠のない思い込みから解放してあげたい、と思ったからだしね。うんうん」

 阿久津がテーブルの上に置いてある小さな箱からスクワランオイルの入ったカプセルを取り出して5、6個まとめて一気に飲み込んだ。

「みんなも誰かが作り上げた常識とかいう幻に縛られていたらダメだよ。真実は自分にしか見えないんだからね。それでライさん」

 突然呼びかけられたライさんが椅子の上で身を震わせる。

「これもいい切っ掛けだと思って、ライさんも変わったらいいと思うよ。リア充という立場に満足しないでさ。僕らと一緒にまだ誰も足を踏み入れていない砂漠の横断にチャレンジしていこうよ」

 このワークショップでサハラやゴビに行く予定などないはずだが、ライさんはすっかり萎れて、ありがとうございました、と言うのがやっとだった。阿久津はライさんに向かって「リア充」、リアルが充実している、というのを略した流行はやり言葉を連発していたが、仕事と家庭が順調な様子を隠そうともなかったライさんが気に食わなかったのだと思われた。マグニの社長時代に女子社員と結婚したものの1年と持たずに離婚している、そんな私生活も影響しているのかもしれない。正論の陰には生々しい感情が常に隠れているものだ。

 これに限らず、阿久津が参加者を一方的にやりこめる、いわば主宰者による参加者の虐殺は毎週水曜の夜に1度は必ず行われていた。目的意識の希薄さ、生活習慣の乱れ、社会経験の不足、といったそれ自体は誰にでもある目くじらを立てて責めるにはあたらない欠点を見つけるや否や、阿久津は世界や宇宙や人類史じんるいしを持ち出して徹底的に攻撃した。スズメバチの巣ひとつを駆除するのにデイジーカッターを投下するがごときオーバーキル、としか言いようがない話しぶりで、先週はカシオペアさんが槍玉に挙げられて、彼女はレンズが涙で濡れたメガネを外してから、ご忠告に感謝します、と健気けなげにも頭を下げていた。

 そのような攻撃を阿久津がサディスティックにたのしんでやっているかと言えば、そうでもなさそうだった。参加者をやり込めた後の彼はいつもとても疲れて憔悴しょうすいしきったように見え、正論で他人を攻撃したとしても、それが何ら自らのポイントにならないことをよく理解しているようだった。特に彼はマグニで優れたクリエイターたちと長く一緒に仕事をしていて、いつも社内の議論で打ち負かしてきた他の仲間が世間で彼よりも高く評価されたことで、正論が唯一の解ではなく、つまらない正解よりも美しい誤答ごとうが選ばれることもある、むしろその場合の方が多いというのを痛感しているはずなのだ。ガリ勉して100点満点のテストでパーフェクトを取ったのに、他の友達は悠々と120点、200点も取ってしまっている虚しさ、とでも言うべきだろうか。それにもかかわらず、阿久津は参加者を攻撃せずにはいられないようだった。相手の肌を鋭く切り裂いた刃はそのまま持ち主である阿久津の四肢ししをバラバラに切り刻んでしまうのに、そんな恐ろしい妖刀を捨てることもできずに振るい続けている、そんな呪いにかけられているかのようだった。手を叩く音で現実へと引き戻される。

「それじゃあ話題を変えようか」

 そう言うと阿久津はホワイトボードに書かれていた「心のデトックス」という文字を消して、改めてマーカーで「戦争について」と丸っこい字で大きく書いた。ロンドンの老練なテイラーはどんな気持ちであのスーツを仕立てたのだろうか。

「たまにはこんな難しい問題についても考えて欲しいんだよね」

 それまで自己変革というミクロな話をしていたのがいきなり大きな話題になって、戸惑いを隠せない参加者の中に自分から発言しようという者もなく、やむを得ず阿久津がランダムに指名していって戦争について語るよう求めた。幸い私は指名されることなく、おずおずと話をする他のメンバーを同情の目で見ていた。

 雰囲気が変わったのはパイくん―正式名称「パイシーズ」―の発言からだった。普段は受け狙いの発言ばかりして場を白けさせ、滑っても最初からそれが狙いだったと言わんばかりに虚勢を張っている困った青年なのだが、いつものふざけた感じとは違って、彼は大真面目に先の戦争は間違っていない、日本は正しいことをしたのだと熱く語り出した。知らない人が聞けば驚かされるはずの話だが、その内容と言えばインターネットで広く拡散されたもので、私には見慣れたものだった。そうは言っても、現実でこのような話をする人を見るのは初めてだったので、ネットの影響力が強くなってきたのを実感せざるを得なかった。

「ちょっとよろしいですか」

 熱弁をふるうパイくんに反論したのはキャンさん―正式名称「キャンサー」―だった。浅黒く痩せた顔に大きな丸い眼鏡をかけていてギンヤンマのように見えるキャンさんは、パイくんを諭すように、若い人だから知らないのも無理はないが日本がアジアの国々を侵略して多大な迷惑をかけたのは事実であり、その反省のもとに平和憲法を守ってきたのだ、と説明した。キャンさんを初めて見た時に、この人はリベラルっぽい、となんとなく思ったのが当たっていたので我ながら驚く。パイくんはいきり立って、憲法はアメリカに押し付けられたものだ、中国や韓国に謝る必要はない、と反論し、それに対してキャンさんは従軍慰安婦じゅうぐんいあんふや原爆投下を例に挙げてパイくんを諭そうとしたが、それは青年の感情を高ぶらせる効果しか持たなかった。パイくんの主張がますます激烈になってきたのを見かねたカシオペアさんが、女性の立場を代表して言わせてもらいますが、とキャンさんに味方し出したが、私の母親や白石さんや護島さんやあなんがいつカシオペアさんに代表権を委託いたくしたのだろうか、と真面目な彼女に対して失礼なことを考えてしまった。

「いいね。いいね。盛り上がってきたね」

 阿久津は嬉しそうに徳見くんから渡された700mlミリリットルのクリスタルガイザーをぐびぐび飲んでいるが、盛り上がっているのではなく紛糾しているのだから主宰者が鎮めなければならないはずなのに、当の責任者が一番面白がっているのだから収拾がつくはずはなかった。最初は冷静だったキャンさんもパイくんとカシオペアさんに引きずられたのか次第に感情的になっていき、議論はただの怒鳴りあいになりつつあった。腕時計にこっそり目をやって、まだ15分もあるのか、と思ったところで、

「ところでサジッタさんの意見はどうなの?」

 と阿久津が話を振ってきた。不意を突かれて慌てる。

「はい?」

「いや、一人で後ろの方で“俺には関係ねえ”って雰囲気をかもし出してたからさ」

 勘だけは鋭い男だったのを忘れていた。しくじった。

「そうだ、今度はサジッタさんの話を聞きたいなあ。70年前の戦争についてどう考えているのか、聞かせてよ」

「えーと、すみません。そんな難しい話はよく分かりません」

「何もないってことはないでしょ。せっかくお金を払って参加してくれてるんだからさ、あなたのためにも熱心に活動してもらいたいのよ。で、どうなの?」

 これまで発言しなければならなくなると、特にありません、分かりません、誰それと同じです、とはぐらかしてきたのだが、今度ばかりはそれもできないようだった。やっと巡ってきたリベンジのチャンスに阿久津の顔には隠し切れない喜びが見える。私がちゃんと答えなければサーカスから脱走してきた地獄の道化師どうけしが容赦なく襲い掛かってきて、ライさんに続く本日2つ目の惨殺ざんさつ死体の出来上がり、となるのは目に見えていた。この仕事をしていると調査結果が気に入らない依頼人や立ち入ったことを聞かれて怒る人に罵倒ばとうされるのはよくあることなので、阿久津にやっつけられても家に帰って不貞寝ふてねしてしまえばそれで終わりにできるのだが、かと言って「やる気のない奴」「できない奴」と認定されるのは避けたかった。そういう目で一度見られた人が阿久津にほとんど無視されるようになるのは1か月参加してきてなんとなく理解していて、そうなると阿久津と直接話もできなくなって、調査に重大な支障をきたすおそれがあった。それだけでなく、他の参加者からの視線もどこか厳しく私へと向けられていた。複数回参加していながら何も目立った働きをしていない私を訝る気持ちがあっても仕方がない。どちらにしても、これ以上空気のような存在でいられないことだけは分かった。すぐに私は気持ちを固めた。

「正直に言っていいですか?」

「もちろんだとも。このワークショップはそういう集まりだよ」

 そうは言いながらも、阿久津は予定と違う、と言いたげな表情をしている。奇遇きぐうなことに私もそう思っていた。

「さっき、よく分からない、と言いましたが、正確に言わせてもらうと、戦争とかそういう話に興味はないんです」

 私以外の全員が突然目の前に複雑極まりない数式が現れたかのような表情を浮かべた。もっとはっきり言えば、「わけがわからない」という表情である。

「僕が生まれる前、それどころか両親が生まれる前のことなので、僕にとって先の戦争も関ヶ原せきがはらの戦いも違いはありません。そんなことに時間を割くよりは今現在の問題に取り組む方がよっぽど有意義だと思うんです。だから70年前の話は興味のある人だけでやって欲しいですね。少なくとも僕はまったく興味を持てないので」

 話し終わると、さっきまで言い合っていたパイくんとキャンさんが一緒になって私に反論してきた。顔を赤くしたパイくんにはあんたみたいなのはサヨクよりもひどいと怒鳴られ、若干冷静さを取り戻したキャンさんには今を生きる我々は責任から逃がれることができないんですよとやんわりと注意されたが、後は相槌あいづちを打つだけで適当にやりすごすことにした。わざと偽悪的で軽薄な物言いをしてみたが、事実に基づくことのない感情的な話に終始するのであれば何にも興味を持たない方がいい、というのは私の中に考えとして確かにあった。ちなみにカシオペアさんは黙って悲しそうに私を見ているだけだった。

「うーん。サジッタさんの考え方はさすがに問題があると思うな。嫌だからやらないって子供じゃないんだからさ。もっと真面目に考えた方がいいよ」

 阿久津にまで説教された。叱ったおかげで私に対するフラストレーションは多少軽減されたようで、これは思いがけないボーナスだった。処刑の日が遠ざかったようで喜ばしい。他の参加者は目の前を横切った黒猫を見るかのように私のことを窺っていたが、それには若干私を低く見る気持ちも含まれているようで、調査をする人間としてはむしろ有難いことだった。やりかたは人それぞれなのだろうが、私としては有能だと思われるよりはめてかかってくれた方がやりやすい。恐れられるよりあなどられよ、といったところだ。

 今夜はそこでお開きになった。叱られて終わりというのは格好がつかないが、それでも片付けをしなければならない。テーブルを前に戻そうとして手をかけると、反対側のはしをキャンさんが持っていた。「さっきはどうも」と先に頭を下げられた。頭を下げ返してからタイミングを合わせて二人でテーブルを運んでいく。パーテーションを片付けようとすると、

「この後空いてますか?」

 と後ろからささやかれた。振り向くと、

「一緒に飲みませんか?」

 とギンヤンマに似た人が言ってきたので、距離を詰めてから小声で答える。

「いいんですか? 禁止されているんじゃないですか?」

「それは分かってますけど、前からみんなでよく飲んでますよ」

 思わず言葉に詰まる。しかし、あんな決まりを四角四面に守るよりはずっと健全なことだ。少し嬉しくなる。

「ただ、中野からは離れた方がいいです。前に駅の近くのバーで集まろうとしたら、プロさんに見つかりそうになって」

「まさか見回っているんですか?」

 徳見くんならやりそうだ。阿久津のためにそこまですることはないのに。

「サジッタさんがいい店を知っているならそっちに行きたいんですけど」

 ずっと足を止めたままだと怪しまれるので、歩きながら考えてみる。やっぱり新宿に行った方がいいかな、と考えたところでひらめいた。

「あの、高円寺こうえんじはどうですか?」


 「居食屋いしょくや か~でぃがんず」に私たちがやってきたのはそれから1時間後だった。特に気に入ったわけではないが、なんとなく思いついてしまったのだから仕方がない。メンバーは私とキャンさん、パイくん、ポラさんこと「ポラリス」、スーちゃんこと「スピカ」の5人だった。

「店員さんが誰もカーディガンを着ていないのはどうして?」

 とポラさんに聞かれたがそれは私の方が知りたい。仕切りの向こうにある大きな丸テーブルを囲む形で私たちは座った。

「それでは今日はサジッタさんの歓迎会ということでみなさんにお集まりいただきました」

 キャンさんが場を仕切るようだ。3人がおざなりに手を叩く。

「僕が入って1か月経っちゃいましたけどね」

「だから誘うことにしたんです。新しい人が来ても2、3回で出てこなくなっちゃうこともよくあるんで。その代わり1か月出続けた人はまず辞めないから、もう大丈夫じゃないかって」

「そういうことですか。確かに今ここにいるみなさんは毎回お見掛けしてますね」

 晴れて常連の仲間入りということらしい。

「でも、カシオペアさんも毎回いましたけど」

「カッシーは真面目だから誘っても断られちゃうのよ」

 ポラさんが笑う。髭面ひげづらなのに言葉遣いが柔らかい。

「出たくない人を無理に誘ってもいけないから。逆にサジッタさんはよく来てくれましたね」

「今日は飲みたい気分だったんですよ。最初に誘われた時は“まだ戦争の話を続けるの?”と思っちゃいました。どうも馬鹿げたことを言ってしまったようで失礼しました」

 いやいや、とキャンさんが笑う。

「とんでもない。僕にはない考えだったんで感心させられました」

 本心からの言葉のように聞こえた。もう一人の当事者であるパイくんはむくれたままで、まだ1時間前の議論をっているようだった。ドリンクが運ばれてきてキャンさんの音頭で乾杯をする。

「それじゃ自己紹介していきましょうか。僕らが名乗った後でサジッタさんのお話も聞かせてください。じゃあ、まずは僕から。ACT2アクトツーでは“キャンサー”を名乗っている横谷よこたにです。いつもは銀行で働いてます」

「本名を名乗るんですか?」

 驚いて思わずたずねてしまった。

「もうこうして決まりをやぶっちゃったわけだからね。ひとつ破るのもふたつ破るのも同じかなって」

 キャンさんが危険思想を語っている横でパイくんが、怖いなら言わきゃいいじゃん、とぼそぼそつぶやいている。

「じゃあ次。僕の横でご機嫌斜めにしているのが“パイシーズ”こと土屋哲平つちやてっぺいくん。大学に行っているんだったよね?」

 無視してウーロンハイを飲むパイくん。その横でグレーのパーカーを着た丸い女の子が立ち上がった。

「“スピカ”の坂田さかたです。コンビニのバイトをしながら阿久津さんのお話を聞きに行かせてもらっています。どうかよろしくお願いします」

 深々と頭を下げた。あらためて顔を見てみると、頬袋ほおぶくろにヒマワリの種を詰めすぎたハムスターのようでなかなか愛らしく見えた。

「僕らはみんな、カヨちんって呼んでいる。下の名前が香世かよだからね」

 キャンさんが一言付け加えた後で、私の左横の青いネルシャツを着た髭面の男が挨拶する。

「最後になりますが、“ポラリス”の赤根あかねです。映像ディレクターとして阿久津さんの番組に参加していたのが縁でACT2に参加することになりました」

 他の全員に自己紹介をされたので私もしないわけにはいかなかった。いつものことだが、私が名乗るのを聞いた人はみんな不審そうな表情になる。親戚しんせき以外でこの苗字を名乗っている人を私も知らないくらい珍しい名前だから仕方のないことではあるが。

「失礼ですが、どんな字を書くんですか?」

「勝ちに反する、と書いてソリガチです」

 負けてんじゃん、とせせら笑うパイくんことテッペイをキャンさんことヨコタニが咎めるように睨んだが、これもやはり自己紹介のたびにからかわれることなのでもはや腹も立たない。ただ、テッペイの自動車が故障して路上で立ち往生していても、私はJAFジャフに電話することなくそのまま立ち去るだろう、とは思った。

「でも、変わっている人は名前から変わってるんだねえ、面白い」

「僕ってそんなに変わってますか?」

「だって、そんな格好をしているんだもの。しかも顔も濃いからマフィアにしか見えない」

 ポラさんこと赤根は悪気はないようだが、私も好きで黒一色にまとめているわけではないのは分かって欲しかった。

「ポラリスっていい名前を貰いましたね」

「大したことないよ。僕がこんな外見だからさ、こぐま座の2等星の名前を付けられただけだよ。阿久津さんもシャレがきついなあ」

 額面通りには受け取れない言葉だった。「ポラリス」といえば普通は北極星ほっきょくせいを指すのは、前に里帰りしたときに韓流かんりゅうドラマにはまっていた私の母親でも分かる。仕事仲間だからなのか、阿久津が赤根を優遇ゆうぐうしているのは明白である。加えて何故それを隠そうとするのだろうか。気に留めておく必要がありそうだ。

「僕が何故この名前なのか分かる?」

 ヨコタニが自分で顔を指さして尋いてきた。

蟹座かにざだからじゃないんですか?」

「だと思うよね。でも本当は僕が胃癌いがんをやって、あらかた切除せつじょしちゃったからなんだよ」

 cancerキャンサーには確かに蟹座だけでなく癌の意味もあるが、あまりの無神経さに言葉が出なくなった私をヨコタニが気遣う。大病をわずらった人に気遣われるのも複雑な気分だ。

「でも僕はこの名前を気に入っている、というか、キャンさんって呼ばれるのが好きなんだよ。沖縄おきなわの人の名前みたいで」

 リベラルな人は大抵沖縄に強い思い入れを持っていて、ヨコタニもその例に漏れないようだった。マルゲリータピザを食べながら、まだ不貞腐ふてくされているテッペイはともかく、スーちゃんことカヨちんとまだ話していないことに気付いた。おじさんばかりの宴席えんせきで若い女の子が一人でいるのはきついだろう。

「カヨちんはどうしてACT2に参加しようと思ったのかな?」

 カヨちん、と自分で呼んでおいて勝手に照れてしまう。自爆したようなものだ。だからといって、他のみんながそう呼んでいるのに、私だけスーちゃんまたは坂田さんと呼ぶのも違う気がする。そんな私の逡巡しゅんじゅんを知らないカヨちんは素直に答えてくれる。

「私、きれいになりたくて、ダイエットをしたりいろいろ試してみたんですけど、どれも効果が上がらなかったんです。そうしたら阿久津さんが“美しすぎる評論家”ってテレビに出ていて凄いなあって思ったんです。すぐに本を買って読んでみたら、女の人向けのビューティー・レッスンというのが書いてあってチャレンジしたんですけど、一人でやっていると上手く行ってるのかよく分からなくなっちゃうんです。それで本人がやっているワークショップに行ってお話を聞いてみたらなんとかなるんじゃないかと思ったんですけど」

「当てがはずれたってわけ」

 赤根が右手で口元を覆ってくすくす笑う。いちいち仕草が女性的なのは何故なのか。カヨちんはそれには答えずに寂しそうに笑っている。居残りの課題が終わらなくて友達に先に帰られてしまった小学生のようだった。

「僕も阿久津さんがあんな風になっていたんでびっくりしました」

「あんな風って」

 ヨコタニにたしなめられたが、カヨちんがかすかにうなずいているのを見ると、彼女も同じ考えらしい。

「いや、“美しすぎる評論家”としてテレビに毎日出ていた頃はもうちょっと普通の大人しめの格好だったと思うんですけど、今のはさすがに行きすぎじゃないのかって」

 先週のワークショップでは特に凄くて、ヤマトタケルのようなヘアスタイル―みずら髪というらしい―のウィッグをかぶって、陰陽師おんみょうじ装束しょうぞくを身にまとってきたのだ。「今朝けさ起きたら平安へいあんの気分だったから」と阿久津は言っていたが、ウィッグも装束も借り物ではなく自前で持っていたと知った時点で、その日の私は考えるのをやめることにしたので、以降の記憶は定かではない。

「ああいうことは一度始めるとキリがないのよ」

 赤根はナチョスを音を立ててかじりながら語り出した。

「どこまでも際限さいげんなく綺麗きれいになろうとするから、いくらやっても満足できない。ますますエスカレートする一方なんでしょうね、これからも」

 ある程度事情を知っているようなので、立ち入った質問をしてみることにする。

「もしかして整形してたりとか?」

「してるに決まってるでしょ。そもそも本を出した時点でもう骨格をいじってるんだから。阿久津さんは本を売ろうと必死だったから、美しく見えるためなら何でもしてた。それが高じて、今じゃ頬を削って鼻も高くして目も大きくなるように切開して」

「じゃあ、唇にはヒアルロン酸を注射して、肌も漂白ひょうはくしてたりするんだ」

「ビンゴ。サジッタさん詳しいじゃない」

 調査員をやっているとつまらない知識が増えるものだ。

「マイコーみたいでクールっしょ、阿久津さん」

 テッペイが無理にはしゃいで会話に割り込もうとしてきたが、みんなに無視される。

「でも、本には“普通に暮らしながら1週間で美しくなれる”って書かれてあって、そんな大変なことをしているようには見えなかったんですけど」

 ふえええ、とカヨちんが汽笛きてきのような声を出して驚く。

「そんなの信じちゃダメ。楽して綺麗になれるほど世の中甘くないって」

「そんなあ」

 赤根のふたもない指摘にカヨちんは落ち込んでしまったが、彼女はむしろ詐欺の被害者なのではないか。フリーターならワークショップの会費を支払うのも簡単ではなかったはずだ。そして、彼女が読んだ本はベストセラーになってしまっている。

「ファッションも凄いじゃない。それまで服に興味のない人生だったからセンスなんてあるわけがなくて、高い服=いい服と思い込んで毎週何十着も買い物をしている。マスコミも面白がってどんどん奇抜きばつなファッションをさせようとして、それに阿久津さんもまんまと乗せられちゃってる」

「この前もバラエティ番組で腕時計を買わされてましたね」

 ヨコタニの言った番組は私もたまたま見ていた。人気男性アイドルたちと一緒に高級時計店にやってきた阿久津がタグ・ホイヤーの特製品を「ドッキリ」と称して衝動買いさせられていた。子供向けのヒーロー番組で主人公が装着しているハイテクのブレスレットのようにゴテゴテした腕時計を半ば強要される形で買わされた阿久津が持ち前の虚栄心きょえいしんで平気だと懸命けんめいつくろおうとしているのが見るにえなくて、CSシーエスで『キー・ラーゴ』を途中から観ることにしたから、その後どうなったのかは知らない。あの時計なら変身できても不思議ではないから、阿久津も仮面をかぶったヒーローになっていたのかもしれない。

「でも、赤根さん。そこまで分かっているなら、阿久津さんに忠告したりしないんですか?」

「嫌だよ。あの人が僕の言うことなんか聞くわけないじゃん。うらまれるだけで意味ないよ」

 その点は私も同感だったので何も言えない。

「ただ、阿久津さんとは仕事でもプライヴェートでもいい思いをさせてもらったからさ、何があっても一緒にいようとは思うよ」

 これもひとつの友情のかたちなのだろうか。ビールを飲み切ったので、たまにはラムコークを飲むことにする。

「そうですね。楽をしようとした私が馬鹿でした」

 カヨちんが反省しながらシーザースサラダを食べていた。見ていて気持ちよくなる食べっぷりで、その横でちまちま食べているテッペイに、あのを見習え、と言いたくなるほどだ。本に書かれていた内容が嘘だと知ったのに、何故か妙にさっぱりとした顔をしている。

「でも、それだったらもうワークショップに通う意味がなかったりしない?」

「最初はガッカリしましたけど、阿久津さんやみなさんのお話を聞いているととてもためになるので、これはこれでいいかなって思ってます。受講料じゅこうりょうも無駄にしたくないし」

 今日のライさんの虐殺や戦争をめぐる感情のぶつけあいを人生のかてにできるのであれば、カヨちんの前途は洋々たるものだろう。

「それより今日のメインはサジッタさん、ソリガチさんなんだから、もっとお話をお聞かせ願いたいのですが」

 ヨコタニに頼まれたおかげでそれから店を出るまで、私は自分語りをしなければならなくなった。阿久津のファンになった切っ掛け、ACT2に参加するまでのいきさつ、仕事の上での失敗談、それらを虚実きょじつを織り交ぜつつ語って適当に受けを取っておいた。調査員として経験だけは無駄に重ねているから話のネタだけには事欠かない。


「連絡先を交換したいんですけど」

 帰り道でヨコタニがスマホを取り出した。どうもこの人に気に入られてしまったらしい。

 むしろ反感を買っているものと思っていた私としては戸惑うばかりなのだが、断るのも難しいので、ワークショップでの記録用にジャケットの胸のポケットにしまっておいたメモ帳とボールペンを取り出して、スマホの番号をさっと記して手渡すとヨコタニに石器時代からやってきた人を見るかのような目をされた。この人、ワイヤレス通信も知らないのかと。

「イベントでスマホを預けた時に中を見られるかもしれないって思うんですよ。考えすぎなんでしょうけど、気を付けるに越したことはないんじゃないかと」

 ヨコタニに笑われるものと思っていたが、意外にも感心された。

「それは考えなかった。確かに気を付けた方がいいかもしれない」

「何かあったらその番号まで連絡してくれればいいですから」

「分かりました。でも、そんな風に考えるなんてソリガチさんってスパイみたいですね」

 ぎくっとしたがもちろん顔には出さない。ここでの私は駄菓子の卸売業者おろしうりぎょうしゃということになっている。私たち2人の横では、ウーロンハイ2杯で酔いが回ってしまったテッペイを赤根が支えるようにして歩き、カヨちんはその後ろで明るい顔をしている。突然既視感きしかんに襲われたので何故だろうと思ったが、2か月近く前にあなんが踊っていた場所にちょうどさしかかっていた。見た目はトンボの親玉のようでも中身はただただ善良な銀行員の身の上話を駅まで聞かされるのもつらいので、味のなくなったチューインガムを嚙み続けるように未練がましくあなんの残像を頭の中でリプレイし続けることにした。


 日曜日。阿久津のインターネットの生放送があるので、夕方から自由が丘のスタジオまで出かける。都立大学とりつだいがく駅が家の最寄もよりだった頃はよく買い物に行っていたが、最近では訪れることもあまりない場所だ。副都心線ふくとしんせんのおかげで埼玉さいたま方面からのアクセスが容易になったのに、便利になりすぎてはいないか、と理不尽なことを考えてしまう。北口を出てファーストフード店の向かいにある3階建てのビルまで行く。入口の横の大きなガラス窓の中では、大きなヘッドホンをつけた女性DJディージェイが目の前にぶら下がったマイクに向かって元気いっぱいに話をしていた。スタジオだけでなく目黒めぐろ世田谷せたがやをカバーしている地域FMエフエムの放送局もビルに入っているらしい。初老の警備員は私の顔を覚えていたようであっさりと通してくれた。2階のスタジオには誰もいなかったが、既にセットの準備は整っていた。セットといっても、阿久津が話す後ろに雑誌や新聞のスクラップを一面に貼った衝立を背景として置くだけなのだが、私には映画によく出てくる殺人鬼の乱雑な部屋のように見えてしまい、情報通、事情通として自己アピールしたがっている阿久津の狙いは裏目に出ているとしか思えなかった。PCパソコンで被害者のデータを保存して整理された部屋で暮らす几帳面きちょうめんなシリアルキラーが出る映画なら観てみたい気もする。

「サジッタさん、こちらです」

 徳見くんが廊下から顔を出している。隣の控室まで行くと、10人足らずのカラフルな覆面を被った男女が並んでいて、銀行強盗でも始まるのかとぎょっとしたが、私も同じように被らなければならないことを思い出した。全く人騒がせなことだ。

「まもなく放送が始まるので、今日もよろしくお願いします」

 それだけ言うと徳見くんは足早あしばやに控室を出て行った。

「なんだかイライラしてますね」

「阿久津さんが駅前のカフェから戻ってこないんだよ」

 銀と青の覆面をした男が答えてくれたが、髭がはみ出しているので赤根だと分かる。彼はこの生放送のスタッフも兼ねていた。

「お昼に北海道ほっかいどうのテレビに出てそのままとんぼ返りだから、疲れちゃったのかもね。はいこれ」

 緑色のマスクを渡された。両目の周りが羽根の形に赤く縁取ふちどられていて、いかにも悪役のように見える。誰からともなく部屋を出てスタジオに向かい出したので、やむなく歩きながら被ろうとすると、背中を軽く叩かれた。振り返るとピンクの覆面の小柄な男が私を見て笑っている。一瞬誰だか分からなかったが、黒目がちの目には見覚えがあった。テッペイだ。

「サジッタさん、凄いじゃないですか」

 水曜に怒鳴ったり悪態をついていた青年が今日は私をたたえている。事態の急変についていけないでいると、

「凄いじゃないですか、新聞デビューですよ」

 もう一度言われたが、やはりわけがわからない。

「新聞って?」

「今日の朝刊ですよ。阿久津さんの記事、呼んでいないんですか?」

「うちは新聞とってないから」

 たまりかねたように、テッペイが銀のスタジャンのポケットを探って新聞の切り抜きを取り出して広げてみせた。私に見せるために用意していたのだろうか。のぞんでみると、見開みひらきの特集記事で「戦争を知らない大人たち」という見出しがついていて、何人かの識者が戦争についてコメントしているようだったが、右下にまだそれほどファッションが行き過ぎていなかった頃の阿久津の顔写真がコメントと一緒に載っている。カヨちんみたいにだまされる人もまた出てくる、と思ったが、問題は阿久津のコメントの内容で、それは水曜に私が言ったことをそのまま薄めて引き延ばしたものだった。先の戦争も関ヶ原の戦いも同じ、という言い回しもそのまま使っていて、阿久津個人のオリジナルの考えや表現は全く見られなかった。

「俺なんか1回も使われたこともないのに、参加したばっかですぐに採用されるなんて、サジッタさん、マジ凄いっすよ」

「阿久津さんはいつもこんな風に僕らが言った話をそのまま使ってるの?」

「そうですよ。ACT2で社会問題をテーマに話をする時はネタを集めようとしてるんです。“また新聞や雑誌で使われるぞ”と思って、俺、気合い入れてやってるんですけどね」

 水曜の彼の話にやたら熱が入っていたのはそういう理由もあったのか。テッペイは本気で私をうらやましがっているようで、阿久津が他人の話を丸ごと我が物にしていることへのいきどおりは彼の中にはないように見えた。

「もしもパイくんの話が使われたとしても、みんなはそれを阿久津さんの話としか思わないんじゃないかな」

「別にいいですよ。俺だけは俺の話だって分かってますから」

 人並み以上の自己顕示欲じこけんじよくがありながら自分には他人の注目を集める能力がないというあきらめに支配された彼の顔を覆面がなければ確かめられただろうか。

「ネットではもう結構評判になってますよ。それ、あげます」

 テッペイも部屋を出ていき、私一人が残された。手の中の記事に改めて目を通すと、阿久津のコメントは軽薄けいはくでとても見られたものではなかった。ネットでもきっと叩かれているのだろう。しかし、その軽薄さは疑いようもなく私自身のものなのだ。鏡を突きつけられて己のみにくさを認めろとせまられているかのような気分だった。それでも今はとりあえず生放送を見学するためにスタジオに行かなくてはならない。覆面を被って、素顔を隠してから部屋を後にした。

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