再構成する“家族”

『小学生だって真剣なんです』と身の引き締まるようなキャッチコピーのついた本作。親子のキャッチボールからの始まりは意外とのどか。しかし、父親の提案から早々と少年の日常が変化していきます。

少年に訪れたのは両親の再婚という一大イベント。しかも相手方は子連れです。突然の母親と妹。我が国においても再婚率は増加傾向にあり、こういった家族は増えていく一方です。そこで生まれる問題、継子と継親間はもちろん実親との間にも亀裂が入る可能性があり、再婚の試みは大きなリスクを孕んでいます。そして、大昔からありながらもこの手の苦しみに正解はありません。

そんなわけで、少年の心が翻弄されていくさまが本作では細やかに描写されており大きな見どころです。自分の心情がどう揺れ動くか人間にはままわからないものであり、それでも自分に理解を深め、他人を理解していかないといけないのです。彼は、主人公の祥太君は悩み間違えながらも、それを誠実に取り組める人間です。自分の居場所が無くなってしまったような焦燥感の中、父親や新たな母親、妹、そして去ってしまった母親、様々な関係性に少年はどうすればいいんでしょう。あなたも考えながら読んでみませんか?

難しいテーマに意欲的に取り組んだ一作です。本当にオススメです!

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