剣と魔法があって、たくさんの秘密があって、素敵な女の子達もいたりして

……魅力が多過ぎる!
というわけで。こちらの大長編冒険活劇、イチオシです。

始まり方は今や古式ゆかしいと言ってもいい、“神様転生”。「私神です貴方死にました異世界転生させますヤッター!」で、生まれ変わったそこそこ不死身の体。しかし、女神にアラン・スミスと名付けられた主人公には記憶がない。与えられた使命も「この世界を見て歩いて欲しい」なんてぼんやりしてる。そのまま剣と魔法の世界に放り込まれて……アランは何を為すのか!? まあまあ普通の異世界転生モノのスタートでしょう。

そこがいいじゃないですか! 記憶が無いのも使命の意味がわからないのも、これからの波瀾の旅路を予想させてくれます。キャッチコピーやあらすじから皆さんのお察しの通り、この作品は典型的な異世界転生の様式を一捻りしたタイプですが、ちゃんと異世界転生の良さを活かすことを忘れていません。死んで、生まれ変わって、見知らぬ世界、そこで何ができるのか。まるで、小さい頃の真冬の朝、戸口を出て絨毯のような白雪を眺め、そこに初めての足跡をつけることを想像した時と同じ。本作の序盤の数話はあの清新な喜びに満ち溢れています。本作のまず最初に出会える美点です。そして、その先。大冒険の始まりに打ち震えた先にも、本作の場合は無数の楽しみが待っていました。それは熱い戦いだったり、良く作り込まれた設定だったり、壮大な世界の秘密だったり。テンプレートを踏襲しながらも作者様独自の楽しみを込めていく。簡潔ながらも整理されて理解し易い文章も素晴らしい。それから、ヒロイン達も大きな魅力です。

ヒロインは三人。ハーレムですね。全員が本編最初期に登場し、以後旅の仲間となります。出会った順に、剣士のエル、魔術師のソフィア、僧侶のクラウ。斥候っぽいアランと組むと、それっぽい構成のパーティ。各ヒロインの魅力について語りたい……特に私が一番好きなソフィア氏(うじ)の魅力について語りたいところですが、止めておきましょう。みなさんにはバイアス無く彼女達を見て欲しいので。ただ言えることは、三人ともとっても素晴らしい女の子達だということです。全員が人間味があって愛おしく、巧妙にこの世界の秘密に組み込まれている。ちょっと抜けてるけど何だかんだ伊達男のアランと良い感じになっていく(その経緯や心理描写なんかも素晴らしい)わけなんですが、彼女達の命運も物語本筋と付かず離れずで目が離せない。異世界の行く末と同じぐらい、彼女達の恋の行方も気になって仕方ない……。そんなミクロな人間のドラマとマクロな世界のドラマのスペクタクルが同時に楽しめちゃうのも、本作が大長編であるが故に成し得ているのでしょう。

以上、ネタバレはしたくないので細かい話はできませんでしたが、本作は大変面白いです。マストリード。貴方もどうか読んで欲しい。それでどっぷりハマって、まだまだ見果てぬ世界の秘密や、アランやヒロイン達の魅力について話し合いましょう!