「カレー味のうんこ」と「うんこ味のカレー」

@boko

「カレー味のうんこ」と「うんこ味のカレー」

生きている中で一度は聞いたことのある話が有るだろう。

それは男も女も関係なく、全ての人間がこの会話を行った事があるだろう。

だが、私はその話を思い出すと一つの疑問が湧き上がってくるのだ。

『「うんこ味のカレー」と「カレー味のうんこ」どちらが食べたい?』

答えはもちろんどちらも食べたくない。

だが質問に対して答えるのを拒否すると、「どちらかを必ず選ばないといけない。」などというふざけた言葉を吐き捨てることによって選択を迫られるのである。

皆はどちらの選択をしたのだろうか?正直言って私は覚えていない。

この質問は何度も聞かれた気がするが、その度に答えが変わっていた記憶が残っている。

カレー味のうんこだったりうんこ味のカレーだったり、理由を聞かれてもどちらも嫌だったから適当に言っていた気がする。

カレー味のうんこは「見た目はうんこでもカレー味なんだろう?じゃあうんこだ。」と答えていたような‥。

うんこ味のカレーは「見た目が大事だろ。うんこ旨いかもしれないし‥。」と答えていた記憶がある。

だが、この時私は大事な事を無視した状態で質問に答えていた。

「香りはどうなのだろうか?」

香り‥。香りである。私はこの質問に対して香りという概念を無視して答えていたのである。

そう、いうならば食事のカスがうんこである。皆知っているであろうが臭い。擬音であらわすと「モワ~ン」刺激臭というよりは異臭である。

「うんちなんて出さないよ~。プンプン!!出るのはフレグランスな香りのする何かよ~!!」とか言っている馬鹿は病院行け。


「うんこ味のカレー」はこの異臭がするのであろうか?

「カレー味のうんこ」はスパイシーな香りなのであろうか?

そう考えてみると私は「カレー味のうんこ」が良いのではないかと思えてきた。

だが、うんこである。

食べると体に悪そうである。

そもそも出したうんこがカレー味になっている人間の出したうんこなのか、うんこに模したカレー味の料理なのか、それによっても答えが変わってくる事に気がついた。

「うんこ味のカレー」はきっと料理人が頑張って再現するのであろう。だが「カレー味のうんこ」お前はどうなる?

出たものがカレー味なのか?模したものがカレー味なのか?食べて大丈夫なのか?などと様々な考えが浮かんでくるが、考えれば考えるほどこの質問は難しい。

もし、人間が作った「カレー味のうんこに模した物(香りはカレー)」だったらこちらを選ぶであろう。(人によっては違うかもしれないが、私の意見だからな。)

だが、尻から出た「カレー味のうんこ(香りはもちろんうんこ、体への安全は保証されていない。)」だったらうんこ味のカレーを選ぶ。

やっぱり体の事を考えて選択しないと。

そう思うだろう?


「で、答えは決まった?」に居る女は両耳の上にあるツインテールの髪を揺らしながら私に問いかけた。

「カレー味のうんことうんこ味のカレーどっちが食べたいって質問よ。」可愛らしい顔をした彼女はとても楽しそうにそんな事を聞いてくるが私は笑えない。

「実際に用意したのか‥。」そう、『目の前にカレー味のうんこ』と『うんこ味のカレー』が存在するのである。

「それはもちろん困った顔が見たいからに決まっているじゃない!!」女はとても楽しそうに笑っているがこちらは笑えない。

現在私は小学生が使っているような木と鉄の椅子の上で座っており、椅子の腰を掛ける木の部分と、座る木の部分を繋げる為に両端から出ている鉄パイプに両腕を紐で固く結ばれて動けなくなっている。

「いや、どっちも食べたくないに決まっているだろう?」

「それはそうでしょうね。でもどちらかを食べないとここから出られないと言ったら?」私は心底嫌そうな顔をしているのだろうが、その顔がたまらないと思っている彼女は私の意見など無視をして話をする。

「『カレー味のうんこ』か『うんこ味のカレー』どちらかを選択しないと貴方と椅子を結んでいる固い紐を解くことは出来ないわ。」

「なんで?」

「それは楽しいからよ。」当然だろうと言いたげにキョトンとした顔でこちらを見る。

「こっちは何も楽しく無いんだけどなぁ‥。」話を合わせる為に相づちを打つ。

「でも、貴方がお下劣で最低な質問をしたのが原因よ?あの質問をされて以来何度も考えてしまうようになったのよ。」

「何を?」

「覚えていないのね。あの質問のせいで私は寝不足になった。だから嫌がる顔が見たいのと、復讐の為にこのように『カレー味のうんち』と『うんち味のカレー』を用意したのよ。」あぁ、この間彼女に質問した『カレー味のうんことうんこ味のカレーどちらが食べたい?』の事か。質問をすると彼女は不機嫌な顔になり『なにそのくだらない質問?』と返してきたのだ。段々思い出してきた。

「そもそもどうやって用意したんだ。」そもそもこのカレー味のうんことうんこ味のカレーをどうやって手に入れたんだ。私はそれがわからなかった。

「それは、専門家の力よ。」

「専門家の力。」専門家の力なら仕方がない。専門家ならカレー味のうんこもうんこ味のカレーも作ることが出来るだろう。

「正直聞きたくないけれど、うんこの方は人間から作られているのか?」

「どっちのよ?」

「カレー味のうんこだ。」

「あぁ、もちろんカレー味になるように専門家がどうにかしてくれたわ。」

「専門家‥。」専門家はなんでも出来るんだな。排泄物をカレー味に出来るなんて、どんな技術を使ったのだろうか‥。というか尻からスパイシーな物を出した人間の尻は無事だろうか?

「一体誰がこのうんこをしたんだ?」私が聞くと彼女は顔を真赤にしながら‥、とはならず表情を変えぬまま答えた。

「専門家よ。」

「専門家‥。」専門家凄いな‥。自身の体を実験台に使用しているのか‥。

「そんな時間つぶしみたいな質問をしてもどちらかを食べない限り貴方はそこから一歩も動けないのよ。」彼女にとっては意味のない質問を何度も行ったせいか、棘のある口調で彼女は私に言葉をぶつける。

「じゃあカレー味のうんこだ。」即答した。

「なぜ?今までくだらない質問ばっかりしてきて時間を稼いできたのに、答えは初めから決まっていたとでも言いたいの?」彼女の質問に私は答えた。

「いや、決まってはいなかった。ただ‥。」

「ただ?」

「専門家の力を知りたくなった。」自らの身体でカレー味のうんこを出す専門家。そんな事を言われてしまったらどちらを選ぶのかは決まっているだろう。

「まぁ、なんて格好いい表情。ただ、こんな時にそんな真面目な顔にならないで。」私の発言に対して彼女はなんともいえない表情をした。



結果だけ言おう。病院に俺は運ばれ、彼女と専門家は逮捕された。

確かに味はカレーだった。だが、臭い、モワッとほのかにある熱。固形物が少し混じっているペースト。全てが、排泄物のそれだった。

当たり前だ。うんこなのだから。

ちなみにうんこ味のカレーも同じ専門家が作っていた。私は食べていないが、逮捕前に専門家はネットにうんこ味のカレーのレシピを投稿。

これが逮捕されたニュースとともに人々の目に入る。

レシピ通りに作り食べる動画を動画サイトに投稿するもの。

『人の食事、お腹の環境によってうんこの味は違う。』とレシピを非難する者。

手軽に排泄物の味が楽しめると喜ぶ者。

そんなうんこブームは数日間続きやがて忘れ去られた。


あれから数年経った。皆あんな事件の事を忘れてしまったのだろうが、関係者である私は覚えている。

恋人でも無い、知り合い程度の女に下らない質問はすべきではないと私は思った。

あの女は大学時代にいたサークルの仲間だ。少し仲が良かった程度の女に私は久しぶりに会い、飲み物の中に睡眠薬を入れられうんこを食わされた。

「恋仲だった」というのが彼女の供述らしいが告白していないし告白されてもいない。ただサークル内で仲が良かっただけでそれ以上の事は無かったのである。

なぜ数年経った今思い出しているのかというと彼女の刑期が今日で終わりらしい。

それでこんな事を思い出した。

私は違う女と結婚して子供も生まれたが、家族にはあの事件については話していないし話せない。

一般的な幸せというやつを手に入れているんだ。これを壊すわけにいかない。

もしあの女が私の下に現れ私の家族を脅かしたら、幸せを守るために私は行動をする。

タバコを一本取り出し口に含むと火を着け煙を肺に取り入れる。

「大人になったらあんな質問誰もしねぇよな‥。」そんな事を考えながら彼は煙を口から吐き出した。

「どちらも食べたくないし二度と思い出したくもない。」そんな事も考え再びタバコを口に咥えるとどこからか子供達の会話が聞こえた。

「なぁ、カレー味のうんことうんこ味のカレーどっちが食べたい?」

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