第4話 2



彼が連れてきてくれたとっておきの場所は根津美術館だった。

美術館は何ていうか、歩き回るのがしんどいし、はっきりいってしまうと、何より私自身、日本画とか興味がない。私はどちらかというとここよりももっとお洒落な場所でお茶したり、ショッピングする方が好きだ。後は、携帯をいじったり。

でも、彼がここがとっておきの場所なら、私はここで楽しむ必要があるのだろう。


「おーい、行くよ?」

彼の手には二枚のチケットが、


「え、あ、ごめん、チケット、いくらだった?」

私はポシェットから慌てて財布を取り出して、財布を開ける。


「あ、いいよ、俺が払いたくて払ったんだし」

手をひらひらと振りながら、笑顔でそう言ってくれる。


「でも、」

と困った顔を作る私。


「でも、じゃないよ。いいよ。」

と彼が言ってくれたので、ありがとう、お言葉に甘えるねと返しといた。


実際に中を見て見ると以外にたくさんの作品があり、どれも眼を見張るものだった。

だが、私は途中で見るのに飽きてしまい、彼に見つからないようにインスタグラムやツイッターを覗いていた。


暫く、携帯を見ながら歩いていたが、出口と見えたので、携帯をしまって彼の側に寄って行った。


互いに終わった後はよかったねと言い合ったが、私は心の何処かで彼と私は別の世界の人同士だなと痛感していた。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る