第12話 こうしてパパは私の夫になった!

伊豆下田でお互いの気持ちを確かめ合い結ばれてから、今日でほぼ2週間。間に生理があって、ようやく痛さがなくなってきた。よかった痛くなくなってとお風呂から上がって身支度をしているとパパがドアをノックする。


「今日はここに泊まってもいい?」


「うれしい、ソファーに座って下さい」


隣に座ったパパが私を優しく抱き寄せる。


「痛くなくなってきたのでもう大丈夫です」


抱きつくと、パパはいつもよりもゆっくりと私を可愛がってくれた、最後まで。幸せ! ずっとこのままでいたい!


いつの間にか寝入ってしまった。トイレに立って戻ってくると、パパがこっちを見ているのに気づいたので「うしろから抱いて寝て」と身体を滑り込ませた。パパが耳元で話始める。


「兄貴が死んだ時、大人になった久恵ちゃんを見て、とてもいとおしく可愛いと思った。自分の手元においておきたいと思ったから、東京へ誘った。それからというもの、どれほど、自分のものにしてしまいたいと思ったことか。楽しい生活が続くほど、その思いが募った」


「私も、パパのこと、嫌いでなかったから、東京で面倒を見てくれると言ってくれたとき、とても嬉しかった。本当にあの時は一人ぼっちでとても寂しかった。これから、どう生きて行こうかと。それから学校まで行かせてくれるというので、どうお礼をしていいのかと思った。だから、愛人になってもいいと言ったのは、あれは本心。パパのこと慰めて上げられれば、それがお礼になると思ったの。管理人さんに妻といったのもなりたいと思っていたから。だから、はじめから、いつパパが私の部屋に入ってきて私を求めても覚悟はできていたの」


「そうしてしまいたいと思うことは、確かにあった。でもそうしたら、久恵ちゃんを傷つけてしまうことになると思った。それは絶対にできないと」


「パパが私を大切に大切にしてくれるから、どんどん好きになって行ったの。お部屋に入ってきて、パパのものにしてほしかったけど、パパはそっけなくて寂しかった。でも、キスしてもらった時に分かったの、パパの気持ち。本当は私がほしいんだと」


「あの時は確かにとても幸せな気分だった」


「あの時のパパ、キスがとても上手だった。それに、女性の扱いにとても慣れている感じがする。パパは確か恋愛がうまくいかずに結婚できなかったと言ってたけど、なぜ?」


「パパが結婚できなくて、憂鬱な生活を送っている時に、面倒を見てやっている後輩がソープランドへ誘ってくれた。寂しさを紛らわすために、それから度々通った。そこで、女性の扱いを学んだ。でも刹那的な関係の虚しさが募ったので、いつの間にか行かなくなった」


「そうなんだ。でも、もう絶対に行かないで」


「分かってる。約束する」


「気になっていることがあるけど、聞いていい」


「何でも聞いて」


「年の差のことなんだけど。今、久恵ちゃんが22歳、パパが40歳で18歳も離れている。パパが60歳の時は、まだ42歳なんだよ。それでもいいの」


「両親が死んだ時に思ったの。人間いつ死ぬか分からない。それなら今日を精一杯生きればいいと。精一杯生きた今日の連続が人生だと。先のことなんか分からないから、パパとの一日一日を大切にしたいの。それにパパが調理師免許を取らせてくれたから、いつでも仕事は見つかると思うし、住むところもあるから、一人でもシングルマザーでもなんとかやっていく自信ができてきた。ママも一人で私を育ててくれていたから、私にもできるはず」


「その覚悟を聞いて安心した。でも、パパは死ぬまで久恵ちゃんを守り抜くことを誓うよ」


「ありがとう。頼りにしています」


「うちの母親が言っていたけど『死ぬ死ぬと言っている奴に死んだ者はいない』そうだ。将来展望も大事だよ」


後ろから抱いてもらっているので背中が暖かい。安心? 幸せ? で一杯。いつの間にか眠ったみたい。パパが何か耳元で話していたけど覚えていない。


◆ ◆ ◆

数日後、二人で近くの区役所の出張所へ婚姻届を提出しに行った。証人が必要だったので、パパの後輩の春野さんとマンションの管理人さんにお願いした。


ゴールデンウイークには、私の思い出のためにと、婚約指輪と結婚指輪を二人で買いにいって、二人だけの結婚式を挙げて写真を撮り、披露宴を私の同期の務めるレストランでそれぞれの親しい友人を招いて行った。私は幸せで一杯だった。新婚旅行は思い出の伊豆下田の少し高級なホテルに1泊2日で行った。


めでたし、めでたし。



これで、パパと私のお話はおしまい。父親代わりの「パパ」は私の夫になった。ただし、呼び方は「パパ」のまま。結婚後、しばらくは「康輔さん」とか「あなた」とか呼んでみてはいたけど、やっぱり「パパ」が言いやすいことが分かった。結婚しても父親代わりは変わりないから、呼び方を「パパ」に戻した。


もし、子供が生まれたら、本当の「パパ」になるので、これからずっと「パパ」でお願いします。おしまい。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

この作品「パパか恋人かはっきりさせて!」について

https://kakuyomu.jp/works/1177354054885794339/episodes/1177354054885794398

「私の作品について」

https://kakuyomu.jp/works/1177354054885794339

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

パパか恋人かはっきりさせて! 登夢 @iketom

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ