第13話たおれた元勇者の夢。魔王学校 1年目(4月15日。放課後から元勇者が起きる前まで)

薫は、炎の鳥に攻撃を受け、たおれて夢を見ていた。

それは、薫が、過去に経験したことの一部分。

ところどころ、薫にとって都合良く修正した部分もあるのかもしれない。

夢は、薫が勇者になる前から始まる。


薫が、兵を連れてある村を助けた時のことだった。

「なぜ、もっと早く助けにきてくれなかったのですか?

もっと早く来てくれていれば、家は焼けずにすんだのに……」

村人の老人は、薫に向かって叫びながらせめよってくる。

魔物達のせいで、村の一部が焼けてしまったものの、村人たちには誰も死んだものはいなかった。

薫は、右手を握りしめ、歯切りした。

(俺たちの仲間は、村人を助けるために、6人も死んだのだというのに)


【夢の場面が変わる】


人間界の王達が、薫に勇者として魔界に攻め込んで欲しいと頼んでいる場面だった。

「薫様、どうか我々の力になって下さい」

各国の王たちは跪き、薫に懇願している。

民が魔物達のせいで疲弊し、食べるものも困っているにもかかわらず、各国の王たちは肥え太っている。

服装も豪華だ。黄金の冠をかぶり、いかにも高級そうな服を着ている。

そして、高級な服を、ズリズリ引きずりながら、薫に近寄り、手を取って、「お願いします」と、言うのであった。


【場面はまた、変わる】


魔界に攻め入る前の作戦会議だろう。

ある会議室で作戦を立てている。

そして、作戦会議が終わった後、全員生きて帰ってこようと、誓いをたてあっていた。

その中には、すでに死んでいるものもいるのだろう。

薫は、悲しい気分になっていた。


【場面はまた変わる】


薫が、魔王のとこにたどり着いた場面だ。

魔王から話し出す。

「我をたおしにきたのか?

そうか…………」

魔王は、そう言いながら、跪く。

「ここまで来るほど強いのであれば、我ではかなわないだろう。

おとなしく勇者にたおされるから、人間にとって無害な魔物は助けて欲しい。

我々は、あやつられたのだ。

それと、魔界を統治する者が代々受け継ぐという刀も受け取って欲しい」

魔王はそう言うと、薫の手を握りしめてきた。

薫は、魔王が意味不明な行動、意味不明な言葉を言うので、どうしたら良いかわからなくなっていた。


【場面がまた、変わる】


夢ではなく、少し意識が戻った時に聞こえてきた内容かもしれない。

「愛してます。

愛してます。

なんとか、生きてください。

こんな時は、お姫様の目覚めのキスが必要なのですね。

それでは…………」

ユイの声だった。

お姫様のキスじゃなく、普通は、王子様のキスだと、すぐに起きて突っ込みたい。

が、無理だった。起きれない。


…………。

…………。


早く起きなければ、俺の体が、なにをされるかわからない。


薫は、元魔王のことを思い出して考える。

どこかで生きている元魔王が、今の俺を見たら、なんて言うだろうか?

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