第12話元勇者はユイをかばい怪我をする。魔王学校 1年目(4月15日。放課後)

「ナナと一緒に、昼食を食べたんだって。

しかも、ナナお手製の弁当を。

ナナの箸によって。

あなたは、食べてる時に箸を持ってなかったように見えましたが……」

ユイがそう言った。なんか怒っているようだ。

放課後、ユイに勉強を教えてもらうために、隣の席に近づいて行った時のことだった。

「えっ、えっ……。

見てたの?」

「見てたのでなく、見えたのです」

薫は、昼食の時間であってもまわりに気を配っていた。

だが、ユイの気配は感じなかった。

(ナナとの状況にパニクって見落としがあったのかなぁ。確かに、昼食の時、一度も箸を握らなかったような)と薫は思った。

「ナナがお礼をしたいって、昼食を誘ってくれたんだよ。

お礼に弁当を作ってくれ……」

薫が言いかけた後には、当然、『るなんていい娘だなぁ〜』が続く。

ユイは、薫に弁当を作ったことがないので、薫があてつけに言ってるのだと思った。

ユイは、薫の言葉を全部聞かなくてもわかったので、薫がいい終わる前に、

「ふんっっだ」

と、 ユイは言いながら、横を向いた。

薫としては、どうしたらいいのかわからない。

いつも通り、薫は黙ってしまっていると、

「今日は、これで帰ろう」

と、ユイが寂しそうに言い出した。

薫は、無言で頷きながら、

「女子寮の近くまで送って行くよ」

と、言った。

薫は、ユイの目に少し涙が溜まっているように見えた。


ユイと一緒に校舎の階段を降りているときに、ユイから、

「気晴らしに、裏山でも一緒に歩かないっ?」

て言われた。

薫は、無言で頷いたのだった。


薫とユイは2人で裏山を歩いていた。

ふと、山の上の方で悲鳴が聞こえてくる。

薫が走って行くと、そこにはナナと炎に包まれた大きな鳥と、ナナをいじめていて大きな氷を作っていた同学年の少女がいた。

ナナは外見から判断するに無事なようだ。

一方、いじめていた少女の制服がボロボロになって、ところどころがかすかに燃えている。

(ナナが炎の鳥を操っているのか?今の状況は、昨日の逆だ。いじめていた少女は、炎の鳥からの攻撃をしのいでるが、そろそろもたなくなってくるだろう。やむを得ない)

そう薫は考えて、炎の鳥に剣で一撃をくらわせた。

(っちっ、浅かったか)

薫は、炎の鳥からくるであろう攻撃に備えた構えを取る。

その時、ユイの叫び声が聞こえた。

「薫ぅ〜」

炎の鳥は、ユイを襲った。

おそらく、薫には勝てないので、ユイを狙った方がいいと思ったのだろう。

ユイも弱いが魔法が使え、ユイはとっさに防御魔法を使ったようだった。

炎の鳥は、ユイに思った通りの結果が得られなかったので、さらに力を込めて、ユイに攻撃をする構えをとった。

ユイでは、防ぎきれない。

「間に合ってくれ」

薫は、叫びながらユイに向かって走り、ユイを包み込み、背中で炎の鳥の攻撃を受けた。

薫の背中は火傷を負う。

死んでもおかしくない強い一撃。

薫は、気を失いかけながら ユイがまた攻撃されないように、すぐに、炎の鳥の背中に一撃をあたえる。

薫の一撃によって、炎の鳥は相当弱ったようだった。そして、あたりを見渡したあと、空に飛んで行って、消えてった。

ナナはというと服はどこも破けておらず表面的には、問題なさそうだった。

だか、顔はものすごく青ざめ、震えているようだった。

なにかおかしい気がする……。と、薫が考えていると、山には、他に学校の生徒がいたらしく数人出てきた。

みなどこかに傷があるらしく、ふらふらした足取りだった。

ナナは、何も言わず、その場を逃げるように走り出した。

薫は、ナナを追いかけなければと思ったが、強い攻撃を受けたのでその場で気を失い、たおれてしまったのだった。


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