第5話 この素晴らしい世界に爆焔を!

 昨夜、昔話に花を咲かせた。


 本当は寝たくなかったのだが、ゆんゆんが辛そうだったので、そんなに夜更かしせずに寝た。


 今朝、ゆんゆんはウィズ、バニル達に挨拶に行った。


 そして、お弁当を持って私達は出かけた。



 ゆんゆんの最後のお弁当を私は味わって食べ、ゆんゆんのお弁当も平らげた。


 ゆんゆんは涙目だったが、嬉しそうだった。



 十分な睡眠、食事、体調は最高!



 さあ、爆裂魔法の……最後の時間だ!





「さあ、私の最高の爆裂魔法をゆんゆんの為に披露しますよ!!」


「ねえ、標的はどれにするの?」


「そうですね。あの大きい岩などどうでしょう?」


 私が提案をすると、ゆんゆんが。


「うーん。ちょっと遠いかな? めぐみんの爆裂魔法をもっと間近で感じたいから……。あっ、あの岩にしようよ。めぐみん」


「間近で感じたい! いいですね! いいですね! わかりました! ゆんゆんを感じさせてあげましょう!」


「ちょ、ちょっと、その言い方は……」


 ゆんゆんが頬を染める。



「我が爆裂魔法の前に色ボケは禁止です! ほらしっかり見ていてください! 行きますよ! 我が究極で最高の爆裂魔法を!」


「うん!」




 私は左目の眼帯をむしり取り、杖を構えて詠唱する。


「黒より黒く闇より昏き漆黒に」



 そして、ゆんゆんが----。


「我が真紅の混淆を望み給う」



 え? ゆんゆんがなぜ爆裂魔法の詠唱を?


 さらにゆんゆんが続ける。


「覚醒の刻来たれり」


 ゆんゆんの周りの空気が震え、バチバチと静電気のようなものが起きる。



 知っている。


 私は知っている。


 この状況を私は知っている。




 ゆんゆんは爆裂魔法を撃つ気だ!





 でも、ゆんゆんは爆裂魔法を覚えていなかったはず……。



 …………



『その……レベルを上げたいから手伝ってほしいんだけど』


 あぁ……そうか。


 あのレベル上げは……レベルを上げれば、爆裂魔法習得に必要なスキルポイントが足りるから……。


 まったく本当にこのぼっちは、本当に本当に……最後の最後で……なんというプレゼントを。




 私はそこで考えるのをやめ、今この瞬間を楽しむ事にした。



「無謬の境界に落ちし理」







 ----ゆんゆんが!


「無行の歪みとなりて」







 ----私が!


「現出せよ!」







 そして、私達が同時に----!







「「『ダブル・エクスプロージョン』----ッッッッ!」」












 轟音と共に魔王戦でもなかった程の、すさまじい爆風が吹き荒れた。


 爆裂魔法に慣れているアクセルの街でも騒ぎになっているかもしれない、そんなかつてない規模の大魔法。


 そう! 大魔法だ!


 爆裂魔法を極めた最強の大魔法使いの私と、紅魔の里で随一の魔法使いのゆんゆん、この二人の魔法なのだ、これ以上の魔法が存在していいはずがない!








 爆煙がようやく晴れ、ゆんゆんが心底疲れたように。


「なんてデタラメなの……。こんな魔法初めて……。気を抜くとすぐに暴発しそうだし……」


 でも、とゆんゆんが言葉を繋ぐ。


「最高だったかも。なんていうか、心地よい爽快感。 うん。最後の最後でめぐみんがこの魔法に生涯をかけたのも納得できちゃった」


 一人で納得したゆんゆんが優しい表情で私を見てくる。


「ねえ、めぐみん。今の爆裂魔法どうだったかな? やっぱり私なんてまだまだだよね?」


「いいえ。過去……いや、未来においても最高の爆裂魔法でした。ありがとう--本当にありがとう----」






 ありがとう最高の親友。という言葉と共に、とびきりの笑顔をゆんゆんに送った。

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