俺のペットは猫面祖 

ポムサイ

俺のペットは猫面祖

 「何それ、気持ち悪!!」と同棲している彼女が俺の右膝を見て叫んだ。

 そんなことは分かっている。一昨日あたりから痒くなってきて白いふわふわの毛が生えてきた。今現在、俺の右膝小僧は真っ白な毛で覆われている。いや、少し灰色とか黒とかも混じってきてた。剃った方が良いかな?とも思ったが面倒臭いのでそのままにしておく。

 

 翌日の朝、ニャーニャーうるさくて目が覚めた。部屋の中から聞こえるので猫が入り込んだのだと思い追い出そうと布団から出た。足下から一際鳴き声が大きく聞こえたので下を見ると俺の右膝が猫になっていた。どうりでうるさいはずだと思い、彼女を起こして見せる。彼女は顔をひきつらせて気を失った。しょうがないヤツだと思ったが、そっと布団をかけ彼女の頭をそっと撫でた。

 ニャーニャーうるさいので病院で見てもらうことにした。ジーンズを履こうとしたら猫に引っ掛かって履けないのでハーフパンツを履いた。

 

 病院までの道、すれ違う人すれ違う人皆、俺の膝を見る。そんなに見られるならすね毛を手入れしとけば良かったなと思った。2人連れの女子高生が「それどうなってるんですか?」と聞いてきた。説明が面倒臭いので「イリュージョンです」と答え病院に急いだ。

 

 病院の受付で「どうなさいましたか?」と聞かれたので「膝が猫になってうるさいから何とかしたい」と言うと警備員が来たが、俺の膝を見て分かってくれたようだ。

 待ち合い室にいる間もニャーニャーうるさい。病院に猫を連れてきてる常識のないヤツだと思われていないか心配だ。名前を呼ばれ診察室に入った。

 「どうなさいましたか?」と医師が聞いた。さっき受付で言ったのに聞くので、この病院は連絡・報告がなってないなと思ったが口には出さなかった。「膝が猫になって、うるさくて仕方ない」と言うと医師は俺の膝を三度見した。医者が慌てるように診察室を出て暫くすると5人ほど他の医者を連れてきた。その後、色々検査されたが結局手術で取るしかないと言われた。「考えときます」と答え会計をしていると「可愛いね」と小さな女の子が俺の膝を誉めてくれた。俺は「ありがとう」とお礼を言った。


 家に帰ると彼女が起きていた。俺の膝を改めて見て「気持ち悪いけど可愛いね」と言った。俺は犬派なのだが「そうだね」と合わせた。

 相変わらずニャーニャーうるさいので彼女に何か良い案はないかと聞いてみると「お腹空いてるんじゃない?」と言うので鰹節と水を口元に持っていくと勢いよく食べて飲んだ。彼女はそれを見てキャットフード買ってくると外に出て行った。


 数日が経って膝猫は前足まで出てきた。あちこち引っ掻いて迷惑だ。彼女は最近、俺より俺の膝猫をかまっている。自分の膝にジェラシーを感じる。

 このまま出てきたのなら完全な猫になるのは時間の問題だろう。早く完全な猫になって欲しい。風呂に入る時に右膝だけ上げていなければならないのは意外とツラいのだ。


 更に数日が経った朝、部屋に猫がいた。俺の予想より早く完全な猫になってくれたので助かった。俺の膝から出てきたので、もしかしたら普通の猫ではないのかも知れないと思い動物病院に連れていく事にした。

 動物病院に行って獣医に「これは何ですか?」と聞くと「猫ですね」と答えた。動物のプロが猫と言うなら猫なのだろうと思い帰った。


 膝猫が猫になってしまったのでペット禁止のアパートから引っ越さなければならなくなった。これを機会に彼女と結婚しようかと考えている。広い部屋を借りよう。今度は左膝が痒いからだ。 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

俺のペットは猫面祖  ポムサイ @pomusai

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ