好きなおっぱいを聞かれて「美乳が好き」って答える奴は信用しない方がいい

膝毛

第1話 好きなおっぱいを聞かれて「美乳が好き」って答える奴は信用しない方がいい

「お前は巨乳派?貧乳派?」

この世に生きる男は2種類に分けることができる。

そう、巨乳派か貧乳派である。

「たかが性癖の違いだろう?」とバカにする人もいるかもしれない。

だが、男にこの質問をすることでそいつの全てを知ることができるのだ。

そんな重要な質問を友人にされることがあれば、答えは慎重に出さなければいけない。特に大学に入学したてで何のグループにも属しておらず、友達作りの真っ最中、授業のチームで同年代の生徒と一緒になり、これをきっかけに友達になろうとしている時にこんな質問をされたら絶対に変な答えをしてはいけない。その答えによって、今後の大学生活がバラ色になるのか、灰色になるのかが決まってしまうのだ。


「で?どうなんだよ?ちなみに俺は巨乳派ね!」

このように気軽に自分の性癖を晒しているのが俺の友達(候補)の佐藤である。

身長は175cmほどで顔立ちが整っており、どうやらバレーボール部に所属しているらしい。まだ授業で数回話した程度だが、それだけでも相当のコミュ力の持ち主だということがわかる。基本的に明るくどんな話でもジョークを織り交ぜて話せる、いかにもモテそうなタイプの人間だ。


「いきなり何を聞いているんだよお前・・・」

そんな常識的な意見を言うこいつが俺の友達(候補)その2、竹島だ。こいつを一言で表すならば「勉強ができる」だ。授業のグループが同じで何度か課題を一緒にやったのだが、まぁできる。数学の課題だろうが、英語の課題だろうが関係ない。出された課題は必ず授業中に終わらせ早々と教室から出て行くのだ。身長は170cmほど、メガネをかけており顔は・・・正直まぁ・・・普通だ、うん。あとちょっと理屈っぽい、いわゆる典型的な理系だ。


「ちょwww佐藤wwwお前www」

このクッソ草を生やしているのが友達(候補)その3の田中、クソオタクだ。まぁ、俺も人のことを言えたもんじゃないがこいつほどではない。おすすめのアニメを聞くと1時間は止まらないし、好きな声優について語り出すと気持ち悪いほど饒舌になる。背は170前後でメガネをかけ、チェックのシャツを着ているまさにオタクって感じの男だ。勘違いしないでほしいが、俺は別にこいつのことが嫌いというわけではない。むしろこのグループの中では一番気が合うのはこいつだ。


そしてこの俺名前は中川だ。若干オタクではあるがあくまでもにわかの域を出ない。身長も170ほどで顔も普通、探せばそこらへんにいるようなまさしく普通の男だ。


このような個性が完全にバラバラな3人プラス俺の4人組で基本的に授業に出ている。入学して2週間が経ち、ある程度相手のことがわかってきた時期に、先ほどの質問が飛んできたのである。


さて、ここから先はいわゆる血で血を洗う死闘だ。一つでも答えを間違えると今後の大学生活に支障をきたすこと間違いなしだ。とりあえず俺がすべきなのは様子見だ。まず会話の発足者である佐藤が自身を巨乳派だと宣言した。この行動によって今このバトルフィールドは巨乳派に支配されている。これは貧乳派の俺にとっては少々厳しい。もし佐藤と今後仲良くして行くつもりならば、ここで俺も巨乳派だと言わなければいけないだろう。しかし、今後こいつらと付き合いを続けて行くならばここで嘘をつくのはよろしくない。なぜならそんな嘘はすぐにバレるからだ。もし好きな女優や好みのAV女優なんか聞かれたりすれば、そこからすぐにでも嘘はバレる。だからといってこのタイミングで貧乳派と名乗り出すのもリスクが高い。貧乳派は巨乳派に比べるとやはり勢力的には弱く、AVのジャンル分けなどでもあまり大々的に扱われておらず、世間一般的にはマニアックな性癖と認知されている。また、「貧乳」というワードでAV検索をしてしまうと、企画モノでロリや妹ものなどが多くヒットしてしまうことから、通常よりも変態度が高く感じられてしまうのだ。もし貧乳派が俺だけだった場合、巨乳派の連中からロリコンの変態という濡れ衣を着せられてしまう。


ここからは駆け引きが重要となるのだ。とりあえずは様子見だ、他のメンバーがどう出るのかによって俺も出方を考えよう。そう考えていた矢先クソオタクが動いた。


「デュフフwww俺は断然貧乳派だわwww」

「おっ、まじかー!マニアックだな!」

よし!!同志がいた!!これで俺が貧乳派だとしても変態扱いされずに済むぞ!

「いやーだって俺の好きなキャラ妹系ばっかだしwww必然的にそうなるんだよwww」

「へ、へーそうなんだ・・・」

なんてこと言いやがるこのクソオタクがあああああああ!!

なんだよそれただ単にお前が妹キャラ好きな気持ち悪い奴ってだけじゃねぇか!!ちくしょう!これでこの場では貧乳派=変態みたいなイメージがついてしまった!!これでは自分から貧乳派とは言いづらい・・・。

くっ・・・どうする話題を切り替えるか・・・?いや、もう一人が答えてしまってはそれも厳しい。

「あと二人はどうなんだよ。答えないってのはナシだぞー。」

「い、いや別に・・・好きな大きさとか・・・別に・・・無いし・・・」

竹島が随分恥ずかしそうに言う。まぁあいつこの手の話題苦手そうだもんなぁ・・・。

「いいじゃん、いいじゃん教えろよー。」

「そうだよwww俺らも言ったんだしwww」

「うーん・・・まぁ・・・強いて言うなら・・・」

「「うんうん」」


まずい・・・ここで竹島が巨乳派って答えると俺はクソオタクと一緒に変態のレッテルを貼られてしまう・・・。頼む!貧乳派であってくれ!!


「俺は・・・美乳派かなー」


ハァ?美乳?巨乳派か貧乳派か聞いているのに・・・美乳?ハァ?

「あーなるほどそっち派ねー」

「まぁわからなくもないかwww」

え?その答えでいいの?

こいつは質問をちゃんと聞いていたのか?俺たちは大きいのが好きなのか、小さいのが好きなのかを聞いていたはずだ。なのにこいつは美しいのが好きと答えた・・・意味がわからない。


「俺は別に大きさなんか気にしないけどな?あえて言うならやっぱり美乳かなって、お前もそうだろ?」

竹島はそう言ってこちらを向いた。ここで竹島に同調して美乳派だと偽ればとりあえず変態と言われないまま過ごせるだろう。しかも、美乳というのは大抵のおっぱいに当てはまるから、性癖を偽ったこともごまかせるだろう。


でも・・・それでいいのか?

今目の前で起こっている不正に対して見て見ぬ振りをするのか?

これから友達になる奴らに嘘をつくのか?

自分自身に嘘をつくのか?

おっぱいに・・・嘘をつくのか?


違うだろ・・・・

そうじゃないだろ!!!



「ああ・・・俺も好きだよ・・・」

俺がそう言うと竹島は嬉しそうに同調した。

「だよな!やっぱりそうだよな!!」

「だが・・・お前とは違う・・・」

「え?」

突然の俺の言葉に驚いているようだ。

他の二人も戸惑っている。

「おいおい、どうしたんだ?」

「何か気に入らないことでもあった?www」


そして俺は大きく息を吸い、きっぱりと答えた。

「俺はお前みたいに美乳と言って曖昧にするようなチキンじゃねぇってことだ!!!」

「はい?」

「そもそも俺たちは大きいおっぱいが好きなのか、小さいおっぱいが好きなのかを話しているんだろ!!!それなのになんだ美乳って!おっぱいなんだから美しいに決まってるだろ!!大きいのか小さいのかはっきりしろよ!!選択肢は二つしかないんだ!!恥ずかしがって無難な選択肢を選ぶんじゃねぇよ!!どんなおっぱいが好きかで自分を語れよ!!」


周りを静寂が包み込む。

そりゃあ突然こんなことを言ってキレるやつがいたらそうなる。

そんな静寂を破り、佐藤が尋ねた。

「じゃ、じゃあお前はどんなおっぱいが好きなんだ?」


ぶちまけよう、ありのままの俺を。


「俺はな・・・微乳が大好きなんだあああああああああああああああああ!」

臆するな、全てを吐き出せ。

「勘違いするなよ!俺の『微乳』は微分積分の『微』だ!!とてつもなく小さいおっぱいが好きなんだ!!平原のような何もないおっぱいが大好きだ!脇から胸にかけての美しい地平線のようなラインを見ると興奮が収まらない!!上着にスパッツなんて着てたら絶頂するね!!油断しきったワイシャツの隙間から見えるつるぺたおっぱいの美しさに敵うものなんてこの世にないね!!そんな貧乳が俺はどうしようもなく大好きなんだ!!どうだわかったか!!」


再び部屋が静寂に包まれる。

ここまで大々的に宣言したのだ。ドン引きされても仕方がない。でも、俺は後悔なんか一切していない。これが、俺なのだから。


どうしようもない静寂の中、ポタッっと水滴が落ちる音がした。

それも音源は一つではない、いくつもの水が落ちる音が聞こえた。

その音がする方を向くと・・・


男三人が涙を流していた。

「あ、あれ?おかしいな?勝手に涙が溢れてきやがる・・・」

「すごいwwwすごいよ!その情熱に感動したった!www」

佐藤とクソオタクが涙を流しつつ感嘆の言葉が溢れ出した。

そして竹島も

「今の言葉で目が覚めた・・・俺が間違っていたよ・・・そうだよな、自分を偽ったままじゃ自分にもおっぱいにも失礼だもんな。」

「わかってくれたか・・・」


人の情熱は世界を変える。

俺の貧乳への情熱は今一人の人間を変えたのだ。

「じゃあ竹島は本当のところどっち派なんだ?」

佐藤が聞いた。

「ああ・・・俺はな・・・」

男は好きなおっぱいの違いによってぶつかり合うこともあるだろう。

しかし、お互いのフェイバリットおっぱいを理解し合えたとき、男は友となるのだ。

これでやっと俺たちは真の友になれる。

さぁ、聞こうじゃないか、こいつの大好きを!!


「俺は巨乳、特にありえないくらいでっかい爆乳で乳輪が大きくて乳首が陥没しているおっぱいが好きなんだ!!」

「「「ええ〜それは流石に引くわ・・・」」」


やはり男同士が真の友になるのはそう簡単ではないようだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

好きなおっぱいを聞かれて「美乳が好き」って答える奴は信用しない方がいい 膝毛 @hizage

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ