Last NAME 閃光の英雄と闇の奏者

精霊玉

序章 追憶の中

それは、抹消されたある国の歴史・・・



すべての始まりは

 英雄と軍師の若かりし頃

      闇の奏者と出会ったこと


三人は行動を共にし

   歴史に名のみ残す国を創った


しかしその後三人に亀裂が入り

         決別の時がやってきた


光の女神の子と闇の神の子 そして 狭間の子


はるか未来にまで続く戦いは闇の神の子供が 


天地開闢の時より巣食う闇と契約し


光の神の子を裏切った


友の裏切りにあった光の神の子が

闇の神の子と戦うと宣言して始まった


これが黒白の一族と呼ばれる

   世界の監視者にして守護する一族の始まり





 創造主ははじめに光と闇の二神を創りました


そしてその二神は最初に五つの世界を創りました


エントランス 神風抄国界 奏藍界 蒼の世界 冥界 


この五つの世界に大地を創り 法を与え すべての命を創造しました


それが、世界のはじまりです



ある日の、静かなる午後のひと時だった。黒白の一族と呼ばれるものたちの総本山のある世界。ただ一つしかない大陸の政府が置かれている天陽城から見て北東の方角にある奥津宮。その一角にある離れの縁側で二人の青年がさんさんと注ぐ太陽の光のもとで読書をしていた。

「あれから何年たつんだっけ?」

ふいに青年のうちの片方、光の粒子を放っているかのような金髪に紅の瞳をした狭間(はざま)千尋(ちひろ)は読んでいた本から顔をあげて、もう一人の蒼銀色の髪に赤みがかかった紫の瞳をもつ蒼天華(そうてんか) 凛珠(りんじゅ)に話しかけた。

「一兆と……八憶年は超えているんじゃないのか」

しばしの沈黙の後凛珠は言った。

「もうずいぶんとこの世にいるわけだ。それにしても君の子孫たちも随分と増えたものだよ。一時期随分と少なくなっていただろう?」

千尋が芋ようかんを切りながら言った。

「……10年前の、八代目ラグナロクの時だろう」

凛樹が本のページをめくりながら言った。

「傍から見ていた僕らにとってはまあおもしろかったけど、参戦していた彼らは大変だっただろうね」

千尋の言葉に凛樹は眉をひそめて言った。

「面白いはないんじゃないのか。まったく、お前の感性を疑うな。あれのどこがおもしろかったんだ?当事者たちにとってはこの上なくつらい戦いが。……やはりお前は『光闇の大賢者』よりも希代の大悪党のほうがお似合いだ」

凛珠のその言葉に千尋は笑って答えた。

「ははは。僕もそう思うよ。だって僕のことを大賢者とかってつけたのは、あいつ(’’’)だろう?」

千尋のその言葉に凛珠は沈黙した。あいつは、はるか昔に凛珠たちがまだ人間だったころの親友だ。しかしある出来事で袂を分かち、その後、あいつの一族が凛珠の一族に宣戦布告したことで長き戦いが始まった。しかしこの戦いは凛珠を開祖とする黒白の一族の歴史には載っていない。無論はるか古の時代の戦いであるということも考慮に入れたのだろうが、一番の単純な理由は後世には伝えることができないほどの悲惨な戦いだったからだ。その戦いを知っているものは凛珠たちの他にも何人かいるが、みな、口を閉ざしている。そしてそのことがきっかけとなり、凛珠と千尋は人であることを捨てた。

「……なあ、千尋。もし、あんなことがなかったら俺たちはどうなっていたと思うか?」

凛珠のその言葉に千尋はかすかに眉をひそめて言った。

「やめておいたほうがいいと思うけど。それを言ったら、僕もお前も、そして今の一族すべてを否定することになるだろう?あの事は決して避けられないことだったんだと僕は思うよ」

凛珠はその言葉に目を伏せた。事実、千尋の言葉通りだったからだ。あれは絶対に避けられないことだったのだ。あの事がなくても、あいつと凛珠たちはいつか袂を分かっていただろう。あいつと凛珠たちは決して相容れることはなかったのだ。思想でも、もっていた力でも、そして受け継いだ血の性質でも。


――でももし、あんなことがなかったら?

自分たちはどうなっていただろうか。

ごく普通の人生を全うしていたのだろうか。

あれから長き時がたった今になって、初めて、思った。


 そう、凛珠たちがあいつの逢ったのは、凛珠15歳、千尋17歳、そしてあいつが16歳の時だった。

まだ人であった二人は、すべての始まりとなる戦いを引き起こすことになる、一人のある青年に、初めて、出逢ったのだ。


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