第6話 意外な繋がり

「わざわざごめんなさい。」

凛へ向けたユキの第一声だった。

「いえ、あの、私に何か用ですか?」

ユキはなぜ呼ばれたのか本当に分からなかった。

「お礼がしたかったのと、聞きたいことがあって。」

「お礼って何のことですか?初対面ですよね?」

「あ、土曜日におんぶしてもらったんですけど。」

「え?あのサングラスの女性?」

「はい。あの時は本当に助かりました。」

「あ、いえ。まさかあの女性がユキさんだったとは。それで、聞きたいこととは?」

「土曜日の帰り際に、変装を自然にしろって言ったじゃないですか。その時彼氏って…。」

「ああ、大丈夫ですよ。彼氏がいる事は誰にも言いませんから。」

「いえ、そうじゃなくて、彼氏じゃないんです。」

「そうですか。」

「信じてくれるんですか?」

「信じるってほどじゃありませんけど。」

「ありがとうございます。」

「いえ、じゃあ私はこれで。」

「あ、待って下さい。やっぱりお礼をさせて欲しいんです。」

「本当に大丈夫です。」

「お願いします。私の気が済まないんです。」

「じゃあ、1つお願いしてもいいですか?」

「はい。何ですか?」

「NASKでケンカはしないで下さい。」

「え、何で知ってるんですか?」

「私あそこでバイトしてるので。」

「そうだったんですか。すみません。ご迷惑おかけして。」

「あ、いえ、迷惑ではないので。ただ、周りの人にバレてしまうかもしれないですし。」

「気を使わなくていいのに。分かりました。気をつけます。」

「では、友達が待ってるので失礼します。」

「お時間とらせてすいません。」

「とんでもないです。撮影、頑張って下さい。」

そう言って凛はバンから降りた。そこへ夏希がやってきて凛に頭を下げる。

「本当にありがとうございました。ところで、お二人はどんな関係ですか?」

「ただの知り合いです。いや、知り合い以下かも。あの、友達が待ってるんで、失礼します。」

そして、凛は渚のところへ急いで向かう。

「なぎー。ごめんごめん。探した?」

「凛!どこ行ってたの?全然見当たらないから、焦ったよ。」

「ちょっとその辺をブラブラしてたの。ほら、早くしないと次の授業始まっちゃう。行こ。」

次の授業中、渚が凛に話しかけた。

「凛はさっきの撮影どの辺で見てたの?」

「後ろの方だよ。なぎは?」

「私は前の方で見たよ。結構良く見れた。」

「良かったね。どうだった?」

「すごく綺麗だったよー。私ね、オレンジグッドのファンなんだ。特にユキが好きなの。今日は無理言って撮影現場連れて行ってごめんね。」

「そんな事気にしなくていいから。私も見れて良かったし。」

「本当に?良かったー。凛はオレンジグッドの中で誰が好きなの?」

「私オレンジグッドの事よく知らないの。実はメンバーもよく分からなくて。あ、でも、ユキだけは分かるよ。」

「そうなの?オレンジグッドには、ユキの他に、レイ、カナ、ユイって子がいるんだよ。皆可愛いよ。」

「本当に好きなんだね。」

凛は実はオレンジグッドの曲を1つも知らない。彼女はテレビをあまり見ない。結局、その日の授業は、渚のオレンジグッド講座で終了した。

次の日凛と渚がお昼を食べていると、海斗と圭介がやって来た。凛は少し気まずかったが海斗は普通に話しかけてくる。

「一緒にご飯食べていい?」

「もちろん。」

渚が答える。海斗は凛の隣に、圭介は渚の隣に腰を下ろした。

「今日ね、オレンジグッドのユキ見てきたの。」

早速渚が今日の出来事を2人に話す。そしてその話に圭介が反応する。

「いいなー。俺講義で見れなかったよ。なあ、海斗。」

「ああ。って言っても俺そこまでファンじゃないし。凛ちゃんは?」

「私はメンバーの事もよく分かってない。だからさっきなぎに教えてもらってた。」

その後も4人はオレンジグッドのことで盛り上がっていた。



数日後、いつものように4人でお昼を食べていると、渚がスマホをみて、興奮した声で3人に話し出した。

「今日の夜、駅でユキのドラマの撮影するんだって!行こうよ!」

「いいね!行こう行こう。海斗も行くだろ?」

いち早く反応したのは圭介。

「うん。いいよ。凛ちゃんは?」

「私は「凛は強制。今日はバイトなかったよね?」…うん。」

こうして全員で行くことになった。


夜、駅に4人が着くと、すでにそこにはすごい人だかりになっていた。凛はこれからもっと増えるギャラリーを想像して、嫌になり、3人には気づかれないように、こっそりその場から抜け出した。そして、渚にはスマホで連絡した。そのままの足で家に帰ろうとした時、誰かから声を掛けられた。


「すみません。」




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お人好し探偵の娘 @taeyri

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