第17話

 「さっき私は四つの国の名前を言ったでしょ。高天の原、海原の国、根の堅州国、黄泉の国。そこでそれぞれ禍の兆候が数年前から起こり始めたの。今まで見たこともないような荒ぶる神が現れて、国を荒らすようになった。最初は数も少なくて、強さも大したことがなかったからあんまり問題にならなかったんだけど、最近になってまずこの高天の原のはずれで、とてつもなく強くて大きな荒ぶる神が確認されたの。そしてその荒ぶる神、私たちは『禍津久留刀布まがつくるとふ』とよんでいる神が少しずつ高天の原の神が神集う場所、すなわち天の岩屋戸へ向かい始めているらしいの」

 「天の岩屋戸ってあのアマテラスが隠れたところ?」

 理子がいぶかしそうに聞く。

 「そう。そのとおり」

 「何のために・・・」

 思わずおれも聞いた。実際、おれはまだ信じられなかったが、オトタチの話に一貫性があるため思わず話を受け入れていた。

 「多分、再びアマテラス様を封印するため・・・」

 そこまでオトタチが言いかけたとき、おれは遥か一直線に続く前方の道の延長上になにやら黒い点がうごめいているのに気づいた。そしてそれは近づくにつれ、人らしき形であることが認められた。

 「オトタチ・・・あれは・・・」

 「うん、わかってる。みんな、シートベルトしてるよね。ちょうどいい。これでみんなに信じてもらえるから」

 そう言うやいなやオトタチはアクセルを踏み込んだ。ハイエースはみるみるスピードを増す。

 「ちょ、ちょっとオトタチ!どういうこと?」

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