6インチのトリックスター

麓清

6インチのトリックスター

 1


 午後一番の弛緩した空気が教室の中を漂っていた。汐里しおり達の他にはクラスの半分にも満たない生徒が、昼食後ののんびりとした時間をおしゃべりに費やしていて、他の生徒はといえば正直どこにいるのかよくわからなかった。運動部員達は昼練習や筋トレに勤しんでいるのかもしれない。文化部の人達はそれなりに文化的な時間を過ごしているのだろう。どちらにしても汐里の与り知るところではなかった。


「でさ、この前あーしのトモダチのトモダチがマジで、レッドラインでブルッた相手と出会ったんだって」


 汐里の一つ前の席に座っていた笑美えみは、椅子をまたぐように足を開いた格好で後ろむきに汐里の机に肘をついていた。自分の事を「あーし」と呼ぶのは笑美の癖で、はじめて聞いた人が「あっし」と聞き間違えて、なんだか落語家みたいねといわれるのはいつもの事だ。

 笑顔が美しくあるように。そう願ってつけられたという名前に負けない程、彼女の顔立ちは目鼻立ちがくっきりとして、鼻梁も高くあごもすっきりと細く締まっている。高校生というには少し大人びていて、汐里やクラスメイトがうらやむほど整った顔をしていた。ただ、そんな名前がちょっとした騒動になった事がある。

 笑美のフルネームは佐藤さとう笑美えみ。汐里とは幼馴染で、中学校までは学年に同じ苗字の生徒がいなかったのだが、高校生になり同じ佐藤という生徒と一緒のクラスになった。そして、入学式の朝、クラスに張り出されていた座席表の笑美の座席には「佐藤(笑)」と名前が略されて記載された為に、それを面白がったクラスの男子が笑美の事を影で「わらい」とか「ワラ」とか、中には「草」というネットスラングで呼んで馬鹿にしたのだ。

 ただ、勝気な性格をしていた笑美はその日のホームルームでの自己紹介のときに「好きなものは嫌いじゃないもの全部。で、嫌いなものは人の名前を陰でコソコソ笑う股間に豆粒をぶら下げた男ども」と敵意をむき出しにしていいのけたものだから、クラスが騒然としたのは当然の事だ。

 その後、入学初日にして騒動を起こした男子ともども職員室に呼び出された笑美だったが、逆に学校の教師達を相手取り、自分の名前をあんな風に表記する事でどういった事態が起こるのか予想もつかなかったのか、と詰め寄って最終的には学年主任が謝罪するというちょっとした武勇伝を残していた。

 それ以来、外見はかなりの美人であるにもかかわらず、笑美のまわりには男子達が一切寄り付かなくなってしまった。もっとも、笑美自身はそれを「魅力ゼロの男が寄らないなら好都合」と一笑に付しただけだった。

 そんな笑美がレッドラインの話題を持ち出した事は汐里にとってみたら意外というほかなく、目の前の笑美に新鮮な驚きの目をむけていた。


「本当に? あれって何百万人もダウンロードしてるっていうのに、その中から出会ったっていう事?」

「マジでマジで。なんか、電車の中でその子がトモダチと『今レッドラインがブルッたー』って話してたら、向かいに座っていたオッサンが『それ、もしかして僕が送ったコールかも』っつってもう一回コールしたら、まじでそのトモダチのトモダチのレッドラインがブルッたんだって」

「えー、すごい確率じゃん、それ」


 汐里が目を丸くしていると、笑美はゲラゲラと顔に似合わず品のない笑い声をあげながら手を横に振った。


「相手がよりにもよってオッサンってのが、マジ受けるんだけど。その子、ソッコーでクソアプリっつって消したんだってさ。オッサンも自重しろよって感じだよね」


 笑美はくつくつと笑いながら手にしたスマホの画面を弄んでいた。彼女の手のひらにはちょっと大きすぎる気もする6インチの画面の中には、二人の天使の絵と中心に引かれたまっすぐな赤いラインが表示されている。真ん中よりやや下には、蔦状のフレームに囲まれた中に「運命の人を探す」のボタンがある。笑美がそのボタンに触れると、赤いラインの揺れるようなアニメーションと同時にブブッと音を立ててスマホが震え、画面には「Searching」という表示が数秒間点滅表示されたが、やがて何事もなかったように再びもとの画面に戻り、「残り時間15分」と大映しになった数字のカウントダウンが始まった。

 これが今しがた笑美も話題にしていた「レッドライン・オブ・フォーチュン」というアプリで、『運命の人とだけ繋がる』というキャッチコピーが受けて若者達の間で流行っているアプリだった。登録時に性別や趣味などのいくつかの情報を登録すると、このアプリの登録者の中から自分と相性がぴったりの異性を探し出してくれるというもので、運命の人を探すというボタンを押すと、自分のアカウントに対になった相手のスマホが数秒間振動して、相手の事を探しているという情報が送られる。それ以外はメッセージを送る事も、画像のやり取りをする事すらできない。一度「運命の人を探す」ボタンを押すと、その後一五分間は相手を探す操作ができないが、課金する事でその時間はリセットされるというシステムになっていた。画面上の赤い線は「運命の赤い糸」を表しているらしく、スマホのGPS機能と連動していて運命の相手が近くにいると赤い糸が光り輝くのだという。ただ、笑美のスマホの赤い糸が光ったところを汐里はこれまで見た事がなかった。

 この一見単純な正直どうでもいいジョークアプリが爆発的に流行したきっかけは、とあるアイドルグループのメンバーが「私の運命の人、募集!」とこのアプリの話題をツイッターに投稿した事だった。彼女の運命の人に選ばれたい(もっともアプリが勝手に選ぶのだが)男性ファンがこぞってそのアプリをインストールしたのをきっかけに、今度は別の男性アイドルグループや人気バンドのメンバーも同じようなツイッターを投稿してそこからユーザーが爆発的に増え、そのダウンロード数は現在では八百万件もあるという。

 ただ、それが汐里には全く興味のないアプリである事は間違いなかった。そもそも、汐里はメールやラインのやりとりでさえ面倒くさがるほどの筆不精で、クラスのグループトークに半ば強制的に加入させられただけで、メッセージのほとんどに返信する事もなく、今も20以上のメッセージが既読すらつけていない状態だった。なにせ汐里はちまちまとした事を面倒くさがる性格なのだ。


「噂だとこのアプリを作ったのって高校生らしいんだって」


 そういった笑美の言葉に汐里はますます大きく目を見開いた。


「本当に? よくそんなもの作れるよね」

「クラスの豆粒野郎にも見習ってもらいたいもんだね。これだけダウンロードされてたら相当儲かっただろうな。いいなあ、あーしにもそんな才能あったらなあ」


 笑美は弄んでいたスマホを自撮りモードにすると、画面を鏡の代わりにして前髪を整えながらぼんやりと呟いた。笑美は成績自体は決して悪くなかったが、本人はその事よりも「才能」が欲しいといつもいっていた。例えば音楽や絵画、コンピュータープログラミングやスポーツなんかでもいい。そうした「将来役に立つ能力」というものが自分にはないのだといってため息をつくのだ。

 結局、笑美のレッドラインはその後もなんの反応も示さず、十五分のカウントを終えて元の画面に戻っていた。それと同時にチャイムが鳴り響き教室の中は昼休みの間中どこかに消えていた生徒達が、いつの間にやら自分の席に戻っていた。


 2


 酒井さかいおさむは自室のパソコンにむかい、黙々とキーボードを叩いていた。まるで天才ピアニストが迷いなく鍵盤をなぞるように、頭の中に思い描いているプログラムを難なく打ち込んでいく。小学生のころから独学で始めたアプリ開発は現代文の宿題をこなすよりもはるかに容易だった。

 親から見た修は理想的な「いい子」だった。もめごとを起こさないし持ち込まない。同年代の男友達と集まって猥褻な雑誌やビデオをみる事もない。悪ぶって煙草や酒に手を出したり、原付バイクを乗り回したりもしないし、毎回の定期考査では当然のように学年トップの成績を修めていた。学校での授業が終わればまっすぐに帰宅し、部屋にこもって趣味のパソコンに没頭しているのも彼の親は真面目に勉強をしているのだと信じて疑わなかった。もっとも、彼の母親を含め他の誰かが今の修のパソコンの画面をのぞき込んだとしても、画面の上を踊る数々の英単語や記号の意味を読み解く事は不可能だろう。

 修はすでに成人男性が何年と働いてようやく手にできるような大金を手にしていた。彼が開発したレッドラインというアプリはつい先日八百万ダウンロードを突破し、課金も含めた収入総額は一千万近くになっているはずだった。だが修はおおよその一般人が目にする事がないような数字の躍る銀行預金の残高にはそれほど興味をもっていなかった。

 修はキーボードを叩く手をとめると、指同士を組んだ手のひらを体の前に突き出し、そのまま頭の上に高くかかげて大きく伸びをした。肺の奥から自然と息が漏れ出る。

 修は自分の両親が自分よりも優れた存在でない事を知っていた。彼の両親だけではない。生徒達に対して偉そうに振舞う学校の先生や、どうでもいい知識をひけらかすテレビのコメンテーター、ただの人気取りで選挙に勝っただけの政治家。彼の目に映る人間はただの有象無象でしかない。彼にしてみれば、物事の本質を見極める事ができる人間なんてこの世の中にほんの数えるほどしかおらず、その内の一人は修自身である事は間違いないと彼は考えていた。

 修は伸びの姿勢から一気に脱力して背もたれに体重を預けると、デスクの上に放り出してあったスマートフォンに目をやる。わずか15センチメートルのこの小さな箱には恐ろしく広大な世界が詰まっている。それはバーチャルリアリティなんて表現されるような妙に格好いいものじゃなく、有象無象どものどす黒い欲望が渦巻く世界だ。そこでは常に誰かが何かを欲し、その何かに群がる蟻どもに甘い蜜を投下する存在がいる。修は間違いなくその蜜を与える側の人間、いや違う。その世界を創造した「神」なのだ。

 修は背もたれにあずけていた身体に反動をつけてデスクの上のパソコンに手を伸ばした。開発途中だったアプリの制作ソフトを中断すると、妙におどろおどろしい雰囲気のある真っ黒な画面の端に並んだアイコンから、いくつかを選んで順に開いていき、その小さなウィンドウに慣れた手つきで数字やアルファベットを入力して、軽やかにエンターキーを叩く。新たに立ち上がった小さなウインドウを見て修は口元をぐにゃりと歪めると、虫の羽音のように奇妙な不快さのある声で独り言ちた。


「さあ、俺をがっかりさせるなよ。ニコちゃん」


 ここ最近のネット通販ではクロムハーツのシューズに次ぐ高額な買い物だった十五万円のゼンハイザー製のヘッドフォンを装着してパソコンに接続すると、デスクトップ画面の中にならぶ意味不明な文字列の中から自分の求めているものをコピーし、それを別に立ち上げてあった地図アプリの検索バーにペーストしてエンターキーを叩いた。ほんの一瞬の読み込み時間の後に地図が指し示した位置は、このあたりでは一番栄えている繁華街の裏通り、ちょうど風俗店や飲み屋が立ち並ぶ場所だった。


「イキがったところでアンタも所詮は有象無象なんだよ」


 修は余裕たっぷりにそう呟いてパソコンにつないだヘッドホンのボリュームをあげると、まるでクラシック音楽を鑑賞するかのように目を閉じて、再び大ぶりなチェアの背もたれに体重を預けた。


 3


 笑美は放課後のざわついた教室からなるべく周囲に悟られないよう、消えるように下校した。特に笑美が豆粒野郎どもと呼称するクラスの男子に知られる事は避けなければいけなかった。そのためには例え親友である汐里にだって自分の秘密は口にしてはいけない事ぐらいは重々承知だ。

 駅構内のトイレで、笑美は持ってきていた私服に着替えると、鞄と制服はロッカーに放り込んで繁華街のある方面の改札を出た。

 メイド喫茶やサブカル系ショップ、怪しげな韓国マッサージ店などの雑多な看板でにぎわう通りの一角、ビルの地下に通じる階段の前に「Girl's Barガールズバー GRANBLEグランブル」と滑らかな筆記体の看板が出ていた。

 この界隈のガールズバーはどこも表むきは女性のバーテンダーが数名いる健全なカフェバーだ。ただ、ここが他と違うのは、ここの「客」に若い女性が何人も出入りをする事だ。つまり、店に来た客同士が偶然気があって同席するという事だが、もちろん、実際は偶然にそんな事がおこるはずはなく、その若い女性客というのはたいていが店の仕込みだ。笑美もこの店に出入りしている「客」のうちの一人で、彼女を店に斡旋するコーディネーターが別におり、笑美は客として来店し、一時間ほど客とおしゃべりをするだけで三千円が手に入った。ときには一日で複数の店舗を数件はしごする事もあった。

 笑美がこのアルバイトを始めた理由は金銭面の魅力はもちろんあったが、それ以上にこの仕事を通じて出会う多くの男性客(ときには女性客もいた)は自分の知らない世界をたくさん見てきていて、自分のいる世界がいかに狭いのかを知ったからだ。たった15センチのスマホに問いかければ、電話が喋って答えを返してくれる時代であっても、彼らはスマホが絶対に答えてくれない話をいくらでもしてくれた。それが笑美には楽しかった。店にいる限りは身に危険が及ぶ事もなかったし、そういった意味ではコーディネーターの存在も心強かった。

 この日受けた仕事は笑美にとっても店にとっても「新規客」だった。もし、新規客がリピーターになれば、笑美には大きなメリットがある。コーディ―ネーターが管理する顧客が増えれば、キャスト(とコーディネーターは呼んだ)の笑美のランクも上がり、収入も増えるのだ。

 決意したような面持ちで笑美が店舗に続く階段を降りようとしたその時、ショルダーバッグの中でスマホが短かな鳴動を繰り返した。取り出してみると、それはレッドラインのコール、つまり自分と対になっている相手が、サーチボタンを押したという事を知らせる呼び出しだった。アプリを開くと普段なら何の変哲もない赤いラインが、キラキラとしたエフェクトを纏って光り輝いていた。

 笑美ははっとして画面から目線を上げて目の前の建物を見遣った。


「もしかして、この中に相手がいる?」


 笑美はもう一度スマホの画面に視線を落とす。相手からのコールは止まっていたが、赤いラインは依然としてその存在感を誇示するように光り輝きながら画面のど真ん中に居座っていた。


 4


 入店して案内されたカウンター席にはすでに男性の客が座っていた。


「はじめまして。あーしはニコっていうの」


 笑美はいつも通りの改まらない気さくな挨拶をする。ニコというのは笑美が仕事のためにつけた別名だった。相手の男性は年齢は三十半ばといったところだろうか。爽やかな印象の塩顔で、腕にはオメガのスピードマスター、ジャケットは仕立ての良さそうなテーラードのサマーウールと華美ではないが、それなりに収入のありそうな身なりだった。


「ここは初めてだけど、電話で君がイチオシだって聞いたからね」


 柔らかな声色をしているその男はカズキと名乗った。彼は自分の話をあまりせず、どちらかといえば笑美の話を笑って聞いてくれるタイプだった。カズキはいろんな話題に精通していて、特にインターネットやパソコン関係の話と、経済関係の話が得意なようだった。


「そういえば、カズキってレッドラインって知ってる? 今流行ってるアプリなんだけど」

「ああ、それなら僕もやってるよ。そういえば、今日レッドラインの糸が反応するところを初めて見たよ」


 そういってカズキが取り出したスマホの画面の赤いラインは、赤い糸を越えてほとんど白く光り輝くほどだった。それを見たカズキはわざとらしく驚いてみせる。


「わ、すごいな。もしかしてこれって……」

「相手があーしのレッドラインだったら、すごいよね、って話? コールしてみようか?」


 もう答えは出てるのに、それを確認したがるんだから人間っていうのは不思議だ。カズキは少年のように嬉しそうに目を細めた。笑美がスマホを操作すると予想通り、カズキのスマホがブルブルと震えだした。


「うわ、すごい! 本当にこのアプリって誰かと繋がってたんだ」


 カズキの嬉しそうな表情を見た笑美の脳裏に「商機」の文字が浮かんだ。どんな小さなきっかけでも相手が乗ってくると思えばそれはつまり、商機であり勝機なのだ。


「ねえ、その運命の人の事、もっと知りたいと思わない?」


 笑美は上目遣いでカズキを見つめる。しかしそれは可愛らしいというよりも、狩をする肉食獣の眼光のような鋭さだった。カズキは困ったように眉尻を下げて頭を掻いた。


「まいったな。イチオシってこういう事?」


 もう一度笑美と視線を合わせたカズキの表情にはどこか挑発的な色が滲んでいた。カズキは声のトーンを落として、肩が触れるほどの間合いで囁く。


「いいよ、延長してあげても」


 カズキはハイチェアからすとんとおりると、ポケットから無造作にお札を取り出して、バーの店長の胸ポケットにねじ込んだ。なにも見ていない事にしろというサインだろう。彼はまだカウンター席に座る笑美に呼びかけた。


「その代わり、店外に出るよ。いいよね」


 店外に出る。それが意味するところは笑美にだってわかった。この店の目の届く範囲を出るのだ。何が起こってもすべては自分の責任という事だ。笑美は口元をキュッと引き結んでうなずくと、カズキの後についてこの店を出た。

 階段をあがった裏通りに並ぶ雑多な看板には安っぽい光が灯っていた。笑美は前を歩くカズキの背中を目線で追う。ジャケットの下はヴィンテージジーンズとクロムハーツのスニーカー。足元のファッションだけで五十万円はしそうだ。それがラフなのにしっかりと身なりの良さを主張していて、笑美はセンスがいいと思った。そして、彼がリピーターになってくれるなら申し分ないと。


「この後どうする? カラオケとか行く?」


 笑美の提案にカズキは肩越しに振り返って、ははっ、と小さな乾いた笑い声を漏らす。


「おっさんに女子高生とのカラオケはちょっときついな。それよりも二人でゆっくりしたいんだけど、どう?」

「それって、あーしとヤリたいって事?」


 バッサリと割り切ったように笑美がいうと、カズキは一瞬びっくりしたような顔になって、すぐに大きく口をあけて今度は豪快に、あはは、と笑った。


「そうだね。もしできるならありがたいけどね」

「でも、あーしは女子高生だし、警察にチクったらカズキ、捕まるよね?」

「うん。けれどニコはきっと警察にはいわないね。そんな事をすればお店や君のご主人様にだって迷惑が掛かる事になるっていうのは理解してるんだろ?」


 まるで勝ち誇ったような顔でそういったカズキにむかって笑美は皮肉を込めた声でいう。


「カズキってさ、モテるでしょ?」

「モテるならこんなところにいると思う?」

「思う。モテるからこそ、女の子の時間を買う事にも躊躇がないんでしょ。モテない奴はそんな余裕ぶらずにすぐヤラしてくれっていうし」

「それで、ニコはヤッた事あるの?」


 彼の質問に笑美は「内緒」と、少しだけ意地悪な笑いを口元に浮かべた。

 大通りでタクシーを拾うと、カズキは笑美を乗せて駅前にある外資系高級ホテルの名を運転手に告げる。運転手の目に自分達がどんな風に映っているのだろうかと、笑美がぼんやり考えているとカズキがいった。


「仕事でね、ホテルにはしばらく滞在しているんだ。もちろん、エントランスで別れても構わないよ。その場合は延長は一時間だけ。どれだけ延長するかはニコ次第だけど、僕は君と話したい事がまだたくさんあるんだ」


 ――勝った。

 笑美はそう確信した。当然、一時間ぽっちの延長で終わらせるつもりもなかった。


 5


 朝っぱらから鳴り響く着信サウンドに、無理やり起こされた汐里は目をこすりながら、安眠を妨げた元凶のスマホを手に取った。グループトークが何やら騒がしく、すでに二十件以上のメッセージが入っていた。


「うわぁ、メンドくさ」


 そう呟いて、汐里はスマホを握ったままベッドをおりてリビングへとむかう。珍しく一人で起きてきた汐里に母親が何やら嫌味をいったようだが、彼女の耳を右から左へと抜けていった。相変わらずうるさく鳴るスマホをスクールバッグに放り込むと、汐里は洗面所にむかい身支度を整えた。

 いつもなら笑美と出会う交差点で彼女とは出会わず、代わりに駅でクラスメイトの綾子に会った。綾子は汐里を見つけるなり駆け寄ってきて息を巻いた。


「ちょっと汐里。あれ見た?」

「何を?」


 素直にわけがわからないといった様子で顔をしかめる汐里に、綾子は続けた。


「トーク見てないの? 朝からみんな大騒ぎしてるんだよ?」

「だから何を? あたしクラスのトークとか全然見ないんだもん」

「なんか、笑美がエンコーしてるってネット掲示板に書かれてたらしいよ」


 はあ!? と汐里はあんぐりと口を開けて普段の一オクターブ高い声をあげた。


「なんで笑美がそんな事してるなんて話になんのよ?」

「あたしも詳しくはわからないよ。とにかくトーク見てみなって!」


 汐里は慌てて鞄に放り込んだスマホを取り出し画面を起動する。トークにはさらにコメントが追加され未読は30件を超えていた。


『やっぱり(笑)予想通りの尻軽女』

『ワラがエンコーとか、それこそ草ww』

『エミの証拠ないでしょ?』

『添付ファイル見てないのかよww音声もあがってるだろがww』

『誰の豆粒をお召し上がりになられたんでしょうか?』

『マジで男子最悪』

『えー? でも証拠画像あるじゃん? あれ、どう見てもエミだけど?』


 スマホ上に延々と繰り広げられる笑美に対する誹謗もさる事ながら、汐里が気になったのはみんなが「証拠」という画像や音声だった。


「ねえ、綾子。この証拠ってなに?」

「クラスの男子達がよく使うネット掲示板に画像と音声ファイルがあがってたみたい。今はもう消されてるけど」

「その画像とかって持ってる?」


 汐里が聞くと綾子は「それは……」と渋い表情を作ったが、そこまで聞かされて今更引き下がるわけにはいかなかった。強引に綾子のスマホに画像を表示させる。

 どこかのホテルの一室らしく、笑美の背後には大きなダブルサイズのベッドが映っている。笑美は胸元にバスタオルを巻いた格好で濡れた前髪を気にするような仕草をしている。ただ、相手の人物は映ってはいなかった。


「音声もあるのよね?」


 汐里は綾子のイヤホンをひったくるようにして耳にあてて、音声ファイルを再生する。イヤホンからは街中の喧騒とともにくぐもった声が聞こえてきた。最初に聞こえたのは柔らかな男の声だった。


『おっさんに女子高生とのカラオケはちょっときついな。それよりも二人でゆっくりしたいんだけど、どう?』

『それって、あーしとヤリたいって事?』

『あはは、そうだね。もしできるなら、ありがたいけどね』


 それは聞き慣れた笑美の声に違いなかった。自分の事をあーしという癖も同じだった。


「確かに笑美の声だけど、別に普通に彼氏と会話だったとしても違和感ないんじゃないの?」

「おっさんっていってたでしょ。それにさっきの画像は? 高級ホテルでバスタオル姿のやつ」

「あれもなにかおかしいよ。なんていうか、自撮り画像じゃなさそうだし。笑美ってスマホを鏡代わりに使うんだけど、それを写したみたいな……」

「まさか盗撮?」


 綾子の言葉に汐里ははっとした。そうだ、盗撮画像みたいなのだ。どうすれば他人があんな画像を撮れるのか、どうしてその画像が出回るのかは汐里にはわからなかったけれど、笑美に対して誰かが何かの意図で攻撃を加えようとしている。それだけはハッキリと感じ取っていた。ざわざわと胸が騒ぐ嫌な予感が汐里を包み込んでいた。


「ごめん、綾子。今日わたし、体調不良っていっといて!」

「ちょっと! 汐里?」


 綾子が戸惑う声も遠ざかってしまうほどの勢いで汐里は駆けだしていた。走りながら電話をかけてみても笑美の電話が圏外だと伝える無感情のアナウンスが流れるだけだった。なら、笑美の家に行くしかないと、汐里は不安を振り払うように走った。

 やがて、笑美の自宅の前に着いた汐里は家の中にむかって大声で叫んだ。


「笑美、中にいる!? 汐里だけど!」


 すると、ややあって二階の窓が開き、いつもと変わらない様子の笑美が顔をのぞかせた。


「あれ汐里だ。どうしたの?」

「どうしたの、じゃないよ。携帯もでないし。駅にも来ないから心配したんじゃん? それにグループトークが何かおかしな事になってるんだって!」

「ああ、そういう事」


 ふあ、と笑美は大きな欠伸をひとつして「とりあえず、玄関開いてるし入ってきて」といって窓を閉める。汐里は呆れながらも、笑美が無事でいた事に安堵の息をこぼした。しかし、「笑美、入るよー」と声を掛けて玄関の扉を開いたところで、またも表情を曇らせた。

 玄関には笑美がいつも履いているスニーカーともう一足、高級そうなスニーカーが並んでいた。そしてそのスニーカーに汐里は見覚えがあった。

 まさか、と慌てて階段を駆け上がって笑美の部屋に入ったところで、汐里はその光景に目を瞬かせた。笑美の部屋の中には汐里が予想していたのとは全く違う男性がいて、笑美のデスクに座って必死にパソコンを操作していたのだ。


「笑美? その人って……」

「ちょっとワケありで。あ、彼氏でもましてやエンコー相手でもないよ。あのグループトークについては、まあ半分は本当だけど半分はでっちあげだから、汐里は気にしないで」

「それは気にしてないけど。あの……誰?」


 まるで額縁の中のポートレートのように扉の枠の中で突っ立っている汐里にむかって、その男性はパソコンを操作する手を止めて、爽やかな声で自己紹介をした。


「失礼、僕はカズキ。今は彼女の相談に乗ってるってところかな」

「とにかく、汐里はその辺でゆっくりしてて。時間かかるだろうし」


 笑美にそう促されて汐里はそろそろと部屋の中に入って、中学校時代からの定位置だったベッドの上に腰を掛けた。


「びっくりしたぁ。最初、酒井くんが来てるのかと思ったから」

「は? 何で酒井があーしの家に来んの?」

「だって、玄関にあったスニーカー。あれ、酒井くんが履いてるのと同じやつだったよ」


 汐里がそういうと笑美は咄嗟に汐里にむかって人差し指を突きつけて叫んだ。


「それだ! ナイス汐里!」


 きょとんとしている汐里を横目に、笑美とカズキはまるで水を得た魚のように生き生きとしてこれからすべき事を話し始めていた。汐里には今何が起こっているのかさっぱりわからなかった。


 6


 酒井修は苛ついていた。

 あのいけ好かない佐藤笑美の悲痛に歪む顔を拝めると楽しみにしていたのに、本人は学校を休んだからだ。しかし、今朝のグループトークでの反応はなかなか見ものだったし、笑美にもいくらかのダメージを与えられたはずだと自分自身を納得させる事で苛つきを抑え込んだ。あのクラスの男子を中心とした反佐藤派と、残りの親佐藤派の壮絶なテキストの応酬は、電車に乗りながら笑いをこらえるのに必死だった。

 修は自分の完璧な人生に汚点をつけた笑美が許せなかった。彼女のせいで入学初日から職員室に呼ばれて親にまでくだらない揉め事の経緯を報告された事を根に持っていた。

 実は修が開発したレッドラインにはアプリをインストールしたスマホに外部のサーバーから容易に侵入できるセキュリティホールが生成されるという、仕掛けが作ってあった。そうやって他人のスマホのセキュリティを潜り抜けることに修は快感を覚えていた。そんな折、笑美がレッドラインをインストールしているという事を知り、何度か彼女のスマホに侵入を試みてようやく最近、笑美が怪しげなバイトをしている事を突き止めたのだ。

 学校からまっすぐ帰宅した修は、自宅のパソコンから笑美のスマホへのアクセスを試みた。すでにレッドラインによってバックドアが仕掛けられているため、侵入用のポートは開放してあり、ルート権限の認証キーを入力すればいつものように笑美のスマホを通して彼女の生活は筒抜けになるはずだった。修はいびつに口元を吊り上げながら慣れた手つきで認証キーを入力した。しかし次の瞬間、修の顔が険しく歪む。笑美のスマホへの侵入に失敗したのだ。


「おかしいな」


 誰ともなしに独り言のようにつぶやいて、今度はキーボードに視線を送って確実に認証キーを入力し直してみが、結果は同じだった。


「どうなってるんだ?」


 まるでバスケットボールを掴むように、右手で自分の前頭部を掴みながら文字ばかりが並ぶディスプレイをにらみつけていると、修のスマホにメッセージの着信を知らせる音が鳴り響いた。それは、クラスのメンバーが加入しているグループラインの着信音だった。

 舌打ちを一つして、スマホに手を伸ばした修は、そのディスプレイに浮かび上がる文字に動揺の色を浮かべて立ち上がると、ついさっきと同じセリフを今度は叫ぶようにして繰り返した。


「どうなってるんだ!?」


 修の手のひらの6インチのスマホにはクラスメイトのメールのやり取りがチャットのようにリアルタイムに流れていく。そのスピードは瞬く間に十通を越えた。


『あのレッドライン作ったのって、酒井らしいよ』

『マジで? もしかして、超絶金持ち?』

『そういや、あいつなんかすげー高そうな靴はいてたな』

『あれ、クロムハーツ。30万近くするやつ』

『マジで!?』

『それより、レッドラインにウィルス仕掛けられてるって知ってる?』

『何それ! マジ?』

『なんか、スマホの個人情報とか写真とか抜かれるらしい』

『それ、マジならヤバすぎ。ソッコーアプリ消してツイッターで拡散するわ』

『もしかして、エミもレッドラインやってたから、あの画像もあいつに盗撮されてた?』

『ありえる! あいつ性格ネチっこそうだし』


 気付けば修は手にしていたスマホを思いっきり壁にめがけて投げつけていた。部屋の中に鈍い衝撃音が響く。急激に上がった心拍数に合わせるように、浅く短い息を吐き出しながら言葉にもならないような言葉を早口で繰り返して、まるで檻の中のコヨーテのように部屋の中をぐるぐると回り歩いた。

 やがて何かを思いついたのか、修はデスクチェアに飛び乗るような勢いで座ると、素早い動作でパソコンのアクセスログを表示する。一般人にはまるで理解不能な文字列を異常なスピードで読み進めていた修は、ぎっときしむほどに奥歯を強く噛みしめた。彼が学校に行っている間の十四時頃に五分間程度、外部からのルート権限でのログインが残っていたのだ。

 修がその時間に加えられたパソコンの変更箇所を探すと、ちょうど十四時三分に作成されたテキストファイルが一つ残っていた。

 恐るおそるそのファイルを開き、表示された画面を見た瞬間修は握りしめた拳で力いっぱいキーボードを叩きつけた。


「あのクソ女ッ!」


 シンプルで真っ白なテキストウィンドウには『Hey,やあ、How's yourあんたの nutsキンタマの going?調子どう?』とだけ表示されており、そのテキストのファイル名にはnico.txtとつけられていた。



 汐里は笑美の部屋のベッドの上に腰を掛けて、大荒れのグループトークの画面を追いかけながら隣に座る笑美にむかって問いかけた。あの後、カズキは修のパソコンに侵入して笑美のスマホへのハッキングの形跡を突き止めていた。


「何で笑美のスマホがハッキングされてるってわかったの?」

「あーしって時々スマホのカメラを鏡代わりにするじゃん? で、そのときって左下に撮った最新画像のちっちゃいのが表示されてるでしょ? それが突然あーしの自撮り画像に変わったのよね。どっか画面触ったのかなって思ったんだけど、よく考えたらそんなはずないなって思って。で、その話をしたらカズキが『気になってる事があるから調べてあげる』っていってスマホ調べてくれたんだ」


 すると、カズキが少年のような照れ笑いを浮かべていった。


「実は、僕はインターネットセキュリティの会社をやってるんだ。レッドラインについては前から気になる事があって調べていたところでニコとそういう話になった」

「ニコ?」


 汐里が首を傾げると笑美は気まずそうに苦笑して「まあ、そこはあーしのあだ名って事で流しておいて」とぱたぱたと手を振った。


「そんで、今朝、あの画像が出たでしょ? これはクラスの誰かが犯人だと思ったんだ。そんな時、汐里がスニーカーの話をしたじゃん? あれってすっごい高い靴で、普通の高校生が履けるようなものじゃないんだよね。それで、もしかしたらレッドラインって酒井が作ったもので、そこが入り口かもって気付いたんだ。しかし、あのグループトークで酒井は今頃悶絶してるだろうね」


 笑いをかみ殺すように肩を震わせながら笑美がそういった。汐里は何がどうなっているのかさえ分からず、ただ「はあ」とやる気のない相槌を一つ打っただけだった。

 そんな二人の様子を微笑ましく眺めていたカズキがまるで感心したかのように呟いた。


「しかし、面白いアプリだね。レッドラインは」

「面白い?」


 当の被害者を前にそういったカズキに汐里は顔をしかめたが、カズキは大まじめにうなずく。


「レッドラインってのは運命の赤い糸というほかに、『超えちゃいけない一線』という意味もあるんだよ。つまり、あのアプリを入れた段階で、すでにみんな一線を越えて制作者の支配する世界の中に入っていたって事さ」

「でも、だからといって勝手に人のスマホにアクセスしちゃいけませんよね」

「もちろんだよ。いくらあのアプリの制作者が自分自身をその世界の神様だと勘違いしても、現実の世界じゃ広大なインターネットの小さなエリアで悪戯小僧トリックスターがお茶目を働いた事にしかならないさ。もちろん悪戯小僧にはお仕置きも必要だろうけど」


 カズキが笑美を横目で伺うと笑美は首を横に振ってふっと短く息をついた。


「まあ、酒井なら今頃十分痛い目を見てると思うから、今回はお仕置きはいいや。それよりもカズキ、本当にあの話を酒井にしてもいいんだよね?」

「ああ、もちろんさ」


 カズキは魅惑的な微笑を浮かべて立ち上がると「それじゃあ、お暇するよ。ずいぶん延長させてすまなかったね」といって笑美の部屋を出ていった。


「延長?」

「ううん。こっちの話」


 笑美は困り顔で両手を振って誤魔化した。


 8


 翌朝、汐里と笑美が登校してきたときの教室の様子は昨日のグループラインでの大荒れ具合が嘘のようにひっそりとしていた。ただ、教室の片隅にはクラスの誰からもその存在が認識されていないように修がひとりでぽつんと座っていた。

 笑美はつかつかと彼の真正面まで歩いていき腰に手を当てて仁王立ちになる。クラスの視線が一気に二人に集まり、ほんの一瞬の静寂が教室を支配していた。修はそこに笑美がいる事を無視するようにじっと固まったまま、机の一点に視線を固定していた。


「酒井、あんたさ。ウィルスハンターって会社で働いてみるつもりない?」


 その言葉に微かに修の表情が動いた。ウィルスハンターといえば全世界でもシェアナンバーワンのパソコン用セキュリティソフト会社の最大手だった。


「あーしの知り合いがアンタの力なら、えーと何だっけ?」


 笑美は汐里をちらりと見遣ると、汐里が「トリックスター」と小声で返事をした。


「そうそう、それ。今はただの悪戯小僧トリックスターだけど、いずれは英雄ヒーローになる事もできるっていってた。あとはアンタ次第だけど、どうする」


 クラスにざわめきが戻ってくる。二人のやり取りは笑美と汐里、そして修以外には何の話か全く分からなかったに違いない。修はしばらくじっと押し黙っていたけれど、やがて絞り出すようにかすれた声でいった。


「……俺は悪戯のツケを払わなきゃいけない」

「じゃあ、そのツケの代わりにっていったら?」


 修はびっくりしてつい顔をあげた。笑美は修を見下ろすようにして立っていたが、その表情に軽蔑の色は伺えなかった。修はぐっと唇を噛んで黙っていたが観念したように、笑美だけに聞こえるほどの小さな声でいった。


「佐藤の事を覗き見て悪かった……」

「それは、まあお互い様だね。あーしもアンタのパソコンの中身見たもん。それより、あーしの方もアンタを豆粒呼ばわりした事は謝る。アンタ、すごい才能持った男なんだから、それをちゃんと生かしなよ」


 にっと口元を弓のように吊り上げると笑美は踵を返し、いつものように汐里の前の席に座って、いつも通りにありきたりな会話を始めた。修がぼろぼろと涙をこぼしている事にはこれっぽっちの関心も示さなかった。

 6インチの小さな世界に起こった事件は、結局この現実世界にはこれといった影響を与える事もなく静かに幕を引いた。変わった事といえば、笑美のバイトが汐里にばれてしまい、例のキャストのバイトがしばらく出来なくなってしまったという事くらい。ただ、そのバイトのおかげで一人の男の才能が開花させられたのだ。そう思えば、笑美自身も悪戯小僧トリックスターみたいなものだったのかもしれない。もっとも、笑美は英雄ヒーローになるつもりはなかったけれど。

 笑美は汐里とのおしゃべりに夢中になりながら、無意識に自分のスマホに手を伸ばしていた。

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6インチのトリックスター 麓清 @6shin

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