第39話〜第43話 ら行

第39話 らすと  らくえん


「ねえ 海を見に行きましょう」


突然 エナが 家族で 出かけようと言い出した


「海って ここには 海なんてないんだよ」


このエンタル地球には 海は存在しない

エナが一番  よく知っているはずなのに


「ぼくも 海を見たい」


とトキオも言い出した


「だけど どこに 海なんてあるんだい?」


そういうと エナとトキオが 泣き出した


「そんなに 海が見たいのかい?」




その午後 ぼくはジジイに相談した


「なあに 簡単なことさ 無限チョーゴー剤を 使えばいいさ」


「そうか その手があった!」


ぼくは ありったけの 無限チョーゴー剤をもらって

公園の向こうの 誰も 人の住んでいない 未開拓の土地へ行った


水筒の水に塩を入れ 小さな水たまりに注いで

ありったけの  無限チョーゴー剤を 投入した


みるみる水が溢れ出し 立派な海が出来た


「これでよし!」




翌日 エナとトキオをつれて 海へでかけた

お弁当と おやつと 水着を持って


トキオとエナに 泳ぎ方を教えると すぐに 泳ぎを覚え

3人で 夢中になって遊んだ


2人とも とても楽しそう


夕暮れの海 エナは 夕日を見ながら 涙をこぼした


「きれいだね」


ぼくは2人を 

おもいっきり抱きしめた


家に帰ると 2人とも疲れたのか 夕食後すぐに眠ってしまった




翌日 目覚めると





2人の姿は なかった



おしまい




第40話 りあるへの  りだつ


 薄暗い部屋で、僕はベッドにしばられている。誰もいない。どこまでが現実で、どこまでが妄想であるのか、混乱している。ぼくはいつからこの混乱した世界に入ってしまったのだろう。あの部屋の住人たちも僕が作った妄想なのだろうか。唯一現実だと思えるのは、白いドアの部屋の女の子のことだけだった。


「君はどこにいるの?」


 もう一度、彼女に会いたくなった。ここはどこなのだろう。収容所の中なのだろうか。もう一度、窓からあの部屋に入って、彼女のいる部屋で、今の混乱を彼女に打ち明けたい。そして、いつものように彼女に語りかけた。そばにはいないけれど。


「僕は今まで何をしてきたの。存在する意味なんてあるのかな。何のために産まれてきて、何のためにここにいるの。やっぱりここへ来たとき、全てを終わらせればよかったのかな。この混乱した世界には何か意味があるのかな。あるはずなんてないよね。ぼくは、本物の変人なんだ。ここを出たら、もう・・・」


どこからか、彼女の声が聞こえたような気がした。


「ちゃんと意味があるのよ。」


 やはり僕はまだ混乱しているようだ。幻聴と幻覚の混乱した世界で、生きていく理由を探したが、見つかるはずもなく。何かが起こるかもしれないという奇跡を、期待もせずに待っているしかなかった。





 別の部屋では、ハカセとデッパが人格融合ファイルの完成を急いでいた。彼の行動履歴アーカイブから人格融合データファイルを抽出し、破損データを丁寧に取り除いて実行ファイルだけを残した。これをニンゲンとアバターに応用できるようにプログラム処理すれば、人格融合ファイルが完成する。あとは、彼女の感情記憶データに適合すれば、奇跡は起こせるはずだ。






 一方、白いドアの部屋では。彼女の閉ざされたまぶたの奥の眼球が、左右へと動き、手の指が一瞬ピクリとケイレンした。



おしまい




第41話 るーるむしの  るーとふぁいる



カタカタカタ  カタカタカタッ タン


ビーッ


カタカタ  カタカタカタッ タン 


カタカタカタ  カタカタカタッ タン


ビーッ


カタカタカタ  カタカタッ タン

カタカタ  カタカタカタッ タン

カタカタ  カタカタカタカタカタッ タン


ピピッ


「クリア!」


カタカタカタ  カタカタ  カタッ タン


ビーッ


カタカタ  カタ  カタカタカタッ タン

カタカタカタ  カタカタッ タン

カタカタ  カタカタカタッ タン

カタカタ  カタカタカタカタカタッ タン


ビーッ


「トキオ  大丈夫?」


「ぼくは  へいき」


トキオの姿は半分透過している


カタ  カタカタ  カタカタッ タン


ビーッ


カタカタカタ  カタカタカタッ タン


ビーッ


「トキオ  ごめんね」


涙を流しながら  エナはものすごい 勢いで  キーボードを叩いた


カタカタカタ  カタカタカタッ タン



ビーッ


カタカタカタ タン

カタカタカタ  カタカタッ タン

カタカタ  カタカタカタッ タン

カタカタ  カタカタカタカタカタッ タン


ビーッ


爪がはがれて  血がでていることも 気にせず  プログラムを書き換えた



ビー ビー ビー



「トキオ  パパが危険だわ  パパの記憶ファイルが  消滅しかけているの」


「ぼくがパパに  融合して 食い止める」


「でも  そんなことしたら」


「ママ  ぼくは預言者だよ  3年後に再び  会えるはずなんだ」


「だけど・・・」


「ママ   ぼくがここを離れたら  デジタル時間が作動してしまう

その中でのルートファイルに 近づくのは・・・」


「大丈夫  トキオ  パパを助けて」



トキオは家に向かった


家のベッドで うずくまったぼくに トキオは おおいかぶさり

そのまま 消えてしまった



つづく




第42話 レッツ  レスキュー



ぼくは ベッドの上で 目覚めた

すると ウサギが入ってきて ぼくに 叫んだ


「エナを たすけて」


ぼくと ウサギは 脳博士の研究所の 地下室に急いだ


「エナ!」


到着したときには もうエナの 半分から下は  消えていた


「エナ もうやめるんだ!」


もう ぼくの言うことも 理解できなくなっている


ウサギは言った


「エナ 君を消すわけにはいかない」


カタカタカタカタカタカタ   


タンッ


「これで 終わったわ」


エナは力尽きて そのまま 動かなくなった


「ウサギ エナを救う方法はないのか?」


ウサギは返事をしなかった そしてこう言った


「ここは もうすぐ エンタルネットワークに 

吸収されて  消えてしまう 君は ヌシを見つけるんだ」


「エナ・・・・」


するとエナの体がゆっくりと起きて


「あなた アバターたちを 救ってあげて 

そして あなたも現実世界に  戻るのよ」


「エナ 消えないで」


「あなた アバターたちを 助けるのよ」


エナの体が 少しずつ消えはじめ 

やがて すっかり 無くなってしまった


「わかったよ エナ 君の望みどおりに」



つづく




第43話 ろーかる  ろーてーしょん


「みんなを 公園に集めるんだ!」


ウサギと手分けして みんなを公園に集めた


「みんな聞いて ぼくたちは ヌシから独立した  アバタ―だ

しかし ここはもうすぐ 消えてしまう 

ここが消えれば みんなも消えてしまう 

ぼくたちが  生き残れる方法は1つ ヌシともう一度リンクして 

意識をヌシに返すんだ このままでは 君たちのヌシも    

意識を無くしてしまう ヌシを見つけるんだ」


それぞれ ヌシとのリンクを試み ヌシが見つかったものから 

月へ行って リアル世界への バスに乗った


半日でみんなのヌシが  見つかった ただひとりをのぞいて


ウサギがぼくに言った


「君のヌシが  みつからない」


顔だけくんと ジジイとババアの ヌシにも リアル世界から

捜索を依頼したが どこにもいなかった


「ぼくは エナとここに残る」


ここはエナの作った世界だ 

ぼくはエナと ずっとここに いたかった



「そうだ あの人なら 知っているかも」


ウサギはそう言い残して どこかに行ってしまった

 

 

「亀のおじさん 彼のヌシを探して!!!」



つづく

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る