マイナス20℃の塾でお勉強!

ちびまるフォイ

凍結塾でぜんりょく勉強するわ!!

テストの成績を見て母親は激怒した。


「まあ! なんですかこの点数は!

 仮にも城ケ崎家の跡取りとして恥ずかしいですわ!」


「でもママ。授業は退屈でつまらないんだ。すぐ寝てしまうよ」


息子はテストのときだろうが授業中だろうが寝てしまう。

寝る子は育つというけれど、体ばかり大きくなっても困る。


「困りましたわ。そうですわ! 寝ないように訓練しましょう!」


「訓練?」


母親は息子を連れて凍結塾へとやってきた。

部屋は冷蔵庫のように寒く、マイナス20度に保たれている。


「こここここここここ……ここが凍結塾ですわ。

 ここで勉強すればばばば成績アップ間違いなしですわわわわわ」


「ほ、本当にそうなの?」


「ええ、この環境だからこそいいのですわ。

 すみません、この塾に1人入れてもらってよろしくて?」


「かまいませんよ。授業がはじまるので席についてください」


凍結塾の授業がはじまると、生徒はみんな席に着いた。

新しい編入生が珍しいのかみんなじろじろ見ている。


「おいあれ……なんでいるんだ」

「来る場所まちがえたのかな」


「おいそこ! 凍結学級で私語はつつしめ!

 無駄話で体力消耗してしまえば生きて出られないぞ!」


先生はぴしゃりと叱り、授業を再開した。

氷でできた壁にマジックで板書しつつ授業を行う。


授業の内容はごくごく普通の塾と同じだが環境がまるでちがう。


「ね、眠い……」


極限まで冷え切った教室はあらがえない睡魔を引き寄せる。

けれど、この教室での居眠りは死に直結する。


必死に耐えながら授業を受けた。



何度も凍結塾に通っているうちに、寒さには慣れないが睡魔には慣れた。


死に物狂いで眠気に打ち勝っているうちに扱い方に慣れて

真面目に授業を受けるように改善された。


「完璧ですわ! これで次のテストもパーフェクトまちがいなし!」


母親は自信たっぷりに確信し、ママ友へも自慢しまくった。

後日、学校で行われた学力テストの結果を息子が持ってきた。




10点/100点




母親は凍り付いた。


「な、なんですかこの点数はぁぁぁぁ!!!!」


怒りの矛先は愛する息子ではなく、結果を出させなかった塾へと向かった、

母親は凍結塾に乗り込むと部屋の寒さをものともしない怒りの熱で教師に詰め寄った。


「どういうことですか!! こんなに勉強したのに成績上がってないなんて!

 この塾はお金だけとって成果を上げられない詐欺ですか!! ええ!?」


コートの胸ぐらをつかまれた先生は困惑したように答えた。




「あ、あの……でしたら、今度は凍結塾に息子さんを入れてください。

 お母さんがいくらここで勉強しても、息子さんの成績あがりませんよ……」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

マイナス20℃の塾でお勉強! ちびまるフォイ @firestorage

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ