「通話」


連絡先を聞いてから

夢中になってLINEを送り続けた。


他のお客さんともLINEはする。

お礼の連絡、営業の連絡。

なんでもいいことを送ったりしてるけれど。


またちがう感じ。


普通なら、どちらからともなく

2、3通やりとりすると

途切れてしまうもの。


でも彼は違った。


こちらから送ると、どんなに遅くなっても必ず返事は返ってくるし

こちらが送らなくても

突然スタンプが送られてきたりしていた。


そんな何気ない行為が

とっても嬉しかった。

本当に時間など忘れて、返事が来るのを今か今かと待っている。


なんだろうなこれ。


当時は知る由もなかった。


とある日

私は近くの薬局に買い物に来ていた。

日用品やメイク道具などを見ていると

突然電話が鳴り出した。



着信 アヤト


胸が踊った。

今までトークでのやりとりしかなかったのに

突然着信がきた。


ウッウンと咳払いをして

お店で出しているちょっと高めの声で電話に出る。


「もしもし」


「あ、リサちゃんおはよ」


「おはよ。どうしたん?」


「急にごめんなあ、電話してしまって」


「全然ええよ。むしろ暇やったし」


その時の私は、傍から見ればさぞかし気持ち悪かったでしょう。

なにせニヤニヤが止まらなかったのですから。


心が踊り、心臓の音がうるさくなりだして

とてもじゃないけど買い物どころじゃない。

全然目当てじゃないコーナーまで

電話をしながらぐるぐる回る。


「実はさ、今買い物にきてるんやけどなあ」


「うん?」


「プレゼントを包む包装するやつ?百均に買いに来たんやけど…」


「うんうん」


「ママってキティちゃんとか好き?やんなあ?」


「ああ、好きやと思うよ?」


「よかった。ちょっとしたものやねんけど用意しててさ、それを包むやつ選びに来てんねんか。どんなんがいいと思う?」



…ママか。


どことなくそんな気はしてたし

彼は当時ママのことが気に入ってるんだろうなって

思ってはいたから

別になんとも思わなかった。

むしろママのお客さんだって思っていたから。


それだけで話は終わるかなと思ってたら

また別の話が出てきた。


「あ、それとさ。今日3人くらいで店に行くわ」


「ほんと?ありがとう嬉しい。席とっとくよ」


お決まりの営業連絡。

…と思っていたら


「俺のツレがさ、ひとり彼女がおらんねんか」


「ほう?」


「しかもちょっと女の子が苦手な子で、苦手って言うか…中々うまく話せない子やねんけどな…リサちゃん、うまいこと話してやってほしいねん」


おしゃべりが本業。

それくらい任せなさいと笑いながら言った。

すると向こうもよかったと、今日が楽しみだと言っていた。

そしてなにより


「リサちゃんにも渡したいものあるねん。もっていくな。」


渡したいものがなんなのか予想もつかなかったけれど

もうそれ言われた時点でめちゃくちゃ嬉しくなってしまって

変なスイッチが入った。


「髪の毛セットしに行こ」


ヘアセットに行くことに決めた。

田舎のスナックだから、普段セットなんてしないけれど

美容院に行って、ばっちり決めようと。

なんか、嬉しくて、楽しみすぎて変なスイッチが入ってしまった。


あぁ、今日も会えるんや。





ちなみに通話時間…



2時間弱…(笑)




一体何をしゃべってたんだろう。(笑)

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