参話*おやすみ

……真っ白な四方を壁で囲まれた部屋の中に自分は座っている。

何故かこの虚空の様な周りの景色?に飽きる事なく蹲り眺めている自分が不思議だ。

暫くすると部屋だと思っていた場所は草原に変わる。嗚呼…夢なんだなと思いながら周りの景色に目を向ける。

自分の夢なんてどうでも良かった気もする。

何処かの誰かさんが言っていたのは

と。

俺はそんな事出来ないと希望を人に持たせる意味が分からない。いや、意味なんて必要なのか…。

そうやって思考を凝らしているうちに景色が変わる。

此処は……──小学校。昔から仲が良かった2人と初めて会った場所。自分勝手な理由で、自分勝手に俺を傷付ける場所。

思い出とは……─必要か?と問いただして見れば、人は答えることが出来ないだろう。別に答える気も無いのだって。

自分の夢の中は心地良かった。誰にも、何も言われない。自分は此処で必要とされてる気さえした。

まるで

自分の意思とは別の……──何かに。人は操られている。勿論、…他人に。

ふと目を閉じれば夢という名の幻想が見える。だから…夢なんて見たくもない。

予知夢が見える訳でもない、誰かに褒められる訳でもない、と想い、幻想に身を任せ続けてるだけ。

そう思えば思うほど、自分が、自分だけが………────辛いんだって…もう変える事の出来ない過去に縋る自分が居て嫌気がさす。

夢は嫌いだ。けど、現実と向き合いたくない。自分がどれだけ愚かで幸せなのか分かってしまうから、辛い思いをしているのは自分だけじゃないから、自分が…─だなんて言えないから。

だから…─自分だけの随意領域テリトリーに縋る事にした。

約束なんて覚えちゃ居ないけど。どーでも良いだろう?他人との…いや、場所との約束なんて。

空気の香りが漂う机を台にそっと窓から飛び降りる。その瞬間…鈴の音が鳴ったような気がした。

だから、眠ろう…?深くて誰にも会わないで済むような美しい底へ。


さぁ…おやすみ世界。今夜も眠ろうじゃないか。

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おやすみ世界 夕霧 夜薙 @Natsuml-0419

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