第33話:蝶の紋章

一瞬、座がザワめく。

「何を・・・」少し躊躇するが、

「申し訳ありません。」そう言って、お蝶は、さらに脱がそうとした。

「おいおい」山師がニヤリと笑い、「公開でやるのか。」

「これです。」オレの着物を片肌脱がせると肩の後ろに蝶の紋章のようなアザがあった。

「これが、紋章・・・」明日真が呟いた。

「はい・・・、いかがでしょう。御前。これこそが、平家の末裔、清雅様である何よりの証拠です。どうぞ、お確かめを・・・・」

「うむ、よく見せてみろ。」とオレを呼んだ。

肩の後ろ辺りなので、必死に振り返るが、自分で見る事は出来ない。

「うむ・・アザなのか・・それとも、入れ墨なのか・・・・」山師。

「近こう寄れ。」清雅に指示。

はい・・・・、とオレ。清国らは清雅の肩のアザを擦ったりして確認。

「はぁ、アレが証拠なの・・・」篠。

「だろ。多分。」明日真。源内も、う~ンと唸った。

「よし、わかった。」清国は笑顔で清雅を送った。

「チ、」正妻、律は舌打ちし、一派を率いて部屋を出ていった。


「フ・・・随分、嫌われたみたいだ。」


屋敷内は不穏な空気に包まれた。

夕方になり、山並みが赤く染まっていった。





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