天使の異世界ダイエット!\ブーッチブーッチ/

ちびまるフォイ

天使の力を悪用するなこのデブ

天使ガブリエルはデブリエルになっていた。


「お前、そろそろダイエットしてみたら?」


「なんでだよミカエル。天使だって周囲の環境に合わせて変化する。

 俺が太ったってことは必要だから太ったということだ」


「どんな言い訳したところで、その腹は正当化できねぇよ!」


ミカエルとしては同じ天界のガブリエルがだらしない

わがままボディだと人間に示しがつかない。


「こないだも、転生にやってきた人間に鼻でせせら笑われたろう?

 ダイエットしてこいよ、ガブリエル」


「ダイエットねぇ……どれも続かなかったんだ」


「よし! それじゃとっておきのダイエットを紹介してやるよ!」



ブゥーチッブゥーチッ♪

ブゥーチッブゥーチッ♪


結果にリセットする。



「……で、おなじみの異世界ダイエットだ! 行って来い!」


ミカエルは異世界ダイエットにガブリエルを登録して送り込んだ。


異世界ダイエットは規定値まで痩せない限り元の世界には戻れない。

挑戦した人間はかならず痩せて戻ってくると評判だ。


ダイエット異世界ではカロリーの高い食物は存在せず、

毎日働かないと生きていくことすら難しい厳しい環境。


「ふふ、これでガブリエルもきっと痩せて戻ってくるはずだ」


天界でも天使がダイエット異世界に行くのは前代未聞で噂になっていた。

ミカエルも噂をいい意味で達成できるようガブリエルに期待した。


数日後、ガブリエルがいつまでも戻ってこないのが気がかりだった。


「ガブリエルのやつ、まだ痩せないんだろうか? ちょっと見てみよう」


ダイエット異世界に行ってみるとガブリエルはすっかり肥えていた。

デブリエルの名をほしいままにしている。


「よぉミカエル。久しぶりだな、どした」


「どしたじゃなぇよ! なんでそんなに太ってるんだよ!?」


「ああ、この世界は魔王によって労働をしいられてたから倒した。

 そうなったらあとは食っちゃ寝の毎日で天国さ」


「こいつ……天使の力をなんてところに使ってるんだ……!」


このままでは天界に示しがつかない。

ミカエルは異世界ダイエットの登録を「イージー」から「ハード」に書き換えた。


「ミカエル、なにをしたんだ?」


「異世界ダイエットの負荷を高めた。これもお前のためだ。

 きっと痩せて戻って来いよ!」


負荷をハードに変えたことで異世界はより限界ぎりぎりの環境になった。

食事もろくに取れないほどの悪環境。


「ガブリエルには悪いがこれできっとうまくいくはずだ」


数日後、異世界を訪れたミカエルは再び絶望する。

待っていたのはデブリエルだった。


「ぶふーー。よぉ、ミカエル」


「なんで……なんでハードにしたのにさらに太ってるんだよぉ!!」


「いやぁ、よく考えたら天使パワーで食事なんていくらでも生成できるわ。

 だからどんな環境になったとしても食いぶちは困らないんだよ」


「お前……それじゃいつまでも天界に戻れないぞ!?」


「戻れなくていいよ、こっちのが自由気ままで楽しいし」


デブリエルはすっかり異世界に慣れてしまっていた。

痩せるどころかさらに肥大してしまっては天界の評判に関わる。


天使が異世界までいったのに痩せないとなれば示しがつかない。


「ああ、もう……どうすればデブリエルを痩せさせられるんだ……」


頭を抱え込んでいたミカエルだったが、ひとつのアイデアが浮かんだ。

それはすぐに実行へ移された。


「私が異世界に行ってほしい? どうして私なの?」


「君じゃないとダメなんだ! 頼むよ!」


ミカエルは必死に頼み込んでハニエルにガブリエルのいる異世界に行ってもらった。

ハニエルの来訪にガブリエルは驚いてたべていたスナック菓子をこぼした。


「ハ、ハニエルた……ちゃん!?」


「久しぶり、ガブリエルくん。なんかずいぶん変わったね」


「変わ……変わってないよ!? ぜんっぜん変わってない!!」


ハニエル到着をさかいにデブリエルは全力でダイエットに取り組んだ。

数日後、ミカエルが様子を見に行くよりも早く異世界からガブリエルは戻って来た。


「天界いちの美人を送り込むなんて卑怯だよ。

 あれじゃ痩せてかっこつけるしかなくなるじゃないか」


「とにかく戻ってこれてよかったよガブリエル」


ガブリエルは元の通常体型に戻ってこれた。

いろいろ気苦労はあったものの結果オーライとミカエルは安心した。


この出来事は天界でもすぐに噂になった。

ミカエルのもとには天使がかわるがわる訪れる。


「異世界ダイエットに挑戦したんだって?」


「ああ、そうだよ」


「それはそれはお疲れさま」


ミカエルは肩をぽんとたたかれた。


「聞いたよ。異世界ダイエットやってきたんだってな」


「まあ天使として体型の維持は大事だからね」


「それにしちゃやりすぎじゃないか?」


「いやいや。あれでちょうどいいんだよ。

 いろいろ大変なこともあったけど結果オーライ。

 もうデブリエルなんて言う人もいないさ」


ミカエルが答えると、天使はきょとんとした。





「え? ダイエットしたの、お前じゃないの?」



ミカエルが鏡を見ると試行錯誤でやつれた自分が映っていた。

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