俺と魔王と異世界生活

もやし

第1話

い日曜日。コンビニでアイスを買いに行った帰り道のことだった。

夏。今は8月の中旬で、皆さんリア充真っ只中。しかし、カイトは違っていた。特にすることも無く、何と無くアイスが食べたくなり最寄りのコンビニに行ったのだが、彼が家に帰ることはなかった。

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俺の目の前にはT字路と女子高生。そしてどこからか聞こえてくる低いエンジン音。いつの間にか駆け出して、女子高生を突き飛ばしている俺。

「いや、これフラグじゃね?」

そう思った時はすでに遅し。視界が回転したかと思うと、暗闇に包まれた。

………闇。ただ広がる闇。何も見えない。でも、暖かい、どこか安堵を与えてくれる闇。

(そうか、俺死んだのか…最期ぐらいい事できて良かったな。)

自分でも分からないぐらい落ち着いていた。何故だろうか。痛みがないから?当然。死んだのだから何も感じないはず。じゃあなんだろう。なんで、こんなに暖かいんだろう…。

……「ハッ!!」

ふと目が覚めた。何故か、巨大なベットの上で寝ていた。

「ここはー…何処だ?」

「やっと目覚めましたか」

振り向くと絶世の美女が立っていた。

「私はアリアドネ。冥界の案内役と、異世界の女神を担当しています」

清らかな水のように透き通った声、長く綺麗な金髪の髪。全てにおいて形容し難い女神はゆっくり口を開いた。

「先ほどは私を助けて頂いてありがとうございました」

「は?」

「いや、あのだから先ほどのT字路で…」

「あー、やっぱ俺死んだんですね笑笑」

「まぁ、あそこで私が轢かれても潰れるのはトラックの方でしたが…」

「まさか、俺死んだ意味なかったの?!」

「はい、ぶっちゃければそういう事になります」

なんだよぶっちゃければって…

「そう、しかし、私の不注意で貴方の命を奪ってしまった。本来なら若い元気な魂はもう一度地球で赤ちゃんからやり直す事になっていますが、貴方は特別に選択肢が有ります」

「ホウホウ」

「選びなさい。異世界転生で、好きな能力や物を持って行くか、もう一度地球で赤ちゃんからやり直すか」

「異世界転生!!」

俺は即答でこっちだった。

「なるほど、やる気があるのはいい事です。では、何を持って行きますか?」

「アリアドネさん、貴方、なんでもって言いましたよね?」

「はい。私に叶えられない事は有りませんから」

来たキタ着た北きたぁー!!

異世界転生!!チート能力!!ハーレム!!ラノベの方程式展開!!

「じゃあ何にでも負けない最強の力を下さい!!」

「解りました。お安い御用です。それでは異世界での生活、充実したものになる事を祈っています」

そう言うと、俺の足元に魔方陣が浮かんだ。これが異世界へのゲートが、と感心しながらこれからの生活に胸を踊らせた。

「テレポーション!!」

相変わらず透き通るような声でそう女神が告げると、俺の視界は再び闇に包まれた。

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俺と魔王と異世界生活 もやし @kakehashiyu

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