9W     王様は偉いんだからね゛


 王城の門が開く、目の前に門番がいて彼らが俺たちを凝視する。緊張の中、俺とハートは身分と用件を聞かれる。入国管理ギルドの者と伝え、王様に呼ばれたことを言うと門番はすんなり中に案内してくれた。


「王様に対して、失礼が・が・が、ないようにしなさい……ねぇね゛ね゛ね゛」


 ハートが俺に、王城の中で歩きながら注意をする。だが、完全に場に飲まれているのか緊張した口調だった。あの王様の存在は高い場所から見下ろしていて、俺はよく知らないのだが、ハートからするとギルド直属の一番上の存在らしい。街のでんきやさん電気工事の管轄で言えば、経済産業省長官……か、あと、お客様は神様……ん? ちょっと違うか、まぁそういう感じなのか。とにかくえらい人が、来いと言うのだから行かないといけないのだろう。


 俺たちは、王城内の螺旋階段を緊張しながらもゆっくり登る。お城の中は豪華な内装だった。俺の住んでいた街とはあまりにも違いすぎる客層だと思いながら、『ここに家電を設置するなら』とか『電気工事をするならこの順路で』とか、色々と職業的に考えてしまうが、やはりどれもスペック的に”業務用クラスの家電を納品することになる”と思った。業務的に設備の設置が俺の中では現実的だが、この世界で、ましてや、王城内では俺の存在も含めて、非現実的なことかもしれないを考えていると、複雑な気持ちだ。


 目の前に豪華な装飾された扉が現れた。左右には警備兵が常駐している。面倒くさい手続きがあったが、俺たちは用件を伝えると通してくれた。


 さぁ!! 緊張の一瞬!


 扉の前には、俺たちに話しかけきた側近と煌びやかな姿の王様が現れた。


「王様は貴方を気に入られたようです、異世界から召還した人材として特例で入国管理ギルド所属とします。なお、このことはご内密にお願いしますよ」


 王様は直接俺たちにはしゃべらずに、側近を介して話しかけるスタイルみたいだ。俺は、特例なのか……? そんなことより俺がなぜここにいるのか、なぜ襲雷人シュライトとが存在したのかが気になり、偉い人なら『教えて偉い人』という言葉もあるくらいだから教えてくれるだろうと思い、目の前の側近に問いただした。


「王国は今、変革期を迎えています。積極的に色々な人材を必要としているのですが、全世界から召還した中には治安を乱す襲雷人もいます。そこで、あなたを召還したと言うことなのです。」


 つまり、俺はこの王国に必要とされて、佐々木さん家から召還された訳みたいだ。この国は、俺の住んでいた場所と常識が違うみたいだが、結果、街のでんきやさん→入国管理ギルド所属という扱いになった。


 しかし、今の俺の身なりが占い師みたいでは何か違う気がする。やはりここはユニフォームがないといけない。調子が出ない。やる気が出ない。商売気がない。

 特例ついでに俺たちのユニフォームを、街のでんきやさん仕様に変えてほしいことを打診した。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る