国連軍が支配するアフリカの小さな街 第一フェーズ

 停止したラジコン戦車・ピューマを回収するために、アラン・チューリング少尉率いる。第61特殊実験小隊が歩いて、噴水のある広場にやってきた。

 そこは広場というより、完全に本当の屠殺場だった。辺りは血の海でぬるぬるしており歩くのも困難だった。

 そして人の形をとどめていない死体しかなかった。

 アラン・チューリング少尉は、フェルマー中尉のライフル小隊を原理主義派から助けたのにもかかわらず、ものすごい軽蔑の目で迎えられた。

 同僚を目の前で惨殺された兵士も多数いた。

 ナードのハードコアとはいえ、チューリング少尉も心得ていて、声を発しなかった。

 しかし、階級上、上位である、フェルマー中尉は、違った。

 フェルマー中尉は弾痕でがたがたになった建物のエントランスに座っていたが、チューリング少尉を見咎めるや、ものすごい勢いで、チューリング少尉のところまで、やってくると、拳で顔を一発殴り、その後、持っていたライフルの銃床でチューリング少尉の腹部を思いっきりついた。

 鈍い音がして、チューリングは「く」の字に曲がって、後ろに倒れた。

「こんな兵器、軍が許しても、人が許さない」

 そう、唇を斬って、血を流して倒れている、チューリング少尉にフェルマー中尉は言い放った。

「もう既に存在している、神は許した」

 唇を斬ったままのチューリング少尉は倒れたまま言った。 


 これは、未必の故意か、本意か、偶然かは誰にもわからないが、フェルマー中尉がライフルの銃床でチューリング少尉の腹部を思いっきり付き倒したとき、チューリング少尉のIFFバッジが同時にライフルの銃床で破損していた。

 ラジコン戦車を回収するために広場に訪れた第61特殊実験小隊の整備分隊の一人が、ラジコン戦車ピューマを自走させるために、ラップトップにUSBで接続されているゲームパッドを通じて、ピューマのシステムをオンにした。

 ゲームパッドの裏のオールアウト・システムは以前オンのままだった。

 何号車か、わからないが、ラジコン戦車・ピューマは、勝手に走り出すとIFFの電波を出していない、アラン・チューリング少尉を無制限に射撃し始めた。

 その場に居た、全員が銃撃の音を聞いて伏せる中、身の軽い小柄なアラン・チューリング少尉は、5.56ミリ、7.62ミリ、12.5ミリ、完全装甲弾、曳光弾、炸裂弾、破砕爆裂弾、榴弾、擲弾、ミサイルすべての火器で、踊らされ、人の形をとどめない状態になるまで、死のダンス踊り続けた。

 

 この兵器システムの運用には、もう少し時間がかかりそうだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

踊る軍神 美作為朝 @qww

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ