第18話 幻術使いのお兄さん

名門会議がひと段落した今、私は白いふわふわしたものがない青い空中を見ていた。先日ロザ・ムーナが出現したというのに空は何も気にしていないそぶりを見せる。毎回毎回ご苦労なもんだよ。天にまで行ってでさえ仕事をしなくちゃいけない人もいるんだよ。懐かしい母の顔いつも天気を管理してくれてるんだろうな。お父さんは何やってるんだろ。財政管理でもしてんのか。でも天にもお金ってあるのか。


『ピロンッタタラ〜』


妙な音がなる。


「舞夢ちゃん、おはようございます。水華です。

今日は学校に行ける日ですよね。」


水華は下から少し遠慮がちにメールを送ってきた。

敬語やめてって言ってるんだけどねえ。「レッツゴートゥースクール」

とふざけて送ったが、「ありがとうございます。ご迷惑をおかけしました。」

とご丁寧に帰ってきてしまった。なんやねんこの少女は!?

朝から驚かされますね。


前を見ながらてくてく歩いていると、『とっ…とっ…とっ…とっ…』変にテンポが遅い足音が聞こえた。目を閉じて神経を集中させる。聴力を蜘蛛の巣のように全体に張りめぐらせる。相手は一人、男だ。身長はまあまあだが私よりは高いだろう。


「こんにちは。少しいいですか」


黒髪に革ジャンそして少し整った顔。バリバリのイケメンって感じじゃないから親しみやすいという理由でモテるだろう。でも、


「ガードが甘い!」


私は敵の隙をついて腹に一発電機魔法を入れた拳で殴ってやった。

男、というかお兄さん?は少し顔を歪めたがすぐに立ち直った。


「うんうん、君強いね!僕も頑張ろ〜」


上から草が降ってきた。残念、私は炎系魔術が得意な炎道家だよ。

降ってくる草を燃やした。


「惜しい!」


そういったやつは私に蹴りを入れてきた。

私だってそんな簡単にいく女じゃないよ。ひょいってかわすと、

幻術を解く呪文を唱えた。


「はいおしまい。幻術得意なんだね。でも私にはかなわないかな〜。

その辺のやつには余裕で通じると思うよ。私を相手に選んだのが間違いだったかもね」


「どっから気付いてた」


「どっから、うーん最初からかな。なんで私が電気系の魔法使ったと思う?

正解は、シビレさせるため。結構強力なの打ったのに全然止まらないんだもん。

だから確信したの。あれは偽物で本体はどっかで操ってんじゃないかなって。

以上、ジャネ〜」


お兄さんに一言以上行って学校に向かった。

間に合うかな。まあいっか。遅れたらあの人のせいにするし、先生私に何も言わないし。別に差別しなくていいのに。でも不利益じゃないし逆に利益だからいいか。


動物園のような廊下を横切り、教室に向かった。

教室の周りの廊下だけ海底のように物静かだった。いつもなら廊下は静かでも

教室からの声が漏れているはずだ。変な感覚を覚えながらドアを開けた。


「「「「「「舞夢ちゃーん!お誕生日おめでとう!」」」」」」


その声と同時にパパパッンと爽快にクラッカーが鳴った。

そういえば今日は私の誕生日だった。最近忙しすぎて忘れていたなあ。


「舞夢ちゃん、みんなからのプレゼントです。」


「お、みんなありがとう」


赤い包みを開けてみると、そこに入っていたのは小さなペンダントだった。

澄んだ赤いハートの形をしたルビーのペンダントだった。


「わあ、かわいいみんなありがとう。ルビー探してこんなきれいな形にするのに相当魔力必要だったでしょ。ありがとう」


「いえいえ、でもよく手作りだって気づいたね」


「だってみんなの魔力が入ってるんだもん、ルビーの中にちゃんと残ってたよ。

それぞれ特有の色をしてる。」


そう言うと、みんなは感心した目つきでこちらを見てきた。

みんな無意識の間に魔力を入れすぎちゃったみたいなんだよね。

これが見えるようになったのは確か8歳くらいの時だったかな。



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