第3話 2120/3/18

昨日は何もなかった。今日から新しい1週間が始まる。

「浅尾君。どうだった?母上の様子は。」事務局長は何とも形容しがたい微笑んでいるようにも、深刻そうにも見える顔で話しかけてきた。

「意識不明で、意識を回復しても記憶があるかどうかという話でした。でも、良いんです。母の友人達が見守ってくれるようなので。」

「君はなんて冷静なんだ。普通は狼狽えてしまう。死に対しては恐怖心を抱いて、もう人の死を見たくないと。それを受け入れようとしているなんて。もしや、死に慣れているのか?」

「ご冗談を。死に慣れることなんてあるわけないじゃないですか。いくら死を経験したって愛する者との別れは辛いものですよ!でも、そうでもしないと学校に迷惑がかかりますから。」

「怒らせてしまったようだね。うん。死に慣れることなんてあるわけない。でも、無理はしないでくれよ。」

「はい。事務局長、無理しない程度に尽力させて頂きます。」


この時期は証明書などの発行が多い。在学証明書や、調査票などの証明書を発行する。僕はこの仕事を駅の券売機だと思っている。高校という駅から大学といういわば最終ターミナルに向かっての切符を発行する仕事だと思っている。

勿論、受験票と合わせて切符の役割をするので、これは勘合かもしれないな?

切符を手にして改札を抜けられるが、きっと満員電車だろう。そこで乗れなかった人々もいる。僕は運良く大学を卒業することが出来た。今度は駅員として見守りたいと常々思っている。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る