ネット海賊団はニートになるまでの話

ちびまるフォイ

勝手に海賊の財宝もってかないで!

「船長! 船長! 財宝を見つけました!」

「ようし、よくやった!」


ネット海賊船の船長は、ネットの海に転がっている財宝を手に入れた。


「ふふふ、この情報財宝は我らネット海賊団しか手に入れていない。

 そう我らこそが最高の海賊団なのだーー!」


「いえ無料公開されてますけど」


「は?」


「船長がいましがた手に入れた情報財宝、すでに無料公開しています」


「ええええええ!?」


確認すると、ネットの財宝島にはすでに公開されていた。

これではせっかく見つけたお宝なのにまるでありがたくない。


道端の小石を拾って物珍しそうにはしゃいでいるだけの気分。


「な、なんで公開されてるんだよ!? 我らが一番乗りだろ!?」


「海賊団の中に内通者がいるんでしょうね……」


船長はもともと気弱なので犯人探しをする気になれなかった。

したところでネット海賊船とは閉鎖的なコミュニティ。

内通者を探したことで、船員との信頼関係が失われては元も子もない。


「どうします、船長」


「どうするといっても……このままじゃいくら我々が情報財宝を見つけても

 たちどころに無料公開されて価値がなくなるんだろう?」


「ほかの海賊団の情報も、この財宝島で無料公開されてますね……」


船員は財宝島で公開されている財宝の数々を見ている。

どこの海賊団にも内通者がいて、財宝を島にアップロードして無料公開されているらしい。


「ほかの海賊団の情報も……それだ!!」


「どれですか? 船長」


「我々は海賊団だ! その財宝島を襲うんだよ!

 そこにはほかの海賊団の財宝もあるということは……宝の山じゃないか!」


「なるほど!!」


こちらの情報財宝を回収されてしまうのはしゃうだが、

ほかの海賊の財宝も回収できるようになれば、最高のネット海賊になれる。


ネット海賊団はさっそくネットの海を越えて財宝島へと向かった。

けれど、財宝島に近づくにつれネット海の波は高くなった。


「せ、船長!! もう引き返しましょう!! これ以上の航海は無理です!!」


「このまま引き下がれるか! 宝の山は目の前にあるんだぞ!!」


「流れる情報が多すぎてこちらが耐えきれません!!」


財宝島に寄せられる多種多様な情報は荒波となり、財宝島に海賊を寄せ付けない。

ほかの海賊も、ネット海賊団と同じことを考えているのか財宝島に挑戦するも

あまりの荒れ模様に耐えきれずすごすご帰ってしまう。


「くそ……! 財宝島さえ乗り込められれば……!

 誰よりも情報財宝を手に入れられる海賊団になれるのに……!!」


「船長! もう限界です!!」


ネット海賊船も荒れ狂う情報の波を処理できず限界が来ていた。

コア2の海賊船はもう耐えきれない。


「船長、もうあきらめましょう。儲けがなくても船があればいいじゃないですか」


「……しかし……あ! そうだ!!」


船長は何かを思いついたように海に投網を投げ込んだ。


「さぁ、戻ろう」


「いいんですか船長。さっきまであんなに必死だったのに」


「いいんだよ。これでネット海賊団は安泰だ」


ネット海賊団は財宝島を諦めて戻っていった。





それからしばらくすると、船員は飛び込んでくる情報に驚いた。


「せ、船長! 大変です! どんどん財宝が飛び込んできます!」


ネット海賊団のもとには毎日大量の財宝が飛び込んで大儲け。

もはや自分でネットに漕ぎ出して海賊行為する必要がない。


「ふふふ、やっぱりな。狙い通りだ」


「船長いったいなにをしたんですか!?」



「広告投網を財宝島に投げ込んだのさ。

 財宝島を目指してやってきたいくつもの海賊船が広告を踏んでくれる。

 これで我が海賊団も安泰さ」


「なんか本当に網(ネット)海賊ですね」


船員たちははどんどん舞い込んでくる広告財宝を見て喜んだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ネット海賊団はニートになるまでの話 ちびまるフォイ @firestorage

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ