2.「マエダとトードリ」
さっそく明くる日の日曜日の夕方五時で、ちゃちゃ、っとお父上にアポとったモモコの仕事の早さには、ある意味新鮮な発見をした思いだった。
で、土曜日の夜もエッチして、日曜の昼前まで寝てた僕らは「成城」のマリコんちに行くのは夕方だからって、マリコを連れて湘南の海を散歩することにしたんだ。
「片瀬海岸」のコンクリートの堤防の上に腰かけて、「江ノ島」の向こうにぼんやり見える富士山を二人して眺めてた。
——湘南っていいよなぁー 関西人にはサザンとかでしか、知らねー世界だったよ
——テツヤって、歳いくつよ、サザンって、あのマエダか?
——それは、チューブだろっ
——夏しか出てこない、おっちゃんッ!
(ってか、マエダを知ってる、モモコは、いくつなんだ?ってハナシで)
なにが、可笑しいのか、また腹を抱えてケラケラ笑ってる、モモコ。
モモコの長い髪が、初夏の湘南の風に揺られて僕の鼻をくすぐると、甘いシャンプーの匂いがして思わずクンクンしたけど。
モモコが僕のケツにタイキックの一撃を見舞うのは、なかば挨拶みたいなもんで、今となっちゃソレがないと物足りない、っていうか、ケって!とか言いたくなる僕は、きっとドが三つほど付くドM男なんだろうと思う。
そんな僕を、モモコはなんでカレシにしてんだろ——とか、時たま思うよ。
——テツヤ、きょう、ダイジョーブだろうなッ?
——ああ、出たとこショーブだな
——ワタシは、だッ、テツヤの出たとこ勝負で運命左右されるのかッ、あ?
モモコの眉間にシワが二本。ヤバい。話変えよっと
——そういや、オヤジさんて、なにしてるヒトだっけ
——なに、って、カタギだよ
——いやいや、カタギかヤクザか、二択みたいなじゃなくてー
——ヤクザかもしれんなッ
——おいっ 帰りたいぞ、オレ
モモコは、海風に靡く後れ髪を耳に掛けながら、小首傾けて僕の顔を覗き込む。あぁー、ダメだってその角度。
——トードリだよ、ウチのオヤジ
——ああ、トードリさんか……って、あのトードリっ!?
——ああ。漫才やってるヒトじゃない、あのトードリ
——(それ、オードリー) ど、どこの?
——ミツトモ
——ゲェーっ!!!!!
また、やらかしやがった、このコ——。
「三友銀行」ってあの、日本三大メガバンクの「三友銀行」のことで、しかもだよ、しかもっ!!
——ミツトモ、ってオレの銀行じゃん
——ああ、そ、だな。うん、まっ、ガンバレよッ
僕は、この時ほど、モモコのケツにタイキックの一撃を加えてやりたいと思ったことはなかったね。(できるわけないけど)
——実家の会社、手伝う、って…アレなんだよっ!
——だから、ワタシも、ミツトモだってばッ
——どこっ?
——秘書室……、トードリの
もうね、すべからく、こうなんだよね、モモコって——。
僕は目眩がして、パタンって、直角にそのまま後ろに倒れたい気分だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます