第16話

 帰り道、ホテルまで歩ける距離だったので四人でなんとなく歩いた。

 先頭を歩いていたノイズが父親を振り返る。

「今日、とても楽しかったんです」

「そうか」

 父親は微笑んで、息子の肩を抱いた。

「お前はもう子供じゃないのかもしれないな」

 ノイズは誇らしげに、照れたように、笑った。

 そうか世界はこんなに面白かったのか。



 ホテルに戻るとアマテラスはサタンをホテルの入り口近くのバーに誘い、ホテルの部屋に戻るためにエレベーターに乗ったのはホスセリとノイズの二人になった。

 エレベーターはゆっくり昇る。

「楽しかった?」

「え、あ、楽しかったけど」

 へへ、とホスセリは笑った。無理やりノイズの肩を抱いて

「今度メンバー連れてお前ンち遊びに行くかラな」

「え!?」

 なんだよー友達になったロ? とからかう顔でノイズの顔を覗き込んだホスセリは、少しだけ真摯な調子でこう言った。

「それはそれとして、今日一日の礼だ。

 少し俺がワルイこと教えてやれるよ?」

「そんな……」

「あっれ? 聞きたいことないの?」

 ノイズはふっとライブハウスの会話を思い出した。

「父は僕に何を隠しているんでしょうか?」

 チンっとエレベーターが目的の階数を表示し、ドアが静かに開いた。

「……俺が言っていいことかわかんないけど」

 かしかしと頭をかいたホスセリは唸った。

「でも……知ってもいいと思うヨ?

 なんていうか

 なんていうか

 あんたの姉ちゃんが可哀想、ダ。あの娘本当にお前が生まれるの楽しみにしてたって聞くし……」

「姉……は」

「一人欠けてると思う、お前の教えてもらったキョウダイの名前」

 エレベーターのドアを右手で抑えて、ホスセリは一つため息をつき、ノイズを見た。

「アルトラ。

 それがお前の……魔女狩りに殺されたお姉さんの名前で」

 少しだけ唇を噛んだホスセリにノイズは首を傾げる。魔女狩り。それで姉を失っていたのは予想外だがそんなに意外にも感じなかった。だってただしく姉なら魔女であろう。

「なんで魔女狩りなんかに捕まったか。

 当時ちょっとした噂があって」

「なんです?」

「君の父上が見捨てたからだと」

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