夢命

@masaya0628

第1話

「たっちゃん、プリンあげる。」

「えー?いいの?!」

うん…??!!!?ここは、どこだ?白を基調とした部屋、消毒液の臭い、カード式のTV…病院??

「うん!お母さんがたっちゃんと食べなさいって2個買って来た!」

誰だこの子達は??

「やったー‼○○ちゃんありがとー‼」

「えへへ」

そしてなんだこのハートフルな光景は

「○○ちゃん明日退院するんだよね。看護師さんがいってたよ!」

「うん…」

「よかったね‼」

「うん…でも少し寂しいな…」

「えー!!!何で!?僕なんて早く退院して友達とサッカーしたいし、お母さんのご飯も食べたいし!!病院なんてこりごりだよ!!○○ちゃんって変なんこと言うねー」

変なのはお前の頭だ少年!!君に会えなくなるから寂しいって遠回しにいってるんだろ!!乙女心に気づけ!気づいてくれ少年!

そんなことよりこの子達は、誰なんだ!!

ベッドに少年が寝転んでるのを見るとこの部屋は少年の病室なのだろう。

俺は、少年の名前を確認するため病室のドアを確認した。

麻野 竜也

……わぁお!!!!!!同姓同名!!

奇遇だな少年!!運命だな…

あれ?あれれ?…

少年の肩を叩いたはずなのに俺の手は、少年をすり抜けベッドに突き刺さった

あれ?あれ?あれれ!!!!!!!??!

俺いつの間に死んだの?

記憶にございませんが!?

確かに社会に絶望していた時期も人並みにありましたしストレスが溜まりにたまって死にたいと思ったこともありましたが死んだ記憶なんかございませんけどー‼

それに今どちらかと言うと甘い時間だったじゃん‼

少年少女のラブストーリーだったじゃん。

それが何で少年漫画みたいに「はい、君今から地獄行きだから」

って感じになってんのー!!

「たっちゃのばか!!もう知らない!!」

ほんとに馬鹿だよ!この状況が馬鹿だよ!

「何で○○ちゃん怒ってるんだろ?変なのー」

怒るだろ!!そして俺も怒るだろ!!何で死んでるんだよ!

頼む夢であってくれ…

そう願い頬を思い切りつねった。

痛くない…痛くないぞー!!!!!!

…よかった夢か…

くそ!驚かせやがって!!

…ってことは、このあほみたいに鈍感な麻野竜也は、俺??

ピピピ

目覚ましのアラーム音が部屋中に鳴り響く

「くそいいところで!!!

あーあ変な夢を見たな~」

大きなあくびをしながら起き上がった。

ピンポーン ピンポーンピンピンピンポーン

はぁー

あさはやくからご苦労なこたった。

全く何の嫌がらせだ。

こんなユニークなベルのならしかたは、編集部の俺の担当中畠なぎさ意外いない

「麻野さん!今日原稿の締め切りですけどあがってますか?いやまぁできてますよね!

先週私にあれだけ怒られたんですから!

もしもまぁ今週も出来てないなんてことがあったらただじゃ起きませんよ!」

あー朝からうるさい

まるで借金の取り立てだな

「中畠さん、声が大きい、うるさい、近所迷惑、頭に響く、はい原稿、では、編集部へお戻りください。」

そういいドアを締めようとすると

ガッ

さすがだなこの人

畠中は、ドアの間に足を入れ

「待ってくださいよ!つれないですね。担当にお茶くらいだしてもバチは、当たりませんよ。」

「いや作家にもプライバシーというものが…」

「毎回〆切守らないような人にプライバシーを主張するしかくありません。」

お互い笑顔で牽制しあったが毎回のごとく根負けし、渋々中にとおした。

「相変わらず殺風景ですね。漫画家の家ってもうちょいぐちゃっとしてるもんですよ!

漫画や資料もないしちゃんと仕事してるのか心配になる部屋ですね。」

「相変わらずさらりと失礼なことを言うぶしつけな人ですね!原稿読んだらさっさと帰ってくださいよ!」

「そんなに、早く私を追い出そうとするなんて…女ですか?麻野さんから女の臭いがする、私と言う女が、いながら浮気者、不潔、わさび好き。」

「最後のやつは、関係ないでしょ!だいたいわさびそんな好きじゃないし。

そんなこと言ってるからいつまでたっても彼氏ができないんですよ!

中畠さん人からよくモテそうだね?って言われません?」

「言われますけど…」

「そうでしょ!そうでしょ!だいたいねそんなに整った顔と抜群のスタイルをもちながらモテないことじたいおかしいんですよ!

もぉ、性格に問題があるとしか思えない。」

「えっまさかのセクハラとパワハラの同時攻撃ですか?そんなこと言ったら麻野さんだってそうじゃないですか!」

「はー…」

「うゎっおっきいため息!幸せ逃げますよ!

ほら吸い込んで。すーーーっ。」

「もぉ、自分は、中畠さんで、女性関係は、お腹一杯なんですよ!」

「キャー、セクハラ、パワハラからの告白

これがギャップというやつですね。

いやでも、見方によったらセクハラか?

まぁいいや、困っちゃうなそんなこと急に言われても。」

「もぉ、担当変えて貰おうかな…

さっさと、読んで編集部帰ってください!」

「うゎびどっ!はいはい。では、読ませて頂きます。」

本当に毎回読むまでが長いんだからこの人は…

急に静まりかえった部屋は妙な緊張感がはりつめている。

さらに先程まで、お調子者がまるで別人のように原稿を読む姿にドキッと心臓が脈打つ

これが本当のギャップだよ中畠さん!

「麻野さんの作品は、毎回よく練られてて

感心させられます。

ここで初めのあの時の設定と繋がるんだとか

例えば今週号の女の子が殺されるシーンの通り魔

初めに出てきた隣町のまだ捕まってなかった通り魔ですよね?

こんな風にえっ!て驚くことは、多々あるんですけど…

なんか…そう!甘さがたりないんですよ!

つまりラブがたりないんです!

どんな人気漫画にも甘さが随所に入ってくるし今時ギャグ漫画にすら甘さが入ってますよ!でも、麻野さんの作品には、それがない。来週からとは、言いませんが今後そういったことも折り込んで行けばより人気漫画になるかもしれませんね!」

「ラブですか…それは、自分も前々から感じてたんですが…

いかんせん、あまり経験がないもので。」

「何を言ってるんですか!まだ麻野さん23でしょう?今から経験したらいいじゃないですか!じゃあ、私は、これ以上さぼってると編集長に怒られるので!

何かあったら電話してください!」

さぼってる自覚あったんだ…

中畠は、そう、言い残すと颯爽と部屋を出ていった。

はー嵐は、過ぎ去った。

何だか疲れたな

そう思いソファーに寝転がる。

うーっっ今日は、いい天気だなぁ

心地よい日光、心地よいそよ風さぁて今日は、何するかなー

「〇〇ちゃんトランプしよう!」

「やらない。」

「〇〇ちゃんなんで怒ってるの?僕なんかしたかな?」

「知らない!あっち行って」

「変なのー」

あのまま眠ってしまったのだろう

また同じ夢の、続きをみてる。

「じゃあ部屋に戻るけどプリンのお返しだけ置いとくね!」

「……いらない、もって帰って…」

少女よ君の言葉は、届いてないぞ。

そして俺の馬鹿あほ、戻って謝れ!

「ってたっちゃんもういないし…

あーあ寂しいなぁ…

たっちゃは、私とお別れしても寂しくないのかな。」

寂しいよ!すごく寂しい!大人になったたっちゃんは、すごく寂しいよ!

「あれ?これ私が前好きって言ってたお菓子だ…

たっちゃって本当に人の話聞いてるのか聞いてないのかわかんないや…

ん?」

あーあ少女の気持ちを考えるといたたまれない。なんで俺がもやもやしないといけないんだ

いやぁあっちも俺だから…

「ぐすんっっ…えへへ…」

少女は、涙を流し笑った

少女の手には

手紙!!!

「〇〇ちゃんへ、

あしたでたいいんよかったね。

ぼくもはやくたいいんしてびょういんのおそとで〇〇ちゃんとあそびたいです。

でも、〇〇ちゃんのいえはぼくのいえからとおいばしょだからなかなかあそべないけどずっとともだちです。〇〇ちゃんがさきにたいいんして寂しくなるけどまたあいたいからバイバイとは、いいません。またね〇〇ちゃん」

えーー

俺グッジョブ!!

今まであの態度をとっといて手紙!

やるじゃないか小さい俺!

平仮名だらけで下手くそな文書だけど

きゅんきゅんしたぞ!

ピンポーンピンピンピンピンポーン

ダンダンダン

今でしょ!!

いやいや

今じゃないでしょ!

いいところで現実に引き戻される

扉を開けると先程帰った中畠なぎさが立っていた。

「麻野さん!すいませんケータイ置いてなかったですか! …ってなんですかそのまたお前かよ見たいな顔は!」

「今すごくいいところだったんです。もーすごくいいとこ…」

「何訳のわからないこといってるんですか。

とりあえず部屋入りますよ!再びお邪魔しまーす!」

「あっ勝手に!」

「あーあったあった!良かったー!

じゃあ私再び編集部に戻ります!」

「はいはい。早く戻ってください。そして一生帰って来ないでください。あーあいいとこだったのに。すごくきゅんきゅんしてたのに。」

「びどっ。

えっ!麻野さんが、キュンキュンなんて、珍しいですね! まぁとりあえず何をしてたかわからないですけど邪魔したお詫びといっては、なんですが私の一番好きなお菓子上げます。

ほいっ」

そう言って中畠は、お菓子をこちらに投げた。

コアラの絵が書いてあるチョコレート菓子だ

「奇遇だなぁ…」

「うん?それ私昔から好きなんです!麻野さんもすきなんですか?そのお菓子単純に美味しいってだけじゃなくて私の初恋の味なんです!」

「初恋ですか?」

「はい!入院してるときに出会った子なんですけど、私が8才ぐらいだったかなー、その男の子がこのお菓子と折り紙で折った手紙をくれたんです!ずっごく嬉しくてそれから、もっとこのお菓子が好きになって今でも持ち歩いてるんです!あっちなみに手紙は、未だに額に入れてとってますよ!」

「へーまぁべつに聞いてないですけど作品の参考にします。」

「あーあ麻野さんは、たっちゃんとは、大違いだなぁ!

じゃあ私は編集部戻るんで!来週も原稿よろしくです。」

バタン

音を立ててドアがしまった。

お前か!!!

初恋の相手まさかの担当かよ!!

あの甘い時間を紡いだのが君とだと思うとがっかりしたよ

名前も顔も覚いだせなかったけど…

えー

偶然だか運命だかよくわからないけど

糸が赤だとは限らないということか

今回の糸は腐りきった黒だ黒


初恋の人が今の好きな人では、ないし

初恋の人が今好きな人かもしれない

前者は、俺で後者はきっと中畠さんだろう。


言わないほうがいいこともある

知らないほうがいいこともある

俺はこの秘密を決して伝えないだろう

その方がお互いのためだ

「夢の続き見れるかな…」

俺はそう呟き目を閉じ再び眠りについた。


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