第9話 静かな戦い

ジークは軍から総統の首を取ってくるように言われていた。無論そんな事は出来る訳は無かったがこれを逆手に反撃に出ようとしていた。

『総統、火星の今の全戦力はどの程度になりましたか?』

ジークは訊ねた。

『正直な所我々全員を含めても200人位なんだが、軍内部に他に協力者はいないかね?』

『俺の直属の部下20人は従ってくれます。既に彼等には動いて貰っています。現在火星にて稼働する大型兵器の無力化。地球帰還に必要な船の手配を進めています。』


『わかったご苦労。では軍には我々2人で向かうとしようか。大勢ではかえって警戒される、非戦闘員の安全確保もしたい。やれるかい?ジーク。』

『勿論です。総統こそ戦闘を忘れてはいませんか?』

『君程じゃあないが足手まといにはならないよ。』

総統は微笑みながら腰のナイフに手を触れた。


『出発は明朝6時。全ての作戦は同時進行で行う。船の確保が完了次第、非戦闘員はこの船を破棄し乗り換える。それまでに我々は軍の制圧を行い時間を稼ぐ。後は政府の管理タワーを無力化して火星を離脱する。』


『では、ジーク予定時刻迄待機とする。』

『了解しました。』


その頃軍内部は混乱していた。

何者かがデータベースに侵入し内部のデータが外部へ流出していたのだ。そこには民間人の怒りを買うような内容のデータもありマスコミや一部暴徒化した民間人で朝から門の前は騒がしかったのだ。


『くそ!何でこうなった!早く奴等を鎮圧しろ!』

焦りながら罵声を飛ばすこの男。ジークに命令を下した火星軍の最高責任者。

マーク・シルクといった。

彼は地球では名門のシルク家の一族の出であったが余り優秀では無かったが為に火星へ飛ばされたのだ一族の面汚しだと幼い頃から言われ続けたせいか性格はかなりひねくれていた。

彼は暴徒化した民間人を皆殺しにしろと言ったが他の幹部に止められて焦っていた。

そこへ報告が入ったのだ。

『ジークか?繋げ。 …上手くいったのか?奴は死んだのか?』

『はっ!反地球連合総統 紅の霧討ち取りました。明日にはそちらへ戻ります。』

『そうか!良くやった!だが戻り次第直ぐにやってもらいたい任務がある。民間人の制圧だ。出きるな?』

マークはニヤツキながら電話ごしに訊ねた。

『了解しました。帰還次第排除に当たります。ご安心をでは明日吉報をお待ち下さい。失礼します。』



マークは高笑いをした。これで邪魔者はいなくなりジークが戻ればまた元通りの暮らしが待っている。そう思ったからだ。

贅沢な食事、酒、家、金、火星の全てを握った男の最後の1日が終わろうとしていた。



ジークと総統は準備を終わらせ明日に備えて早めに休んだ。


朝日がまだ出ていない薄暗い中、火星軍との戦いが始まろうとしていた。


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スチーム アウト 響渚 @hibikinagisa

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