スランプからの脱却/Breakaway from slump

長束直弥

「?」

「あなたは、Web小説投稿サイト『カクヨム』に小説を投稿しているのですね」

 イタリア人のアニマリ・テスミ准教授は、私を見つけるなりそう話しかけてきた。


「……ど、どうしてそれを?」

 いったい誰が喋ったのだ。


「読ませてもらいましたよ」

 テミス准教授は、笑みを浮かべている。 

「でも最近、更新が途絶えていますよね」


 痛いところを突かれた――。

 そうだ。そのとおりだ。

 書けないのだ。

 アイデアが浮かばないのだ。

 いや、息詰まっているのだ。

 悪く言えば、遣る気さえ失せてきているのだ。


「ええ、最近何だかに陥っているというか……」

 

「スランプですか……、大変ですね。それなら良い方法がありますよ」

 テスミ先生は、私の目を見てそう言い放った。


「えっ? それは、どのような方法ですか?」


「そこから抜け出す秘策は……」


「それは?」

「それは〝逆転の発想〟をすることですね」

 

「ぎ、逆転の発想? 具体的にはどのようなことを……?」

 私は、彼の言う逆転の発想という意味がよくワカらない。


「例えば、私の名前を逆から読んでみてください」


 唐突に何が言いたいのだ?

 彼の名前は、アニマリ・テスミだから……、ミ・ス・テ……。

 ミステリマニア?

 なーんだ。ただの言葉遊びではないか。


「どうです。意味のある言葉になるでしょう」


 それはそうだが――それが何だと言うのだ?


「つまり、スランプからの脱却ですよ」


 ――えっ?


 まだ、続くのか?

 彼はいったい何が言いたいのだ?


「逆転の発想をして『カクヨム』を逆に読むのですよ。そうすることで、今のあなたに一番必要なものが見つかりますよ」


 また、ワケのわからないことを……。


「…………」


 ――あっ!


 |無欲化……。



          <了>





(※ 実際問題としてを一言で言うとすれば、それは『努めて』ということではないでしょうか)


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スランプからの脱却/Breakaway from slump 長束直弥 @nagatsuka708

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