後篇

事態は、以外に早く動いた

越前朝倉と道三が同盟したのだ

もはや頼芸に尾張勢に頼るしか道はなく、信秀も

(一息ついて油断してる所を叩くにゃ)

と速攻に転じた

ところが、道三は、城下町であるいのぐちの町自体を罠だらけの要塞に変えてしまったのである

さらに、美濃を攻めた隙をついて、今川いまがわ氏が尾張本国を攻めてくる事態となり、尾張勢はついに撤退する

(余談だが、後に真田さなだ昌幸まさゆきも同じ策で徳川とくがわを撃退している)




散々な目にあって退却をしている信秀は、ふと敵の中に眉目秀麗な黒猫を見た

尾張に戻った信秀は、腹心である平手ひらて政秀まさひでに聞いた

『そういえば、道三はどんな顔なんにゃろの?』

『丹波からの報告ですと、見目麗しき黒猫だそうですにゃ』

『うにゃ…』

と、その時

『ぶぎゃー、にゃ!』

『誰かいないかにゃ!』

と騒ぎが起きていた

『ああ、殿、ちと失礼しにゃす』

『ふむう、信長のぶながは相変わらずのようにゃの』

『は、は、傅役もりやくとして恥ずか…』

『よいよい、せがれにもなにか憤ることが、あるのにゃろ』




さて、こうして痛い目にあった信秀は、道三の娘と信長をめとらせることで、美濃情勢から撤退し、道三と同盟を結ぶ事になった

頼芸は尾張からも追われ、流浪の身となる

そして、天文てんもん20年、織田信秀はその生涯を終え、息子信長が、父とは違う形で天下を目指す事になるのだが、それは別の話である

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