金のちんこ、銀のちんこ

愛 絵魚

金のちんこ、銀のちんこ

「私を美少女にしてください」


「なんじゃと!?」


 むかし、女の子に縁の無いままいい歳になってしまった木こりが、森に囲まれた湖のほとりに住む魔法使いのもとを訪れて言いました。突拍子もない願いに魔法使いは眼鏡がズリ落ちそうになるほど驚きました。


 言葉を失って黙り込んだ魔法使いに、女の子に縁の無かった木こりは自分が生まれ落ちてから今日までいかにモテなかったかということを訥々とつとつと語りました。それからどうすれば女の子と縁ができるのか必死に考えたこと、無理そうだったこと、それなら自分自身が可愛い女の子になればいいのだという結論に達したことなどを話しました。


 魔法使いの方も女の子に縁がなかったからこそ魔法使いになってしまった男でしたので、木こりの虫のいい願いに始めはムッとしました。しかし、木こりの非モテ話を聞くととても他人事とは思えません。どう考えたら自分が可愛い女の子になるなどという結論に達するのかはよく分かりませんでしたが、それでも結果として女の子と縁ができることには違いないなと納得してしまいました。


 そこで魔法使いはズリ落ちかけた眼鏡を中指の先でクイッと押し上げると、魔法で木こりを目の覚めるような美少女に変えてやりました。特に意図したわけではありませんが、魔法使い好みの活発そうな小悪魔系褐色美少女です。


 魔法使いは自分がもうちょっと若かったらな、いやいやこいつの元はあの木こりだぞなどと思いながら、取り外したちんこを美少女になった元木こりに手渡しました。男性としての要素を凝集されたそのちんこは、取り外されたにも係わらずとても元気です。


「こんなもの返されても困るんですけど」


「わしこそそんなもの要らぬわ。そこの湖にでも捨てればよかろう」


 美少女になった元木こりはそうですねと頷いて、早速魔法使いの館を出ると目の前の湖にちんこを放り込みました。


 すると湖の中から清楚な雰囲気をまとった美少女が現れました。何と女神様です。女神様は手にしていたぴかぴかに光る本物にそっくりな金のちんこを見せました。その表情は一見穏やかに微笑んでいるように見えましたが、何故かこめかみに青筋が浮いています。


「貴女が投げ込んだのは、このちんこですか?」


「違います。わたしが投げたのは、そんなに立派なちんこではありません」


 美少女になった元木こりがそう答えると、女神様は次に銀のちんこを出しました。


「では、このちんこですか?」


「いいえ。そんなにきれいなちんこでもありません」


「では、どのちんこでしょう?」


 美少女になった元木こりは恐る恐る女神様の頭の上を指差しました。


「……それです」


 そこには先ほど美少女になった元木こりが投げ込んだちんこが、ちょんまげのようにちょこんと乗っかっていました。


「そうですか、貴女は正直者ですね。正直な貴女にはご褒美をあげましょう」


「ぎゃ、そこちが、んぐぐっ」


 女神様は金銀リアルの三本のちんこを美少女になった元木こりにオラオラと押し込むと、清々せいせいしたという顔をして湖の中へ帰って行きました。


 女神様が去った後、物陰からこっそり見守っていた魔法使いはその場に倒れた美少女になった元木こりに、大丈夫だろうかとそっと近付きました。しかし、とんでもないことをされた割に美少女になった元木こりの顔に浮かんだ表情はどことなく満足そうです。


 それを見た魔法使いは、何とは言いませんがいろいろとうらやましくなりました。美少女になった元木こりを館に連れ帰って介抱した魔法使いは、今度は自分自身に魔法を掛けて美少女になりました。特に意図したわけではありませんが、美少女になった元木こり好みの、眼鏡の似合う文学少女系色白美少女です。


 美少女になった元魔法使いは自分の身体から外れて転がっている元気なちんこを手に取ると、早速外へ出てそれを目の前の湖へ放り込みました。無事に目を覚ました美少女になった元木こりももちろん物陰からこっそり見守っています。


 すると美少女になった元木こりの時と同じように湖の中から女神様が現れました。その頭の上にはやはり美少女になった元魔法使いが投げ込んだちんこが、ちょんまげのようにちょこんと乗っかっています。こめかみに青筋を浮かせた女神様はさっきより幾分引きつった笑顔でぴかぴかに光る本物にそっくりな金のちんこを見せました。


「貴女が投げ込んだのは、このちんこですか?」


 美少女になった元魔法使いはそのちんこの金の輝きに目がくらんで、ついそうですと答えそうになりました。魔法使いの暮らしは素材だの触媒だのと何かと物入りなのです。しかし、美少女になった元魔法使いはぐっとこらえました。何せ相手は神様ですから、うっかり嘘をけば何をされるか分かったものではありません。ここは美少女になった元木こりと同じようにするべきなのです。


「……違うのじゃ。わしが投げたのは、そんなに立派なちんこではないのじゃ」


 美少女になった元魔法使いがそう答えると、女神様は次に銀のちんこを出しました。


「では、このちんこですか?」


「いやいや。そんなにきれいなちんこでもないのじゃ」


「では、どのちんこでしょう?」


 美少女になった元魔法使いは神さまの頭の上をビシリと指差しました。


「それじゃ!」


「そうですか、貴女は正直者ですね。正直な貴女にはご褒美をあげましょう」


「ぎゃ、そこちが、んぐぐっ」


 女神様は金銀リアルの三本のちんこを美少女になった元魔法使いにオラオラと押し込みながら、ぶちぶちと文句を言いました。


「貴女たちは次から次からこんなものを放り込んで何ですか、嫌がらせですか、嫌味ですか。それともまともな男神おとこに縁の無いわたくしに対する同情ですか。同情するならちんこをくれなんて誰が言いましたか。まったくもう、男神おとこなんて、男神おとこなんて、男神おとこなんて!」


 まともな男神おとこに縁の無い女神様の文句は途中から明後日あさっての方へ向かっていました。多神教の男神といえば乱暴者のうきん浮気者のうちん自己陶酔者なる同性愛者あにき女装癖おとこのこと相場が決まっています(※偏見ですが多分大体合っています)。どうやらまともな男神おとこに縁の無い女神様は結構なご苦労をなさってこられたご様子です。


 ともあれ、ほとんど八つ当たりではありますがとりあえず鬱憤を晴らしたまともな男神おとこに縁の無い女神様は、清々したという顔をして湖の中へ帰って行きました。


 まともな男神おとこに縁の無い女神様が去った後、物陰からこっそり見守っていた美少女になった元木こりはその場に倒れた美少女になった元魔法使いに、大丈夫だろうかとそっと近付きました。しかし、とんでもないことをされた割に美少女になった元魔法使いの顔に浮かんだ表情はやはりどことなく満足そうです。


 美少女になった元木こりは美少女になった元魔法使いを森の館に連れ帰って介抱しました。美少女になった元魔法使いはじきに目を覚まし、二人は改めて相手を見つめました。容姿についてはお互いにストライクゾーンど真ん中です。こんな女の子とお付き合いしたかったのです。でも困ったことに、目の前の美少女がついさっきまで男だったということも分かっているのです。


 どれくらい見つめ合っていたでしょう。二人は同時に口を開きました。


「あの」


「のう」


「「……」」


 また二人の間に沈黙がりました。やがて美少女になった元魔法使いは譲るとでも言うように小さく首を傾げます。その仕草に見蕩れながらも、美少女になった元木こりは言いました。


中身かこのことは水に、そこの湖にでも流してしまいませんか」


「そうじゃ、その通りじゃ! 大事なのは見た目いまじゃからな!」


 美少女になった元魔法使いは迷わず大きく頷きました。美少女になった元木こりの言葉は、正に美少女になった元魔法使いが口にしようとしていたことだったのです。想いを通じ合わせた二人はひしと抱き合い、柔らかな感触と甘い匂いに包まれながら自分たちが間違っていなかったことを確信しました。


 現在みためが美少女であれば、過去なかみなど些細なことなのです。


 相手が何を望んでいるのかは自分のことでもありますから十二分に分かっていましたし、幸いなことにまともな男神おとこに縁の無い女神様が道をつけてくださっていますので変に遠慮することもありません。


 活発そうな小悪魔系褐色美少女と眼鏡の似合う文学少女系色白美少女は各自三本合わせて六本のちんこと末永く頽廃的しあわせに暮らしたということです。


 神様にもそれぞれの事情や触れられたくない過去がありますから、正直だからといって優しくしてくれるとは限りません。それでも欲張って嘘をつくよりは、正直である方が結局はいいことがあるのです。


 ◇


 なお、まともな男神おとこに縁の無い女神様がこの二人の仲睦まじさいちゃいちゃを羨んで遂に男神おとこに見切りを付け、夜な夜な枕を抱えてやって来るようになるのはもう少し先のお話です。

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