第7話メイドと節分

主に仕えるSメイド ハンナは…

『鬼は外! 鬼は外! 鬼は外!』

『お前の主は鬼じゃねえよ!』

主の寝室で豆を撒いていた


こうして今日も主のツッコミが屋敷中に響き渡る。


『よく言うわ。いつもキレてばっかりのクセに』

『大体お前のせいだわ』

『まあ、確かに鬼は言いすぎました。 ぼっちゃまは鬼じゃなくて、屋敷のお荷物です』

『そっちの方が酷くない!?』

『第一なんで今頃豆巻いてんだよ もう5月だぞ!』

『この話なろうで掲載したときは2月だったのです』

『説明台詞ありがとう!』


主従はいつもの調子で会話をしながら寝室を出る


すると

『ぼっちゃま、おはようございます』

Mメイドのアリサが待っていた。

『うん。アリサおはよう』

軽い調子で挨拶を返すと、アリサは起床したばかりの主に豆を差し出して

『今日は節分ですね 私が鬼になるので、ぼっちゃまはこちらの豆をぶつけてください』

自らの欲望をぶつける。


『アリサは豆をぶつけられたいだけだよね!?』

『もしかしてぼっちゃまは鬼の方がやりたかったですか? でしたら、この金棒でアリサをぶってください』

『朝っぱらから何言ってんの!?っていうか、その金棒どっから出したの!?』

『これは私が作りました』

『手作りかよ!』

『あ、でもぼっちゃまはゼロから始める異世界生活が好きでしたね。 でしたらこちらのモーニングスターを』

『そんなモーニングセットはいらんわ!』

『ああ、ぼっちゃまの鋭いツッコミ堪りません。 夜なべして作った甲斐がありました』

アリサは身をよじりながら恍惚の表情をしている。

その努力を普通のモーニングセットに回してほしい。


主従はいつもの調子で会話をしながら、食卓へ移動する。


『ぼっちゃまおはようございます。 今日の朝食は恵方巻きです』

ふわふわメイド シンシアが朝食を準備して待っていた。

『そうそうこれだよ。これこそ節分だよ ありがとうシア』

『ぼっちゃまに喜んで頂けてなによりで すぅ、すぅ、すぅ』

『寝た!?』


屋敷唯一の癒し要素であるシアはいつも唐突に寝てしまう。

しかしその寝顔も含めて癒しなのである。


シアの寝顔を横目に僕は恵方巻きにかぶりつく

『シアの寝顔をおかずにするなんていやらしい』

すかさずハンナが毒づいてくる

『ぼっちゃま、太巻きもいいですが、私の太もももありますよ』

すかさずアリサが誘惑してくる


それらを無視しながら、僕は恵方巻きを無言で完食する。

『ふう。これで願い事叶うかな?』

『いいえ、ぼっちゃまの儚い願いは叶いません。目を閉じてませんでしたし、方角も間違ってました』

『え!? 方角はまだしも目閉じなきゃいけないの?知らなかった。 っていうか、さりげなく儚い願いとか言うな! それと食べる前に教えて!』


仕方ない。もう一度恵方巻きを食べ

『ぼっちゃま お時間でございます』

『早くない!?』

『いつもどおりです お屋敷に精神と時の部屋はありません』

『くそう。 何故うちに精神と時の部屋はないんだ』

『残念ながら、仮にあってもぼっちゃまじゃ重力と気温変化であの世行きです』

『妙に詳しいね!?』

『ええ、龍の球は私のバイブルです』

『アリサも好きですよ ベジタブル様の罵倒がたまりません』


ハンナの意外な趣味が気になったが、時間は待ってくれず、出かける時間になった。

アリサは別にどうでもいい


玄関へ向かう


『ああ、何やらぼっちゃまに嬉しいことを言われた気がします』

『気のせいだよ』

僕の半歩後ろをアリサが身をよじりながらついてくる


『遅すぎます。その足は腐ってるんですか? 鬼神の力を出しなさい!』

『腐ってねえし、鬼でもねえわ!』

僕の前をハンナが歩く


そうこうしているうちに玄関へ着いた


『いってらっしゃいませぼっちゃま 今夜は金棒で叩いてくださいね』

『鬼は外! 鬼は外!』

『だから鬼じゃないわ!』


こうして坊っちゃまは送り出される

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