第14話 Web小説との出会い

 あれは2015年の、残暑が暑い9月のことでした。

 職場の人は、使い切れなかった夏休みを取っているような感じでした。


 私はたまに休日に電話番のようなことをしていました。その日、おそらく土曜だったと思いますが、事務室にいました。


 土日でも人がいるようなブラックに近いブラックな会社でした。それでもその日は人が少なかったです。開店休業のような状態で、特別なことがなければ何をしていてもいいと管理職にも言われていました。

 この日は特に人もいなくて、仕事もやる気が出ませんでした。


—— そうだ、怪談話でも読もう。


 そう思って、スマホを出しました。

 前日に、LINEスタンプをタダでもらうため、お友達登録を大量にしていました。


 その時、なぜか、手相占いをする芸人の島田秀平さんのお友達登録までしました。スタンプがもらえるわけではなかったのですが、島田秀平さんの怪談話が読みたかったのです。

 島田秀平さんがロケに出て怪談話をしている深夜の番組があって、私はそれが大好きで、録画して観てました。


 なぜ録画していたのかというと、深夜に怪談話なんて怖くて聞けません。

 ひとりで観るのなら昼間の太陽がサンサンとしている時間に観ます。


 怖いんだけど、面白い怖さなんです。

 大げさでもなんでもなくて、淡々としゃべる感じが本当っぽくて。

 その島田秀平さんが、LINEで怖い話をしていました。


「お友達登録ありがとうございます」のメッセージの後に、怪談話がありました。

 テレビで聞いたことがある話でしたが、LINEだと途中で途切れていて、その先にURLが書いてあります。


 オチは知っていましたが、中途半端に終わっているのが気になって、クリックをしました。

 吹き出しタイプの小説で、怪談が書いてあります。


 私とWeb小説の出会いは、島田秀平さんの怪談話でした。

 その場所が「ストリエ」という投稿サイトであることに気づくのは、もう少し後です。




◇◇◇




 5つくらいお話があって、それを読みました。

 ストリエさんは文章だけの投稿サイトではなく、マンガと小説の中間のような作品が投稿できる場所です。


 マンガのように吹き出しで話すキャラクター。

 島田秀平さんのお話は、深夜の番組で聞いていたので、だいたい知っていました。でも、ストリエ形式で語られる怪談は、またどこか違っていました。


 姿が見えないけれど幽霊のような存在に追われ、無人の家に逃げ込みます。逃げられたと安堵のため息をつくと、家全体をバンバン、バンバンものすごい数で手形が付くほど叩かれるというお話。


 文字だけではなく、イラストも使われていました。

 草むらの景色が背景になっていて、挿絵で足跡もついています。

 ヒタヒタと歩いて、背景が家の中になります。


 下にスクロールしていきます。

 家、全体を叩かれることは、知っていました。


 でも、画面全体にバンバンバンバンバンという文字と手形が一面に出て、ビックリしていたところに、バンバンと後ろの受付のガラスが叩かれました。


「ひぃ!」

 思わず叫んでしまいました。


「玄栖さん?」

 振り返ると職場の人がいました。


保井やすいさん(仮)……」

 安堵しました。とりあえず、スマホを見せ、


「今、怪談読んでて……。めちゃめちゃ絶好のタイミングで窓ガラスを叩かれました……」

「ああ、すみません」

 保井さん(仮)は、ニコニコと言いました(ただし、疲れている表情をしていました。ブラックでしたから)。


「昼食を買いに行ってきます。今、上は誰もいないので、戸締りしてきました。鍵、預けていきますね」

 それで、声をかけてくれたようでした。


 タイミングが合いすぎてて、とても怖かったことを覚えています。

 でも、その話は、ものすごく面白かったんです。


 すぐに全話読み終えてしまい、他にもないのかな? と思っていると、怪談がありました。でも、何か変です。

 怪談話だけど、島田秀平さんのお話ではないような気がします。


 1時間ほど読んでいましたが、仕事中だったのでスマホを観るのをやめました。

 家に帰ってパソコンで確かめてみました。


 『ネットで一番怖い話大賞2015』というものをしていて、島田秀平さんが審査委員長をしていました。

 島田秀平さんのお話はLINEから行けるのだけで、他は投稿者さんの物でした。




◇◇◇




(小説の投稿ができるのか……)

 もともと、小説家を目指していました。

 小学生の時から、宿題の日記を書くのが好きで、遅刻をしても日記を書いて提出していました。

 紆余曲折をしていますが、やっぱりお話を書くのが好きで、どうしてもやめることができません。


 わけもわからずポチポチクリックを続け、読んでました。

 その時の編集さんのお勧め作品が、古事記をライトノベル風にした話で、これがものすごく面白かったんです。


 古事記の知っているようで知らなかったことが書いてあって、使っているキャラアイコンもめちゃめちゃかわいい。

 読みやすくてためにもなって面白い。


 出てくる神代の時代の登場人物がみんな魅力的でした。

 デフォルメされている感じが、とても自然なんです。


(これ、面白いな)

 そう思って、それから数日、いろいろ読み漁りました。




◇◇◇




 ストリエさんは2015年5月からサービスをスタートしたようで、3カ月ほどで面白い話がけっこうありました。

 カクヨムさんでの★に当たる、お気に入りの♡が多い作品は、どれも納得ができるものが多かったです。


 怖い話大賞の1位の話は、私もよく使わせていただいている絵師さんのお話でした。文字ばかりで普段なら拒絶するはずなのに、読んでみるとゾッとして、とても面白かったです。


 この頃のコンテストの受賞作品や、ランキングやお勧めは、本当に面白い物ばかりでした。


 拾い上げで公式化された作品も、異世界転生で私は苦手ですが、お話としての完成度は高く、読んでも飽きない作りでした。

 私は好きではないので♡はつけませんでしたが。


 自閉症の子供を扱ったお話は、書籍化されていました。

 公式に行ってしまった後だったので、クリエーターストーリー(素人の投稿)としては読めなくなっていて、でも、まだ公式でも公開されていなくて、現物を読んでいません。

 ブログ調のストーリーで、読みやすかったと記憶しています。


 ストリエさんの5月から8月の様子は、私は知りません。

 その頃は招待されないと会員登録ができないようでした。


 ツイッターでお願いすると会員になれる程度のものだったようです。

 だから、プロの人たちが投稿していたのかな? と思いました。


 そういうものなしで、誰でも会員になれるようになったのは、9月ごろからだったようです。


 特に何も考えずに、会員登録しました。

 なぜなら、ストリエさんのお話は、ものすごく面白かったのです。


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