まじっく・しょ~? 【出張?/りは~さる?】

TAKE0 前日譚


 デミウルゴス主催、プルチネッラ主導の、まじっく・しょ~? 本番を前日に控えての舞台、それなりに練習をこなし、もう問題はないかと思われるが、念のために設けられた予行練習リハーサル

 多忙を極めるデミウルゴスは流石に舞台稽古リハーサルまでは見届けられない。プルチネッラもそれなりに仕事を抱えているために、そう簡単に休暇をひねり出すことは出来ない。なので自主練にまで参加することは叶わなかった。


   ///   ///   ///


 観客は、当日に参加することが困難なことが決定している面々。というか、リュートが駄々こねて集まってもらった。


 ルプスレギナいわく、なざりっく妖稚宴ヨウチエンのお遊戯会。


 家令ハウス・スチュワート:セバス・チャン

 家政婦メイド長:ペストーニャ・Sショートケーキ・ワンコ

 エ・ランテル領館メイド長代行:ツアレニーニャ・ベイロン・【チャン】

 他、ジャンケンで負け、手隙になったお仕事大好きメイド達・・・


   ///   ///   ///


「おとーさん、おかーさん。手伝って!」

「む、何をすればいいですか?」

「え? わ、私も?」


 戸惑いつつ壇上に上がるセバスとツアレ。


「んっとね、お父さんはこれ持ってて、お母さんはこっち!」


 大きな大きなシルクハットを持たされたセバス。その高い上背からだと、シルクハットの中が丸見え。ギュウギュウにひしめき合った小悪魔インプ達とどうしても目が合ってしまった。


 申し訳ないという思いを懐きつつ抱えていると、いえいえ、トンデモナイ! といった風に返され、なんとも申し訳ない気持ちがさらに募るセバス。


ポッポハト出しま~す!」


 という掛け声とともに、一斉に飛び立つ小悪魔インプ達。手に手に大きな鍋つかみミトンをはめ、それぞれ精一杯に翼をイメージしているつもりなのだろう。痛ましい努力だ。


 キャァ、キャ~! と観客達から思わぬ悲鳴にも似た歓声が上がる。


「うさぎさんに変えま~す!」


 ふと、息子の方を向くと、息子と共にこちらを向く銃口。明らかに自分セバスが狙われている予感が・・・ひしひしと迫る。まさかと思いつつ、射線から微妙に位置をずらす。


 まさにその自分の真横を矢弾が通り抜け、その先に居たインプに命中。兎さんバニーとなったその姿を見て、戦慄が走った。これは、当たると 社会的にヤバイ奴だ! シャレにならん! 更に飛び退くと、今まさに立っていた場所を矢弾が通り抜け、別のインプに的中!


「む~! 当たんない?」


 いや、しっかり当たっているが、狙っていた相手とは少しのズレが生じていたため、別の的に当たっている。

 更には軽いスポンジ製の矢弾は、セバスがあまりに早く動くがために、巻き起こされた旋風に翻弄され、あさっての的に流されざるを得ない。


「「もぅ、仕方のない子ですね」」


 ツアレは息子と共に玩具の猟銃をその手に、セバスの側へと。


「ツ、ツアレ!? ペストーニャも!? な、なにを!」


 ペストーニャはリュートに向けて器用度DEXを上げる援魔法を、ツアレには敏捷性AGIを上げる援魔法を、それぞれに。


「「何って、リュートを手伝っているんです!」」


 ツアレとしては、少しでも近づけば的中しやすいとの親心。・・・決して邪心はない である。

 セバスとしては、当たるワケニハイカナイ!

 リュートとしては、お父さん、動かないで! 邪魔! 的に当たんない!

 ペストーニャとしては、あらあら、これは大変面白そうです! わん❤(ӦvӦ。)


 実は、セバスを狙っているわけではない!

 ツアレが補助サポートに関しては不慣れなため、タイミングが微妙にズレているのである。とりあえずは役割分担として、リュートが束縛ホールドしたり、ツアレがバニー化させたり。

 セバスを中心に飛び交う小悪魔インプ達も、それぞれ簡単には当てられないように飛び回っている。・・・セバスを盾とするように、絶妙な位置取りを心がけて。決して、上司たるデミウルゴス様の心情を忖度そんたくしているわけではない! と一応の弁解を残す。

 お茶目なペストーニャは、心底慌てるセバスを楽しんでいる。


 ちなみに、ナザリックに仕えるメイドの嗜みとして、ツアレは戦闘訓練を受けて、それなりには戦闘補助もこなせる。ナザリック基準では・・・ね。ナザリックの外では、支援を受けたツアレはバハルス帝国の【四騎士】には劣る程度Lv.20前後   …かもしれない。


 最後の一匹インプがなかなか捉えられない。理由は、セバスが射線を気にし過ぎて敵意を持っていないが悪意を抱くインプの事を忘れており、インプはセバスを盾とすることに終始。


「もう! セバス様のイジワル!」


 そうツアレが叫ぶと、息子に自分の持つ銃を渡すとセバスに駆け寄り、えい! と抱きついた!


「リュート! 私の事は気にしないで!」

「ツ、ツアレ!?」


 ツアレはセバスに抱きつき押し倒し、共に倒れ込んだ。リュートは、セバスが倒れ込んだ際、その頭部があったその向こう側にインプの姿を捉え、


「わかった~!」


 ぽぽん! と音がして、セバスが・・・ではなく、最後のインプが見事、兎詐欺ウサギさんと化したことで、わぁ~! と、優しいペストーニャ達は拍手喝采、スタンディングオベーションで幕を閉じた。




「セバス様ったら、動かないでって言ったのに!」


 ぷぅっとむくれたツアレの顔を前に、事態をようやく把握できたセバス。


「も、申し訳ない・・・」

「ヤダ、セバス様ったら・・・ぷっ、ふふっ」

「ツ、アレ? どうかしましたか?」


 訳も分からず笑われてしまったセバス。

 押し倒されたセバスの頭上には、可愛らしいウサ耳が生えていた。押し倒された際、矢弾の効果範囲内にギリギリ収まっていたらしい。おかげで、その手も兎のようなモコモコグローブが嵌っていた。ラビットマンに化けたセバス。


「ツ、ツアレ、その格好は・・・」

「え?」


 自分の姿を見下ろし、「きゃっ!」と小さく悲鳴を上げるツアレ。まさか自分もそうなっているとは思いもしなかったようだ。


「も、もう! リュートったら」

「ツアレ。お似合いですよ」

「セ、セバス様ったら」

「ですが、その格好になるのは、私の前だけでお願いしますよ」

「う、うぅ、ん、ズルイです。旦那ダ・ン・ナ様」


 セバスの上から退こうとする赤くなったツアレは、セバスを庇うような形になった所為なのか、見事なメイド・バニーに変わっていた。・・・とか? =ホワイトブリムから伸びるウサ耳に、ヴィクトリアン・メイド服からフレンチミニスカ・メイド服なバニーさん風に変・身(^.^∩ ∩)


「ん、んっん! さぁ、お開きですよ! 皆、お仕事に戻りましょう。リュートは今夜は私と一緒にお休みしましょうね。わん」

「うん!」

「きっと、良いことが待ってます。わん」

「そうなの?」

「ええ、きっと、です。わん」


 おばあちゃんと一緒! 位の気持ちで喜ぶリュート。ただし、おばあちゃんなんてことを口にしたのなら、激怒ゲキオコプンプンなアインズ様より恐ろしい大魔神ペストーニャに変身するのだろう。 多分、きっと。



 夫婦喧嘩は犬も食わない。とはいうものの、これは夫婦喧嘩とは言えず、ただのじゃれ合いに等しいため、ペストーニャの大好物になっている?


 緞帳の向こう側から【兎耳/ラビット・イヤー】の効果か、そんな声を拾ってきてしまい、赤面する二人であった。


 残念なことながら? セバスには兎の尻尾ラビット・テールまでの効果は及ばなかったようです。

 執事服に、兎耳と兎手袋くらいまで。


 そして、あとには真っ赤になった兎が二羽、残された。そして、その耳羽でパタパタとどこかへ飛んでったとさ。



 とっぴんぱらりのぷふ~っす。



   ・・・   ・・・   ・・・



 この後、ペストーニャから様々な助言アドバイス=命中率の向上方法や、メイド達からお掃除道具アイテム=羽箒の提供を受けたりして、笑劇的な進化を遂げ、本番を迎えるのであった。

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